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第七十話 セリラーヌさんとその幼馴染を応援するわたし

 王室楽団が音楽を演奏する優雅な雰囲気の中、舞踏会が始まった。


 出席者たちは、自分たちの存在を誇示すべく。着飾ったドレスや礼服姿で、競うようにダンスを踊っていく。


 どの人たちも、一生懸命練習してきているのだろう。


 レベルは皆高い。


 今までのクラデンティーヌは、そういう人たちを、自分がより一層輝く為の舞台装置にしか思っていなかった。


 こういう席で、人々のダンスを楽しむ気持ちは全くと言っていいほどなかった。


 こうした人々が踊った後、もっとレベルの高い、マクシノール殿下とわたしのダンスを見せつけることによって、自分のすごさを嫌と言うほど参集した人々に味あわせることしか考えてはいなかったのだ。


 しかし、今は違う。


 純粋に隣の席にいるマクシノール殿下とこの舞踏会を楽しみたいと思っていた。


 ただ、その意気込みが強すぎて、この舞踏会が始める直前ででも、マクシノール殿下に「好き」と言う言葉を言うことはできなかった……。




 セリラーヌさんとテドランスさんも踊っている。


 こういう舞踏会は初めてのせいか、さすがに緊張しているようだ。


 ちょっと動きはぎこちない。


 ただ、初々しさがあって、好感を持つことができる。


 そして、ぎこちなさは、踊っている内にだんだん少なくなっていく。


 この場に出てくるほどあって、一般的なレベルよりも高いと思う。


 ここに来るまでに、一層懸命練習をしてきたのだろう。


 イケメンと美少女の組み合わせなので、より一層の美しさも感じてくる。


 何よりもいいのは、楽しそうに踊っていることだ。


 転生の記憶が戻ってから、しばらくの間は、マクシノール殿下とセリラーヌさんが親しい仲になるのを、恐れたところはある。


 そういうことを思うのは、自分の心が狭く、悪役令嬢の域を脱出できないということだと思ってはいた。


 しかし、これは、わたしの「婚約破棄」「処断」に直接的につながってしまう話だ。


 マクシノール殿下とセリラーヌさんには、この舞踏会で会うにしても、仲良くなってほしくはないと言う心が、湧き出てくるのを止めることはできなかった。


 とはいうものの、もうセリラーヌさんに対するイジメはできない。


 わたしはそういう意味でも生まれ変わることを決意したからだ。


 しかし、結局のところ、この転生においては、わたしは一人で勝手に悩んでいただけだった。


 セリラーヌさんはテドランスさんのことが好き。


 しかも、わたしが思うより、はるかにテドランスさんのことが好きだったのだ。


 わたしは、一人勝手に悩んでいた自分を恥じた。


 そして、セリラーヌさんという女性の人柄を見直すようになったのだ。


 彼女は、長年いじめられていたにも関わらず、今では普通にわたしと親しくなっていた。


 もうわたしは、以前のわたしではないとはいうものの、普通であれば距離を置くと思う。


 その点で、わたしはセリラーヌさんが、芯の強い、そして、心のやさしい人物であることを改めて理解した。


 一度目の転生で、わたしが婚約破棄をされた時、わたしに意地悪な表情を向けたのは、わたしに対する怒りがよほど強くたまっていたのだろう。


 セリラーヌさんと親しくなった今では、セリラーヌさんとの恋を応援する立場だ。


 わたしの友達の二人も、踊る相手が見つかったようだ。


 しかし、こちらの方も、ちょっと動きはぎこちないところがある。


 踊るのに精一杯で、楽しむ余裕はなさそうだ。


 でも、その内慣れていくと思う。


 二人は、婚約者もいないし、まだ付き合っている男性もいない。


「今日は、フィーリングの合いそうな方と踊りたいと思っています。そして、できればその方とお付き合いにまで進むことができたらいいな、と思っております」


 と二人は口々に言っていた。


 わたしはその想いがかなうことを願いながら、二人のそれぞれのダンスを眺めるのだった。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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