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4-⑤




 そういえばそうだ。今の一生、お義父さんと言った覚えが1度たりともない。


 和葉から何らか聞いた覚えもなければ、顔すら見た覚えもない、俺の記憶に微塵もない。


 靄がほんの少し晴れ、ぽっかり空いた穴の奥底から覗き返される。もちろん俺の妄想の一端でしかないが。


(お義父さん、ここ……だろうな)


 一段落となっているかは審議となるが、それでも進展は進展だ。


 少し丸まった小さい背中を流し見ながら、しかし馳せる思いはプラスの感情ではない。


(何か……、きな臭くなってきたな……)


 会ったこともない人を品評するつもりはさらさらないが、それでも得体の知れない事象に人間の思考が介入しているとなると、そう思わざるを得ない。


(もし、俺の帰還に、小清水家の和解に、和葉の心を引き裂かないと成し得ない部分があるのであれば……、俺は……)


 この過去転生は事故なのだから、と、高を括って切り捨てできるほど俺はできた人間ではない。


 だからこそ願うことなら、ふとした瞬間にも見て見ぬ振りで幸せの中に戻りたい。


 不謹慎ともなる思考に自己嫌悪に陥りそうになるが、不意に、これはもう真っ向から不謹慎と呼べる音声が耳を支配してきた。


『さーてお次は、超ミニスカ美少女大特集!! 男を虜にするチラリズムも!?』


「キャアアアアアアアアア!!!!! なんちゅっ、なんちゅうもん見てんだ!!? やってんだ!!!??」


「えー、みんな見てるよ? これぐらい」


 肩から尻まで飛び上がる。


(この時代、ちょっとコンプラの概念が出てきたってだけで、まだまだ全然ドスケベじゃねぇか!! 気合い入れんなスタッフ!! 動物の映像でも垂れ流しとけよ!!)


 木内は思ってもないことを思った。


「ほら和葉! こっち見ろこっち、あくびのやつやってんぞ!! 好きだろお前!!」


「私もうこんなの見ないよぉ! 赤ちゃんが見るやつだもん」


 反論を示す和葉とのリモコンの取り合いにより、ブラウン管がコロコロ切り替わる。


『ぶらぶらぶらぶらー、あし、あし、あしあしあし』


「うるせぇー!! 子供はNHK見ときゃあいいんだよ!!」


『あっちこっちそっ、……あーららこちらのお嬢さん、生足がまたセクシー』


「NHKなんかもう見ない!! 面白くない!!」


『この丈! もうこれ見えてます……、てあしてあしてあし、っお、てあしてあしてあし、っお、てあしてあしてあし、っお』


「だめだ、だめだぁ! 子供はアニメだけ見とけば……」


 ふと液晶を見ると、そこで俺は脱力したかのように言葉を止め、徹底的なテレビを眺める。


『だんだんはやくなるぞー! てあしてあしてあしてあしてあしてあしてあし……』


「んん? どうしたの?」


「い、いや……、この年代……じゃなくて、このお兄さん方見たら……涙腺に来るっていうか……」


 画面への登場人物に心痛い感情を、憂いを帯びた眼差しを向ける。


「へ? ふ、ふーん……、じゃあ…………見る?」


「うん……見る」


 考えはまとまりつつある中、もはや立場が逆転しているのは俺に対する彼女だからだろうか。


 言い知れぬ母性に絆されつつはあった。




 本当にお疲れ様です。ここまでが4話となります。

 反省会は活動報告にうつしました。

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