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35歳の俺と7歳の嫁  作者: mixnunu
11話
47/66

11-②




 ぼちぼち、子供たちが教室に帰るころ。

 叶芽くんも眉間のしわをよせつつ、俺たちに背をむけた。


「じゃ、もういくから。余計なことすんなよ」

「へいへーい。叶芽の勇姿、見届けてやるから、指チュパってまっとれよ!」


 彼のしわが、さらに溝深くなっていく。

 そのまま、なにもいわずに、校舎へとかけていった。


 そのうしろ姿を目でおいながら、しかし、俺の中をかけめぐるのは恥辱の念。

 和葉や俺、お義母さんに出会った際には、わかなかった感情が、血液を逆流させる。

 いくつになっても、俺を丸裸にさせるのは、このひとだけなのだ。


「……で、これ、どこいきゃいいの?」

「ん!? ああ……そっすねぇ……。とりあえず教室いったら、いいんじゃないですかね」


 はりつめた心臓をさらに脈拍させる。

 居所が悪いわけではない。

 ただ、少しでも気を緩めると、ボロをだしてしまいそうで、ならないのだ。


 同じクラスなのだから、行き先は同じ。

 だが、隣を歩かれるだけで、そこはもう、俺の安楽なスペースになってしまう。

 いつ母のことを、母と呼んでしまうか、気が気でない。


 無愛想な顔で俺のうしろをついてくる母。

 このひとが、なにを考えているかも、わからなかった。


「あの! おふたり、すみません……」


 下駄箱へとさしかかった俺たちは、その声に止められた。

 かすれた声の主は、バーコードハゲメガネ、教頭の菱元(ひしもと)

 うすらハゲを光らせながら、いつも誰かにヘコヘコしているその姿は、生徒からも舐められている。

 俺も舐めていた。


「なんでしょう?」

「えーと……叶芽くんのお母さん、お久しぶりです。その、証明書は……」


「ん? もってきとるよ」

「で、できれば首から下げるように……」

「はーい。かぶれんのよねー、これ」


「はい、はい。すみません。……で、そちらの方は……」

「え、俺ですか?」


 くるりと首をこちらにむけ、へたくそな作り笑いをみせてくる。


「あの、すみません……。生徒のご両親、もしくはご身内の方、以外の方はご参加できなくて……」

「えと、一応は一緒に住んでるんですけど、ダメですかね?」


「あの、お手数ですが、どなたの……」

「かず……小清水和葉の。2年2組」

「あっ! あぁ……小清水さん……」


 なにかを察した表情をみせたのち、彼の苦笑にも拍車がかかった。

 この辺では小清水家はタブーに近い話。

 それが小学校という、保護者と密接になる場所であれば、なおさらであろう。


 できることなら、小清水家の関係者は全員、生徒によせつけたくもないはずだ。


「すみません……和葉さんには申し訳ないですが……」

「あー、どうしても無理ですかね?」

「いやぁ、すみません……」


 ここからどれだけ食い下がろうと、こいつは「すみません」の一点張りであろう。

 和葉には悪いが、お義母さんがくるまで、まってもらうしかないのか。


 一考を余儀なくされた俺だったが、しかし、意外なところから助け舟はおりる。


「別にいいんじゃない? はいっても」

「あ、あの……ですから、ご身内じゃないと……」


「こいつ、私の従兄弟だけど」


「え?」


 つい、俺も並んで「え?」といいそうになったが、とっさに指でおさえつけて、つぐんだ。


「あ、ああ、そうでしたか! それは失礼を……すみません」

「やーやー、いいってことよ」


 きまりのつかない苦笑をにじませながら、教頭はそそくさと逃げていった。

 なにはともあれ、母に助けられたのは事実。

 あまり話をしたくはないが、俺は軽く会釈しながら、胃を逆流させる。


「ありがとうございます。なんか……助けてもらって」

「ま、和葉ちゃんのためっていいますかね。小清水の奥さん、くるんでしょ?」

「ああ、はい。俺と入れ替わりで」


「しっかし、あのひとも変わらないわねー。いくらあんたがいたとこで、親ってのは特別なのにねぇ」

「あはは……そうですね」


 そしてそのまま、ひらひら手をふると、眉ひとつ動かさず、小さく口をあけた。


「ほんじゃ、私さきに便所いくから。じゃあな、叶芽くん」

「ああ、はい、どうも」


 再度、軽い会釈をして、背中を見送る。

 年齢でいえば俺のほうが上だったろうが、なんというか、母はいくつになっても母だった。

 頼りにして、頼りにされて、それがいつまでも、めぐっていくんだ。


(ふふ、叶芽くんだってよ。くんづけなんて、初めてされたわ)


 いつもと違う顔をみて、少しだけ、おかしな感じがする。

 叶芽くん。

 ちょっとだけ、いい響き。





「……………………あれ?」


 叶芽くん、叶芽くん?

 俺、かーちゃんに名前……いったっけか。




 以下、宣伝です。


 もうなりふり構わず、浅ましくも、宣伝します。

 読んでいただけたら嬉しいです。

 読んでいただけなかったら悲しいです。


「後輩男子と仲良くなりたいコミュ障女子が、支離滅裂な言動で、しっちゃかめっちゃかするギャグ作品」

https://ncode.syosetu.com/n7426km/


「横暴野球少年の主人公が無理やり漫研に入部させられるも、そこで出会った女の子と一緒にいるうち、自分の中のアイデンティティが形成されていく、ボーイミーツガール短編」

https://ncode.syosetu.com/n3766kj/


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