第八十一話 マクシノール殿下の回復を祈り、想いを伝えるわたし
ゲームでは、主人公がマクシノール殿下ルートに進んだ場合でも、マクシノール殿下が病気になってしまうような場面はなかった。
また、その他のキャラクターを選択しても、このような場面はない。
マクシノール殿下が生命の危機に陥りそうになっているという、ゲームとは別の状況で進んでいる。
このままでは、マクシノール殿下は、この世を去ってしまうかもしれない。
そんなことになったら、わたしは何の為にこのゲームに転送してきたのかわからない。
わたしは、本当は主人公のセリラーヌに転生したかった。
そうすれば、もっと楽にマクシノール殿下と仲良くなり、そして、仲を深めていくことができたと思う。
ゲームの世界と今わたしが生きている世界は、微妙に違うところがあるようなので、マクシノール殿下がどこかでこのように倒れてしまう可能性はないとは言えない。
でもその可能性は小さいと思う。
わたしは、このゲームでの悪役令嬢クラデンティーヌとして生きている。
最初は絶望したけれど、今まで一生懸命努力をしたおかげで、マクシノール殿下と相思相愛になる後もう一歩のところまできた。
今度マクシノール殿下に謁見した時は、いよいよ二人とも恋人どうしとしての意識に到達することができると思っていたのに……。
それが今は、到達を目前として、その足場がもろくも壊れようとしていた。
ああ、どうして、どうしてこんなことに……。
マクシノール殿下がもしこの世を去ってしまったら、わたしはもう生きる気力がなくなってしまう。
わたしはマクシノール殿下のものだというのに……。
絶望感がわたしを襲う。
そして、それとともに気力がなくなっていき、あきらめの気持ちがわたしの心の中を急速に占めていく。
わたしの方もこのままだと倒れてしまうかもしれない。
そう思っていると、心の底から、
「まだ、あきらめてはいけない!」
という声が聞こえてくる。
そうだ。
わたしは、過去の人生、そして転生の時にはできなかった、愛する人との幸せな人生を歩みたいと思っている。
今、その愛する人は、生命の危機に陥りつつあり、厳しい状態だ。
しかし、まだ、回復する可能性は十分ある。
その愛する人の回復力を信じなくてどうするというのだろう?
わたしのマクシノール殿下への想いがまだまだ足りないということなのかもしれない。
今わたしがしなければならないのは、マクシノール殿下の回復を祈ることだ。
そう思ったわたしは、
マクシノール殿下の熱がすぐにでも下がりますように。。
生命の危機には陥らず、苦しみがすぐにでもなくなりますように。
今はほとんどなくなっている食欲が復活しますように。
そして、回復して健康になりますように。
元気な姿になりますように。
というような言葉で、マクシノール殿下の回復を一生懸命に祈り始めた。
また、わたしのマクシノール殿下への想いも、マクシノール殿下の体の回復の救けになると思った。
そこで、マクシノール殿下に対しての熱い想いも、その祈りと一緒に、声には出さず、心の中でマクシノール殿下の心に向けて伝え始めた。
わたしはマクシノール殿下のことが好きです。
マクシノール殿下の微笑みを見ると、わたしはうっとりしてしまいます。
できればもっとマクシノール殿下と仲を深めていきたい。
マクシノール殿下に尽くしていきたい。
手を握り合うだけではなく、キス、そして、それ以上の段階に進んでいきたい。
こうした祈り、そして想いを伝えていくとともに、看病の方もきちんと行っていく。
容態が悪化しないかどうか、という点も、きちんと状況を把握していった。
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