表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/66

7-­⑥




 日が赤く染まり始めたあたりで解散となった。帰路に就く最中、感情の右往左往に自分で嫌気がさしてきて、どっと疲れを実感したところで家に着いた。


「あっ! おかえりなさい!!!」

「ああ和葉。悪いな、先に帰ってたのか」

「うううん、大丈夫。でね! 今日、みっちゃん……佐藤 美智子(さとう みちこ)ちゃんと、飯山 篠(いいやま しの)ちゃんと、遊んだんだけど、鬼ごっこで1回も捕まらなかった!!」

「おお! まじか、すげーじゃん! じゃあ夜飯のコーンソテーに目玉焼きものせてやろう」

「うぇあ! やたー」


 手を洗ってうがいをして、飯を作って、食べて、風呂を沸かして、洗濯物を畳みながらゆっくりと、俺は和葉に確認をするように聞く。


「なぁ和葉」

「ん? なあに」

「和葉……お母さんのこと好きか?」


 和葉は、少しだけ言葉にするのを悩んだ様子で、照れくさそうに言った。


「…………怖いけど……、嫌いじゃないし、……好き」

「うん、知ってるよ」


 小学生の時に、同じことを聞かれて同じ返答ができただろうか。もし、一香が人の道を外れたとして、世界中が敵意にまみれたとしても、俺達は最後まで味方であり続けるだろう。俺のかーちゃんも、俺が味方であることには変わりない。あの人はすでに荒くれものみたいな性格だけども。

 俺は幸せの中で大人になれたのだ。大人になって子を持って、初めて得た感情を、和葉はこの時からずっと、大人になってもあった。


「でもね、私……ほんとに好きでいていいのかなぁ?」

「なに言ってんだ。それでいて、お前は幸せなんだろ。気持ちってのは、あんま難しくなくていいんだよ」

「うん、そっか……!」


 改めて歪である。親から子へ、子から親へ、正しい循環が成されているにも関わらず、どうしてこうもままならない。このボタンの掛け違いは正さなければならない歪みだ。そしてそれが、俺の使命だ。


「……木内さん。あんまり難しく考えなくていいの? このモヤモヤって」

「ん、まぁ向ける相手にもよるけどな」

「じゃあさ、じゃあさ、木内さんは?」


「俺か? 俺なんて一番気ぃ使わなくていい相手だろ」

「そう!? じゃあさ、あのさ……」


 和葉は、体を捻り軸足を向け、息を大きく吸った。


「私! 木内さんのことも好きだよ!」


 その一言が引き金だったように思う。時折ピーと鼻息は鳴らしたが、言葉を失い、膝をついた。

 そういえば、風呂のお湯を止めていなかった気がする。今頃浴槽から溢れ出ていることだ。台風の影響だろうか、最近は夜になると風が強く、木々が激しく揺れている。静寂だが、タイルの隙間を縫って流れる水音も、木々の騒めきも、そんな微々たる音は聞こえないはずなのに、聞こえる。


 力強く、それでいて飴細工を扱うように繊細に、抱きしめる。


「木内さん……泣いてるの?」

「……! だ、誰も死んでないし、どこも痛くないし、これはよだれだから!!」

「汚いっ!」


「だから、だからもう少しだけ、こうさせてくれ……」


 これ以上、踏み込めば帰れなくなる。甘えだとも不要だともわかってはいるが、それでも今は、同情をしていたい。俺にとっては、どんな姿であれ、彼女は彼女なのだ。


「うん……。私も抱っこされるの、気持ちいいから」




 本当にお疲れ様です。ここまでが7話になります。

 激長反省会、活導報告にあります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ