第七十一話 愛のあるダンスを踊りたいわたし
舞踏会もたけなわになってきた。
今は休憩中。
マクシノール殿下とわたしは、部屋の中で待機をしている。
この後は、マクシノール殿下とわたしの出番だ。
今までもクラデンティーヌは、マクシノール殿下と舞踏会でダンスを披露してきた。
マクシノール殿下もクラデンティーヌも、王室や貴族のたしなみとして、ダンスの練習は必須だった。
クラデンティーヌは、師事をしていたダンス教師には、
「クラデンティーヌ様のようにここまで上手な方は、この王国どころか、他の国々でも少ないと思っております。素敵なことにございます」
と褒められていた。
マクシノール殿下も、師事していたクラデンティーヌとは別のダンス教師に、同じような内容で褒められていたそうだ。
二人とも、ダンスが上手だということが認められていたことになる。
でもクラデンティーヌは、
「当然のことよ。わたしは、才色兼備のクラデンティーヌなのよ」
と言って、高らかに笑うだけで、育ててくれた教師に対する感謝は全くと言っていいほどなかった。
ここまで上達したのは、教師が教えてくれたことによるところが大きいと言うのに……。
転生を思い出す前のことだとはいうものの、恥ずかしい限りだ。
二人は、初めての舞踏会前、一緒に練習をした。
どちらもダンスが上手なので、長い時間をかける必要はなかった。
レベルの高いところに到達するまでは、そんなに時間はかからなかった。
しかし……。
形だけは良くても、そこに心はなかった。
マクシノール殿下もそうだったと思うのだけれど、クラデンティーヌもダンスは儀礼的なものとしか考えてはいなかったし、二人のダンスを眺めている参集者たちの方も、儀礼的なものとしか考えてはいなかった。
わたしたちは、婚約者なのだから、本来はもとラブラブな状態になってもいい。
そういう状態になっていれば、ダンスもより洗練されて、心がこもったものとなっていく。
参集者を心から感動させるほどに進化していくことも可能だと思う。
しかし、今までのわたしたちの関係では、それは夢の話でしかない。
また、今までの舞踏会では、クラデンティーヌのことを嫌っている人は大多数を占めていた。
そういう人たちでさえも、クラデンティーヌのダンスが上手であることは認めざるをえなかったようで、拍手はしてくれてはいた。
でも、その拍手には心がこもっているとは言い難かった。
そんな拍手をもらっても、決してうれしい気持ちにはならなかった。
それ以降の舞踏会は、より一層、儀礼的な面が強くなった。
そして、マクシノール殿下との練習をすることはなくなっていき、そのまま、舞踏会にのぞむようになっていた。
それでも、個々においては、ダンス教師の指導を受け続けて、さらにダンスのレベルを上げていたこともあり、二人での練習の時間を持つことができなくても。レベルの高いダンスが披露できていたので、それでいいと思っていた。
今は違う。
マクシノール殿下と一緒に踊るダンスのレベルをもっと高いものにして行く為と、マクシノール殿下もっと仲を良くしていく為にも、二人でダンスの練習をする時間を定期的に作っていきたいと思っていた。
そして、舞踏会の参集者の前で、その成果としての、わたしたちの愛のあるダンスを披露したいと思うようになっていた。
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