3-④
明かりが灯り始めた路地の中央。
その真下から少年少女を眺めるという不審者ムーブをかましながら、向き合っている本人たちより緊張しているのは俺だった。
(だ、大丈夫、和葉は事なかれ側の性格だからな。焦んなよ俺……)
「で、なに? こんなとこで」
「あぁ……、うん……」
不機嫌な様相を隠すこともない応答に叶芽君もたじろいでしまう。
好意を抱いている相手にここまで露骨な態度をされると、誰でもビビってしまうもの。子供だと尚更だろう。
(でも、お前は俺だろ! 決心新たにしたなら後は当たって砕けろだ)
「あのさっ! 今日の朝……! あの、ごめん……」
「…………えっ? あ、うん……はい」
思ったよりも拍子抜けだったのか、面を食らったような反応を示す。
「これからも仲良くして……、ほしいな」
「うんいいよ」
和葉の気の抜けた表情とこのあっさり感を見る限り、やはり時間が解決する問題であったのだろうか。
ぶっちゃけ取り越し苦労感は否めない。
(まあ、仲直りできたならそれでいいか)
今日1日、色んな木内叶芽に振り回されただけではあったが、終わりよければの精神で一旦は胸を撫で下ろしておくことにする。
2人は仲直りの握手を交わしながら、何事もなかったかのように他愛のない話をしていた。
(ここまでしたらもう大丈夫だろ。さっさと帰って飯でも作るかー)
「俺! 和葉のこと守るからさ! これからも!!」
「う? うん……?」
「俺さ、和葉のこと好きだから!」
(ん? こいつ何いってんだ……)
様子がおかしい。子供ならこのまま手でもつないで仲良く帰るものじゃないのか?
「叶芽君? どーゆーこと?」
「だから俺の彼女にしてあげる」
(っっっっ!!?!?! かなめくんっっ!??!!?!)
突然の大胆告白。
(なに急に気取ってんだお前!!! ちょっと待て、俺こんなことした記憶ないぞ!!?)
狼狽える俺の息継ぎも不十分に、和葉からの返事自体は一瞬であった。
「ごめん、無理」
(振られたああああぁぁぁぁぁ!!!!)
「叶芽君いつも嫌がらせしてくるし、正直あんまり好きじゃない」
(ごもっともでしかない!! いや、そもそもなんで告白になるんだ!? 小2の頃の俺が気持ちの言語化なんてできてるわけないだろ……)
なにか、俺が生きた時代とは異なる要因があったに違いない。
叶芽君の深層心理を揺るがすその要因とは……!?
『頼れる大人が誰もいない以上、和葉を支えるのは最終的にお前らなんだからさ……』
(俺じゃねえか!!!)
華麗なノリツッコミを虚無へと決め込むその傍ら、聞き捨てならない一言が耳に入ってくる。
「それに私、好きな人いるし」
(!!?)
「じゃあ仕方ないかあ。……友達ならいい?」
「うん、友達ならいいよ」
淡々とした事後処理がされる最中、俺はとんでもない事実に気付き始めていた。
(この好きな人って……俺のことだよな……? も、もし……、もしもだ、この告白から未来が変わってしまうのだとしたら、俺は大それたことをしてしまったんじゃないか……?)
所謂タイムパラドックスの局所、このまま未来へ戻ることができた場合を想像してみよう。
俺←←←←和葉←←←←叶芽君
好き 好き
(振られた)
これが現状だとして、このまま俺が元の時代に帰ってしまうと……。
俺←←←←和葉←←←←叶芽君
(×)好き 好き
(振られた)
俺 和葉←←←←叶芽君
(×) 好き
(振られた)
俺 和葉←←←←叶芽君
(×) (振られた)
終わり
くっつくビジョンがない!! 結婚しない!!
(本人だからわかるぞ、俺はここから再燃するようなやつじゃない。そういうやつだ……俺は)
安易に元の時代に戻ったとして、俺たちの家庭が時空の闇に葬られてしまうかもと考えただけでも……。
俺は本当にとんでもないことをしてしまったのかもしれない。
地面の揺らぎも消えかける夕刻、揺らぎと共に消え入りそうな背中がその路地にたたずんでいた。
お疲れ様です。ここまでが3話となります。
反省会は活動報告にうつしました。




