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5-­①




 例えば、業火とも言って差し支えないのは雨上がりの夏場の路上。そんなものを一切合切気にもしないのは子供だけで、俺は服が染み込むことに抵抗したくある。


 記憶が確かであれば、ここの子供の待ち合わせ場所はいつもの公園しかない。ので、そこへと足を運んでいるのだ。


(しかしあいつ、忘れ物しすぎだろ……。普段しっかりしてる分、抜けてるとこあるのは子供でも変わんねぇな)


 水筒片手に文句を垂れるが、まあ正直やることに変わりはない。


「おっ、やっぱここだったか。おーい、かず……」


「もうっっ!!! なんであんたも来てんのよっっっ!!!!!」


 突然の怒号が辺りに響いた。対象は俺ではないのであろうが、それでもタイミングの良さから動揺で物陰に隠れてしまう。


(あ、アリスちゃん!? って、女子2人に俺もいんのか? って、俺が誘えっつったんか)


「東雲もいんのかよ……、俺は和葉に呼ばれたから来ただけだぞ!」


 しかめ面で発せられた彼のその言葉は、あからさまな嫌悪感の演出を感じる。


「元々はあたしと遊ぶ予定だったんだから当たり前でしょ!! 和葉ちゃんもなんでこいつ呼んだのよ」


「えー、だって木内さんが……」


「俺もお前がいんなら来なかったよ」


「はあ??? あたしが悪いって言うの!?」


 あからさまな嫌悪感に対して、あからさまな喧嘩腰で対応するアリスちゃんだが、正直俺には彼女に良い思い出はない。


(そういやアリスちゃん、俺にだけ異様に当たり強いもんだから当時は普通に嫌いだったなぁ。 …………ん? 俺にだけ?)


 何か最近に同様の疑問を抱いたような気がしたが、整理がつく前、和葉が声を上げていた。


「もーー! 喧嘩はダメーー!!」


「んぐ……、じゃあもういいよ! 俺帰るし、今日VBするつもりだったし」


(……そういやうち、何か知らんけどVBだったな。俺が目ぇ悪くなった原因これだろ)


「えー、帰っちゃうの? まあいいや、じゃあ2人で遊ぼっか」


「えっ……、…………う……ん」


 そのまま渋面を作り大股で帰っていく彼の背に、先程の喧嘩腰とは対極の表情を浮かべているアリスちゃん。


 今だからこそ気付けることではあるが、なんだかもう、この相関には一種の忌々しさがあるようだ。


(……………………)


「お、おーい、和葉ぁー……」


「木内さん! どうしたの?」


「あっ、あの時の……」


 俺は早々去ってやろうと彼女を気にも留めず、取り急ぎ事を進める。


「ほらこれ、水筒忘れてっただろ。夏なんだし水分補給は怠んなよ」


「えー、でも運動中に水飲んだらバテるって先生が言ってたよ」


「あほあほ、大量に飲んで大量に汗かくからしんどいだけだよ。適量は飲まんと熱中症とか病気になるぞ」


「うぇっ!! こわぁ……ちゃんと飲むぅ……」


 時代錯誤な説教を垂れながら、逃げる一心で手を上げ「じゃあ」と告げると、彼女からも同様のレスポンスがあった。


 そのまま公園をあとにした帰宅までの道中、大体たしか9年前の記憶が甦る。


(あの日……、そうだ、東雲さんに最後に会った同窓会の……)


 ~9年前~


『ふーん、辛気臭い顔があると思ったら、あんたも参加してたの』


『げ、東雲……、……高校以来、デスネ』


『げとは何よ、げとは。一人寂しくいたから声かけてあげたってのに』


『(さっきまで別のやつと話してただろ、なんだこいつ……)……で、何の用だよ』


『えっ!? いや……あー、木内くんはさぁ……、今なにしてんのかなー……って』


『ん? 別に、一般的な会社員だけど』


『へ、へー……まぁ、平凡って感じであんたらしいわね、うん』


『そうかよ、……そうだよ(どっか行ってくんねぇかな)』


『まぁあたしはエリート街道を歩んでる訳だけども、……や、やっぱ……出会いとかは! ……ちょっと、少ないって言いますか……』


『……?』


『お互いに!! お互いにそういうの苦労してるかなーー……なんて思ったり、思わなかったり……』


『なんだよ、結局なにが言いたいんだ?』


『あー、あのさ……よ、よかったら……、きょ……今度……、一緒に……』


『あー! 叶芽君、先に来てたの』


『…………………………………………っ!!!』


『ああ、和葉、お前の方が遅かったんだな』


『いやー……準備はしてたんだけどね、こう、まばたきしたらその一瞬、なぜだか時間は3時間ほど回っていましてね……』


『寝坊かよ』


『まばたきよ、マバタキ』


『……!!? あ、あの……!!』


『ん……? あっ! アリスちゃん、久しぶりー』


『ところで東雲、さっきの話……』


『え!!? ああ!? あーと、えーと……、ふ、ふふふ、2人は……、えっと……その、指輪……』


『うん! 1か月前に結婚したんだよ』


『!!!!!!!???!?!!??!!!』



「まじかぁ……、まじかあああ……」


 自分一人ではいっさい感付くことはなかったであろう。第三者となり初めてあの時の違和感の正体が浮き彫りとなる。


 これはつまり、三角関係で。


「うわぁ、めんどくせええぇ……」




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