第七十七話 王宮からの使者
舞踏会から二週間ほどが経った。
この間にわたしは、休日にコルヴィシャルデ公爵家の領地にある屋敷を訪れ、
「コルヴィシャルデ公爵家領内についての報告」
「コルヴィシャルデ公爵家についての報告」
「コルヴィシャルデ公爵家改革プロジェクトチームの第一回目の報告」
をそれぞれ聞いていた。
税負担の改善を図った結果、領民たちの不満はやわらぎつつあるとのこと。
コルヴィシャルデ公爵家内のわたしの評判も、少しずつではあるが、良くなる方向に向かっているようだ。
プロジェクトチームの方は、現状分析を細かく行っているところ。
しかし、既に問題点はかなりの部分が抽出されてきていて、その部分をわたしはプロジェクトチームの人たちと共有した。
「クラデンティーヌ様が既に大枠の対策案を示されておられます。その案に基づきわたしたちは、細かい対策案を練っていきます」
とクラシディネさんは言っていた。
わたしは三人のことをねぎらった。
三人とも頼りになる。
わたしは領内経営に必要な指示を、ギョーネさんを始めとする公爵家の人々に出した。
そして、プロジェクトチームへのメンバーに必要な指示を出した後、王都にある公爵家の屋敷に戻ってきた。
領内との往復は、想像以上に疲れるものだ。
しかし、公爵家を良くしていくということは、充実感も大きい。
こうして、学校に行きながら、領内経営に携わっていたわたし。
多忙な中ではあったのだけれど、マクシノール殿下への想いはますます強くなってきていた。
夜寝る前は、特に、マクシノール殿下のことで心が一杯になる。
最近は、夢にまで出てくるようになっていた。
その中では、いつもラブラブなわたしたち。
恥ずかしいのではあるけれど、キスをする夢も見るようになってきた。
間もなくマクシノール殿下と会う日が来る。
前回、マクシノール殿下は、
「次にお会いする時は、あなたの想いに応えたいと思っています」
と言っていた。
その、
「想いを応える」
という意味の中には、キスをするということも含まれているのだろうか?
わたしはもう手を握り合う程度では、我慢できなくなっていた。
できればキスまで進みたい。
そう思うようになってきた。
そしてマクシノール殿下に謁見する当日を迎えた。
わたしは、マクシノール殿下に求められることも想定して、風呂で念入りに体を洗っておいた。
そして、お気に入りのドレスを着ていく。
もちろん、今日すぐに。そこまでいく可能性はほとんどないと思っている。
まだわたしたちは、手を握り合うことしかしておらず、キスさえもしていないからだ。
でも、わずかな可能性ではあっても、準備は必要だ。
その準備が終わり、王宮に向かおうとしていたのだけれど……。
「クラデンティーヌ様、王宮から使者が来ております。こちらの部屋にお通ししてよろしいでしょうか?」
侍女のドディアーヌさんが、執務室にいたわたしにそう伝えてきた。
「伝えてくれて、ありがとう。お通ししてください」
わたしはそう応えた。
マクシノール殿下の使者は、今までも定期的に来ていた。
しかし、今日は、これから王宮に出かけるところだ。
もしかして、マクシノール殿下が倒れたのでは?
そういう緊急性のあることなら、使者が来ることもありうるだろう。
マクシノール殿下は、ゲームの中では健康だという設定だった。
ただ、幼少期は、少し体が弱かったという設定だった。
転生を思い出す前のわたしの記憶の中でも、この設定の通り、子供の頃は、それほど体は強くなかったようだ。
しかし、ゲームの中の設定と同じで、思春期を迎える頃には、日頃の鍛錬を続けていった結果、健康な体になっていたので、わたしはマクシノール殿下が倒れたとは思えなかった。
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