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35歳の俺と7歳の嫁  作者: mixnunu
11話
49/66

11-④




 鼻から息がもれでていく。

 脳に酸素がいきとどく。

 今現在、俺がマイナスの境遇にいることはかわりない。

 それでも、足取りは軽いものだった。


 砂利がはられたそのうえで、校舎をボーっとみあげる。

 さきほどの煮える腹を思いだすたび、頬の奥に力がはいり、唇がさけていくのを止められない。

 進展はなかったが、まあ、いいだろう。

 今日はいいものもみれたし、家でふたりの帰りをまつとしようか──────。




「じゃあねー、白雲ちゃん」

「うん、また……」


 ふと、校門のほうからきこえた、女の子の声。

 今日、親子参観があるのは2年生だけ。

 授業の日数をあわせるため、他の学年の生徒も登校日ではあるが、下校は先に済ませてしまう。


 俺は見開いた目を校門へとくべる。

 背格好から推測するに、上級生であろう。

 落ち着いた雰囲気の女子3人組が、2:1でわかれていく。


 その片方、ひとりで歩く、くるくる髪の女の子。

 あの顔、あの声、あの背丈。

 そして、白雲という名前。

 この時代にとばされたあの日にも会った、会社で談笑した、俺の記憶する白雲さんの姿、そのものだ。


(同じ……学校だったのか……!)


 この30年、まったくきがつかなかった。

 肩から腕に力がはいって、体が震えていく。


 だが、どうする。

 彼女はアラフォーだが小学6年生。

 不意に話しかければ、事案にもなりかねない。


 そうこうしているうち、帰路につく白雲さんがどんどん小さくなっていく。

 まあ、これも事案には変わりないが、俺は咄嗟の思いで、あとをつけるしかなかった。



 ………………

 …………



 路地裏、コンクリートのはがれた廃団地、そして人気のない空き地。

 およそ下校ルートとは思えない道を、小柄な体でつきすすむ。


(なんだ……? どこへいくつもりなんだ?)


 学校はおろか、地元が同じであることもしらなかった。

 14年も一緒に働いているひとだぞ。

 いままで1度もそんな話をしていない。


 すこし、寒気がした。

 空き地のど真ん中、今時みることもない積み重なった土管の前で、彼女はゆらりとたちつくす。

 ランドセルを地面になげ、着の身着のまま、どこをみることもなく、口をひらいた。


「みて、いるんでしょう?」

「……っ!!?」


「あなたは、私がよんだ。この力をもって、私に、すべてを──」


 彼女が言い切る前、これも、咄嗟だった。

 後先なんて考えていない。

 俺は地面をけって、身をのりだす。


「あんたが……! あんたがよんだのか!?」


 間違いない。

 このひとだ。


 このひとが、この、過去転生の、すべての諸悪の根源だ。




──────────

 ↓以下⭐︎おまけ↓




「やっほ。聖子ちゃん、おひさー」

「あっ…………叶芽くんの……お母……さん、……どうも……」


 授業参観も無事に閉幕し、教室には、まばらにしか、ひとがいない。

 だいたいの家族は参観おわり、親子で帰るものだろう。

 しかし、少し早めの思春期をむかえた叶芽くんは、バレないように、そそくさと帰ってしまったらしい。

 帰宅のタイミングを失ってしまった叶芽母は、おトイレから戻る娘をまつ、「顔見知り」へと狙いをさだめたのだ。


「やー、しっかしあんた、嫌われ者よねー。あんたが教室きた瞬間、みんなギョッとしちゃってさー」

「ええ……、それは……まあ……」


 昭和生まれの豪快かーちゃんに、デリカシーなんてものは存在しない。


 迎合。

 忖度。


 それらの言葉を脳内辞書にインプットしては、知らぬだれかが削除してまわる。

 このひとは、もとより、そんなひとだ。


「でも、今日きてよかったかもね。あんた、和葉ちゃんが小学生になってから、1回も参観なんてきてないでしょ?」

「うっ…………」


 すこし、気まずい顔色をみせる聖子だったが、叶芽母はおかまいなしにと背面黒板を指差す。


「ほらこれ、理想の将来だってさ。おたくん家の事情しってて企画してんなら、白々しいったらありゃせんけど」

「…………」

「聖子ちゃんがきたの、ギリギリだったから、ろくにみてもないっしょ? 娘のだけでも、確認してやりなよ」


「ああ……は……い」


 八の字眉毛の聖子は、くるりと反転し、各々の理想へと視線をむける。

 1枚、1枚と、左から順に瞳孔をすべらせ、すべらせるたび、八の字の溝はなめらかく。


 そして、最右端、そこまでたどりつくと、歩みをピタッと、とめた。


「……」


 その絵には、


 長めの、ひとのような何かと、

 中位の、ひとのような何かと、

 短めの、ひとのような何か。


 逆さになったUの字が、2個、顔面にはっつけられている。


「あんたがなに考えてあの子と接しているかは、わかんないけどさ。まあ、こんな家庭でも、親はやっぱ親なのよ」

「……はい…………」

「私らのエゴを、いっさいがっさい、ぬきとったさきにある、子供の顔ってのが、親にとっての1番の幸せ。それだけは、忘れんなよ」


 こぶしを強く、にぎりしめては、すぐさまほどく。


 小清水聖子は感情をあらわにしない。

 それでも、いまは、すこしだけ。

 彼女を感じることが、できるのかもしれない。




 お疲れ様です。ここまでが、11話になります。

 いままで話の終わりにダラダラ後書きをしていたのですが、今回から活動報告にて、おこなっていきたいと思います。

 よくよく考えたら、しらねぇ作者の愚痴なんて、みるに堪えないものですもんね。そんなんもっと早く気づけや。


 以下、宣伝です。


 もうなりふり構わず、浅ましくも、宣伝します。

 読んでいただけたら嬉しいです。

 読んでいただけなかったら悲しいです。


「後輩男子と仲良くなりたいコミュ障女子が、支離滅裂な言動で、しっちゃかめっちゃかするギャグ作品」

https://ncode.syosetu.com/n7426km/


「横暴野球少年の主人公が無理やり漫研に入部させられるも、そこで出会った女の子と一緒にいるうち、自分の中のアイデンティティが形成されていく、ボーイミーツガール短編」

https://ncode.syosetu.com/n3766kj/

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