第九十話 フィーリングが合うわたしたち
今、わたしは、マクシノール殿下の部屋で、テーブルの前の席に座っている。
マクシノール殿下とのお茶会。
お茶会といっても、マクシノール殿下と二人きりのこぢんまりとしたもの。
しかし、高級な紅茶とお菓子が用意されて、優雅な雰囲気だ。
わたしは、今日が「特別な日」になるとマクシノール殿下に言われていた。
そのマクシノール殿下に失礼のないように、わたしは、コルヴィシャルデ公爵家の屋敷を出る前に、自分の体を念入りに洗い、お気に入りのドレスを着て、この場所にやってきている。
しかし、心のコントロールは難しかった。
この部屋に入るまでは、胸のドキドキは大きくなる一方だったし、部屋に入ると、
「ようこそおこしくださいました」
と言って、マクシノール殿下が素敵な微笑みでわたしを迎えてくれたので、わたしの心は一気に沸き立ってしまった。
マクシノール殿下は、凛々しい顔立ちと容姿に合った、洗練された服装をしていて、それがまたわたしの心を沸き立たせていく。
わたしは、
「お招きいただきまして、ありがとうございます」
とあいさつだけは何とかできたもの、その後は、なかなか言葉が出てこない。
このままだと、マクシノール殿下とうまく会話をすることができないかもしれない。
なんとか心を落ち着かせないと……。
そう思っていると、マクシノール殿下は、
「どうか今日は、日頃の忙しさや、つらさ、そして苦しさを忘れて、くつろいでください」
とやさしく言ってくれた。
「ありがとうございます」
このやり取りを機に、わたしの心は少しずつ落ち着き始めた。
「それでは、ここにあります紅茶とお菓子を召し上がりください。高級なものを選びましたので、おいしいと思います。どうぞご堪能ください」
マクシノール殿下は、微笑みながら、わたしにそう勧めてくれた。
「先に味わってよろしいのでしょうか?」
「もちろんです。先に召しあがりください」
マクシノール殿下はそう言うものの、先に食べるのは失礼な気がする。
「マクシノール殿下の方こそ、先に召し上がりください」
わたしがそう言うと、マクシノール殿下は、
「いえ、クラデンティーヌさんはお客様なのですから、遠慮なさらす、先に召しあがってください」
と言った。
先に食べることをお断る方が失礼になると思ったので、わたしは、
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えまして、いただきたいと思います」
と言って、マクシノール殿下の申し出を受け入れた。
「どうぞ、召し上がりください」
わたしは、紅茶を飲んだ。
高級と言われるものだけあって、味に深みがある。
お菓子も、ほどよい甘さで、食べていると心がとろけてくるようだ。
「マクシノール殿下、紅茶もお菓子もおいしいです」
わたしが微笑みながらそう言うと、マクシノール殿下は、
「褒めていただき、うれしく思います」
と微笑みながら応えてくれた。
その後のマクシノール殿下とのおしゃべりは楽しいものだった。
フィーリングがとにかく合う。
わたしたちは二人とも小説を読むのが好きなので、この話題になると、特に話に夢中になっていく。
何時間話をしてもつきないほどだった。
一度目の転生では、マクシノール殿下にこのような思いを持ったことは一度もないまま処断をされた。
二度目の転生では、グレゴノール殿下と結婚にまで到達していて、結婚した頃までは心が通じていた仲だったとはいうものの、ここまでフィーリングが合うことはなかったように思う。
そのことがグレゴノール殿下の浮気の原因の一つになったとは思いたくはない。
しかし、もしかすると、その理由の一つになった可能性はある。
三度目の転生にして、初めてここまでフィーリングの合う方に会うことができた。
それは、とてもうれしいことだった。
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