第八十話 マクシノール殿下に付き添うわたし
マクシノール殿下は、一瞬とはいうものの、わたしたちに声をかけてくれた。
その時は、回復をし始めたのでは、と思い、希望が少し湧いた。
でも、すぐにまた意識を失ってしまう。
生命の危機に陥ってしまう可能性が強くなっている気がする。
それは絶対に避けたい。
わたしは、今晩、マクシノール殿下のそばで付き添っていきたいという気持ちが急激に強くなってきた。
もちろん、わたしがそばで付き添っても、マクシノール殿下の熱が下がる可能性はないのかもしれない、
しかし、その可能性は全くないとはいえないだろう。
それに、わたしは、マクシノール殿下のお役に少しでも立ちたいと思っていた。
そこでわたしは、王妃殿下と侍医に、今晩のマクシノール殿下に対する付き添いを申し出た。
「あなたに無理をさせるわけにはいけません」
「わたしとしても、クラデンティーヌ様にご無理をさせるわけには参りません」
と二人は最初、断っていた。
それでもわたしは、
「王妃殿下はお疲れの様子でございます。わたしは王妃殿下のお体も心配でございます。今晩だけでもわたしにお任せいただきますようお願いします」
と言って、王妃殿下にお願いを続けていた。
やがて、王妃殿下は、
「今までは、言いにくいことだったので言わなかったのだけれど、まだあなたは結婚してお妃になったわけじゃないので、そういう意味でも、付き添いを認めるのは難しいの」
と言った。
わたしは、それを聞いて、王妃殿下はわたしに配慮をしてくれていたのだと思った。
わたしの体調の方を先に気づかってくれていたのだ。
でもこれは、結局、断られてしまう流れでは……。
そう思っていると。王妃殿下は、
「でも、あなたのマクシノールを想う気持ちは本物。その心は汲み取ってあげなくてはいけないと思っています」
と続けて言った。
そして、一旦言葉を切った後、
「今晩だけではありますが、わたしはあなたがマクシノールに付き添うのを許すことにします。侍医の方もそれでよろしいですね」
と言ってくれた。
「王妃殿下のおっしゃる通りに従います」
侍医も同意する。
「王妃殿下、ありがとうございます」
わたしは王妃殿下に頭を下げた。
こうして、わたしはマクシノール殿下のそばで今晩付き添いをすることになった。
わたしはマクシノール殿下のそばに付き添っている。
今は一人だ。
先程までは、政務を終えてこの部屋にやってきた父国王陛下と母王妃殿下、そして侍医がここにいた。
マクシノール殿下は、意識を失ったまま。
みなマクシノール殿下のことを心配していた。
そして、国王陛下と王妃殿下は、一生懸命マクシノール殿下の回復を祈っていた。
しかし、夜遅くなってきたので、三人は一旦休むことになった。
三人とも疲労の色は濃い。
国王陛下が、
「マクシノールの容態が悪くなるようでしたら、すぐにわたしたちを呼びなさい」
と言った後、この部屋から国王陛下と王妃殿下は自分たちの寝室へ、侍医も自分の部屋へと戻って行った。
わたしはマクシノール殿下と二人きり。
マクシノール殿下は意識を戻る様子はない。
せっかく二人きりになれたのに、と思わざるをえない。
侍医は、
「このまま熱が下がらないと、生命の危機に陥ってしまう可能性もないとはいえません」
と言っていた。
「可能性もないとはいえません」
と言ってはいたけれど、そのように言うということは、生命の危機が訪れる可能性があるということだろう。
このまま熱が下がらなければ、そうなってしまう可能性は強くなっていく。
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