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35歳の俺と7歳の嫁  作者: mixnunu
ぶたさん
30/66

番外①

 元時空、アラサー和葉さんのお話です。

 本編とは関係のないエピソードですが、前回が長くなりすぎたのと、やるとすればタイミングはここであろうと思ったのでやります。サクッと終わります。




「うわっ! 赤! ばあば、真っ赤!!」

「あらいらっしゃい、一香。ばあば今年の正月はサンタさんの恰好できめてみましたぁ~」

「よくわかんないけど、全部間違ってると思う!! でもおへそがセクスィーねぇ

ー!!」


 還暦前と3歳児の間にはツッコミなどという野暮なものは存在せず、息子夫婦が扉を叩かない限りは、混沌が部屋いっぱいに充満していた。

 そんな重要な役割を担った当の緩和材らはというと、玄関前にて神妙な面持ちをするばかりであり、カオスの様相は当分収まりそうもなかった。


 2人にとって緊張が走るのは、お向かいさんである母方の実家が要因で他ならない。

 木内家の長男坊、叶芽にとってもこの状況は芳しくなく、どうしてこんなめでたい日に夫婦そろって息を詰まらせなければならないのかと、なんでもいいので間をもたせるだけの話題を振ることにした。


「一香はともかくさ、俺は挨拶しといた方がいいだろ? 結婚前に1回会ったきりじゃ、俺もなんとなく落ち着かないし」


 これには嫁の和葉もテンプレ回答で茶を濁す。


「ふふ、ありがと。でも、大丈夫よ。だって、お母さんは私にも会いたくないだろうから」


 断られるだろうと思って聞いて、断られてホッとしている。あの他を寄せ付けないオーラに鋭い眼光。子供の頃からの苦手意識は一切失せておらず、義母への良い印象はまるでない。

 「行くなら一緒に」は嘘でしかなく、実際には、あんな場所に単身嫁を1人で向かわせたくないだけなのである。


 ならば行かずともいいのではないか、何故行くのか。絶えず叶芽は義理人情の類いだと思っているが、和葉にとってはそうではなかった。何時如何なる時でも、ここが我が家であることに変わりはない。淡々と鍵を開けては、一切の迷いなく吸い込まれて消えた。


 芳香剤で無理やりかき消した異臭に顔が歪む。大きな声で「ただいま」とだけ言うも返事などは当然なく、実はぽっくり死んでしまったのではないかとも過ったが、乱雑だが生活感はある床と、微かに聞こえる布ずれに、躊躇なくずけずけ侵入してもいい気にさせられる。


 導かれるよう道筋に沿って居間へと向かうと、隠れているつもりなのだろうか、黄ばんだシーツに少し盛り上がった物体が入ってあった。

 それを認識してからまた「ただいま」と言ったがこれまた返事はなく、和葉は大げさにため息をついては、それでも健気に話しかけ続けた。


「明けましておめでとう。これ、おせちの残りと野菜のお裾分け。どうせ寝てばっかなんでしょ? 体にいいもの食べないと太っちゃうよ」


 皮肉めいてからかうことで、激昂によって対話に応じさせようと試みるも、空気に食われるだけでしかない。一旦、別の角度で攻めてみる。


「でも、ちゃんとじゃないけどご飯食べてるし、ちゃんとじゃないけど片づけもしてるし、生活しようとしてるのは偉いと思うけどね」


 今度は褒め倒し作戦を懐柔策にもってくるも、これで従わせたのは虚しさだけであった。


 結局今年も適当に独り言をつぶやいては、数分でおいとますることになるはずであったが、今年こそはと和葉は別の策も弄しようとしていた。

 それはタブーに近く、かなり程度の低い作戦だということもわかっていた。それこそ喧嘩でもなんでも、もう一度、母親と裸で話し合いたかったのだ。


 和葉は、母親が狂ってしまった理由がわかっているつもりだった。だから今まで、あえてしていなかった話。


「お母さん。ほら、これ見て。一香、私と叶芽君の子、もう3歳になったのよ」




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