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35歳の俺と7歳の嫁  作者: mixnunu
12話
52/66

12-③




 生あたたかい風がふいて、板と空気がすれたような音が耳にはいった。

 ふりかえると、辞書ほどにぶあつい上製本を胸の前にだきかかえ、必死なまでに眉毛に力をこめた、白雲さんの姿。

 今日のファッションも、あまりあるセンスがあふれている。


「おはよう……! この聖書をひもとけば、きっと木内も、かえれるはずだから。だ、大丈夫よ……! たぶん……」


 一夜あけた今日。

 俺の感情もさだまらないまま、さびれた空き地にあつまって、脳をとろけさす。

 正直、なにがしたいとかも、なにもなかった。

 他人をだましてまで、みたされるほど、俺は人間ができていないわけではない。

 だが、なんというか、白雲さんの手を、はなしたくないんだ。


 やることすべてが蛇足にすぎないきがして、口のなかに大量の綿をつめられたような感覚になる。

 和葉とあいたくない。

 答えがほしくない。

 いまはただ、このよくわからない程度の知り合いが、心地いいんだ。


「この聖書、ひとことでいえば、時の先人の備忘録ね。おそらく、現世で解読ができているのは私だけかしら。たしか……書かれていたはずだわ、時のわたりかたについて」

「お、おう……」


 黒を基調に重厚な文様がきざまれた表紙は、たしかに聖書とよばれて、しっくりくる。

 まあ、裏表紙の右上にでかでかあるバーコードが、現代の法下で取引された代物だと証明しているようなものだが。

 そのオカルト本を地面におき、広げるようにひらいた白雲さんは、びっしりと書かれたヘニャヘニャの文字に指をさした。


「まず、簡単にタイムスリップの原理の説明ね。基本的に、タイムスリップは過去に戻っているようにおもえるけれど、厳密にはそうじゃないらしいの」

「……??」

「自分のいまいる世界ではなくて、無数にある別の4次元、仮想世界における過去。そこに多次元的な手法を駆使して、その仮想世界にワープしている、ってかんがえるのがベターなのよ」


「あぁー……、パラレルワールドってやつか? 例えば、俺がゴミをひろってすてた世界と、そのまま無視して通りすぎた世界のふたつが存在する……みたいな」

「うん。パラレル? ってのはわかんないけど、たぶんあってる」


 ちいさくうなずいた白雲さんは、微笑むくらいに口角をあげる。


 つまり、俺がもといた時代と、この過去の時代は、平行線の別世界。

 小清水家に家政夫がいたことを俺がしらなかったのは、そもそもパラレルワールドだから、で説明がつく。

 タイムスリップものなら、わりかし、お決まりの展開ともいえようか。


「ただ、多次元によるワープとか、連続する1次元(時間)を人間がつくりだすなんて不可能。この多世界解釈どころか、タイムスリップなんて、人類の科学じゃ再現性なんてないわ」

「え? じゃあどうすんだよ」

「あら、わからない? だからこそ、私は儀式をくりかえしたのよ。聖書にかかれたとおりのね」


 ああ、なるほど。

 いま話しているのは、「はじめに」の部分だということか。

 ここからこそが本領発揮。

 この霊感商法がかたる世界なのだろう。


「とりあえず、木内がこの時代にきて、やるべき目的を特定するところからね。それがわかれば、てっとりばやいわ」

「目的ねぇ……。……ん? この場合、白雲さんの……あの、時空がどうたらこうたらってやつが、俺の目的になるんじゃないのか?」


 実際のとこは関係ないが、白雲さんにあわせた疑問をなげておく。


「いいえ、おそらくは違う。私が召喚しようとしたのは、邪眼に眠りし(エビルプリズン)時空の騎士(ワールズナイト)だもの」

「ああ、そうすか……」

「私の予想だと、私がした召喚の儀式は、たんなるトリガーだとおもうわ。その儀式と、木内がこの時代にくる目的がまじりあって、次元に歪みをうんだのよ」


 納得のいく仮説ではあるが、そうだとしても、その目的がみあたたらない限りは話にもならない。

 得意げな顔で人差し指をたてているところ、申し訳ないが、苦言はていさせてもらう。


「つってもな、その目的がなんなのか、わかんないんだよ。予想につくやつは、もうあらかた、やったんだけどな」

「あら、そう? でもそれは、木内がなすべきとおもった目的でしょう?」

「……? どういう意味だ?」


「私がいってる目的は、過去をかえること、だけじゃない」


 彼女は続けて口をひらく。


「たとえば、タイムマシンにのって過去にいった場合、また、タイムマシンにのらないと、元の時代にはもどれないでしょう」

「……っ!!!」


 俺の眉毛が、ピクリとうごいた感触があった。

 無意識だったのだろう。

 その感触が波紋のように額全体へとひろがって、脳を振動させていく。


 なんというべきか。

 なにか、この過去転生において、見落としていた本懐だったのかもしれない。


「タイムスリップの種類っていうのは、召喚される以外にも色々あるの。いまからそれを、おしえてあげる」




 以下、宣伝です。


 もうなりふり構わず、浅ましくも、宣伝します。

 読んでいただけたら嬉しいです。

 読んでいただけなかったら悲しいです。


「後輩男子と仲良くなりたいコミュ障女子が、支離滅裂な言動で、しっちゃかめっちゃかするギャグ作品」

https://ncode.syosetu.com/n7426km/


「横暴野球少年の主人公が無理やり漫研に入部させられるも、そこで出会った女の子と一緒にいるうち、自分の中のアイデンティティが形成されていく、ボーイミーツガール短編」

https://ncode.syosetu.com/n3766kj/

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