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35歳の俺と7歳の嫁  作者: mixnunu
12話
53/66

12-④




 「まず」、と前おいた白雲さんは、四つん這いになって、土の上に直置きした聖書のページをめくった。

 ノートパソコンほどの大きさをした上製本だ。

 彼女の小さな体では、もってひらけもしないのだろう。

 空き地の真ん中。

 俺もしゃがんで、聖書に視線を落とす。


「おもにタイムスリップには、おおきくわけて、4つの種類があるのよ」

「4つか……」

「そう、4つ。簡単に説明するわね」


 ヘニャヘニャの、ミミズみたいな文字に指をそえ、小さな口がひらかれる。


「1つめは、タイムマシン。さっきも理論は話したけれど、人類の科学力では一生かかっても実現不可能。まあ、実証はないから、絶対に不可能とはいいきれないけど」

「なるほど……」


「2つめは、召喚。木内にしかできない『なにか』をなすために、この次元につれてこられた。それがトリガーであれば、目的をなせば、もとの時代にもどれるはず。これが1番、有力なのかしら」

「まあ……そうだよな」

「でも、いったんは除外しましょ。話をきく限り、その『なにか』がわからないなら、手のうちようがないわ」


 鮫島さんと同じ方法でこの時代にきたのなら、俺もなにかをなすためにきた、というのは間違いではないだろう。

 だが、鮫島さんは、神にのぞんでこの時代にきたという。

 俺はなにをのぞんだ。

 俺は、召喚されたわけではないのか?


「……? どうかした?」

「いや……たぶん目的はあるんだ。あるんだけど……」


 口がゆがんだ。

 言葉にしてはいけないことを、口にだしているようなきがした。

 いいよどみながら、言葉をえらびながら、それでも、なにもオブラートにつつめていない台詞が、喉を通過していく。

 ほほが、やけるようにあつい。


「この前、俺と同じ時代からきたひとと、あったんだ」

「……!」

「いわく、神にやりなおしたい過去があるか、っていわれて、そのひとは自分でのぞんで、この時代にきたらしい」


 彼女はじっと、こちらをみてくる。

 なにも疑おうともせず、ただ、じっと。


「それで……?」

「そのひとがこの時代にきた方法と、俺がきた方法が一致している。だから、俺にも目的はあるはずなんだ」

「…………でも、そもそも、のぞんでタイムスリップしたわけじゃない……」


 俺は小さくうなずいた。

 そのうなずきに連動して、白雲さんの顔は、どんどんと、しぶいものになっていく。

 顎に指をおきながら、彼女が頭をかかえるたび、その悩みが眉のしわに反映されていった。

 証言台にでもたたされているのか、息がつまるほどの選別に、刻々と時間だけが浪費されていく。

 数秒のすえ、考えがまとまったのか、おずおずと八の字まゆげがむけられた。


「とりあえず……別のも説明していい? もしかしたら、かも、しれないから……」

「お、おう。まあ、俺も、それきくために、きたようなもんだし……」


「うん、じゃあ、3つめね。これは、いうなれば、都市伝説とかの類いね」

「……? というと?」

「けっこう地元ルールな話だけど。例えば、夜の12時に学校の教室で首をつったら、過去にもどれる……みたいな」


 先ほどとくらべ、たどたどしくも、言葉をつなげてくれている。


「これは、自分の行動がトリガーになるの。現代の怪奇じゃない限り、もとにもどる手段も、この時代の文献にあるはずよ。なにか、心当たりはない?」

「いや……そもそも俺は、地元から離れた他県で生活していたんだ。地元の都市伝説がもとなら、こんなとこまで、ワープするのもおかしくないか?」

「うーん、たしかに……。じゃあ、違うかも……」


 身震いをする、というべきか、俺の頭に「また」が巡廻しはじめた。

 ここまできたら、結論がでてしまっているのか。

 いや、もう、俺自身、だれかから、そういってもらうのを、まっているのかもしれない。


 態度にでてしまったか、諦めのオーラをかんじとったのか、白雲さんは矢継ぎ早に次の話をする。


「次ね。4つめ。これは、意識下でだけ過去にもどっていると、おもいこんでいるパターンね。植物人間ってわかるかしら? 長期間ねむっている間、感覚が夢のなかにあるって感じの」

「あぁー……チェーンメールでみたことあるな。企画力なくても、簡単にヤミフカにできるやつ。つっても、それはさすがに突拍子なさすぎるだろ」


「うん。私もそうおもう。こっちからうてる手も、なんにもないし。でも現状、目的がないなら、可能性はちょっとはあるわよ」


 そんなこといわれても仕方がないというか、白雲さんもなんとなく、意味がないことを察していたとおもう。

 手があるとして、ここにきたときの、あの人智をこえた装置。

 あれがタイムマシンなのであれば、もう一度あの装置にはいれれば、あるいは。

 俺のたりない頭をこねくりまわしても、でてくる結論が、もう、それしかない。


「………………あのさ、木内……。もう1個、ちょっと……いってなかったやつが、あるんだけど……」

「…………」


「いう意味がないっていうか、いっても仕方ないっていうか……、その…………」


 俺には、目をみることも、相槌をうつことも、なんだか、できるきがしなかった。


 花瓶をわって、地面にうめた。

 先生のいない隙に、廊下でドッチボールをした。

 よびだされて、大人を前にし、みあげると、もう、なにをいわれるか、わかってしまう。

 言い訳をしようとも、拒もうとも、すべてが水泡にしかならなくて、消魂すらかなわない。


「神隠し……って、わかる……?」

「………………ああ、わかるよ」


『もうひとり、紛れ込んだから、選別したい』

 なるほど、「紛れ込んだ」、……か。




 以下、宣伝です。


 もうなりふり構わず、浅ましくも、宣伝します。

 読んでいただけたら嬉しいです。

 読んでいただけなかったら悲しいです。


「後輩男子と仲良くなりたいコミュ障女子が、支離滅裂な言動で、しっちゃかめっちゃかするギャグ作品」

https://ncode.syosetu.com/n7426km/


「横暴野球少年の主人公が無理やり漫研に入部させられるも、そこで出会った女の子と一緒にいるうち、自分の中のアイデンティティが形成されていく、ボーイミーツガール短編」

https://ncode.syosetu.com/n3766kj/

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