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第六十八話 凛々しいマクシノール殿下

 わたしは、ロデナーヌさんと話をした後、マクシノール殿下のところへ向かっていく。


 途中、あいさつをしながら歩いていた。


 しかし、ほとんどの人は、わたしが頭を下げてあいさつをすると驚く。


 転生のことを思い出すまでのわたしは、あいさつをする時も、傲慢な態度を取っていたからだと思う。


 驚いた後は、一応あいさつはしてくれるものの、それで終わり。


 こういうところでは、少しでも話をするのが普通だ。


 しかし、それ以上の話をしようとする気はなく、わたしのことを避けたいという気持ちが強いように思えた。


 まだまだわたしに対して、悪いイメージを持っている人は多い。


 わたしは寂しい気がした。


 そして、評判がまだまだ悪いままということを実際に味わうのは、さすがにわたしも心にこたえてくる。


 しかし、わたしはすぐに心を切り替えた。


 心を入れ替えてからまだ一か月ほどしか経っていないので、仕方のないことだろう。


 先程のロデナーヌさんが言ってくれた話もそうだ。


 周囲の評判は評判として受け止めて、しっかり自分を磨いていけなければならない。


 一生懸命努力をしていけば、こういう人たちの評判も良くなっていくだろう。


 わたしはそう思うのだった。




 そして、わたしはマクシノール殿下の近くにたどり着いた。


 周囲には、貴族令嬢が集まってきていた。


 その人たち一人一人とマクシノール殿下は話をしている。


 こういう場所でのマクシノール殿下は、微笑みを絶やしたことはない。


 貴族令嬢たちは、イケメンのマクシノール殿下から微笑みを向けられて、とても感激しているようだ。


 涙を流している女性もいる。


 その気持ちはよくわかる。


 わたしが彼女たちと同じ立場でも、感激すると思う。


 それだけマクシノール殿下は素敵な方なのだ。


 先日わたしが謁見するまでのマクシノール殿下は、わたしに対してほとんど微笑むことはなかったので、それだけでもわたしに対しては、決していい感情を持っていなかったことが理解できる。


 それにしても今日のマクシノール殿下は、礼服に身を包み、いつも以上に凛々しい姿をしている。


 わたしは、それだけで心が沸き立ち始めていた。


 しばらくの間、マクシノール殿下の姿にうっとりとしていたわたし。


「クラデンティーヌさん、こんにちは。今日は来ていただいてありがとうございます」


 そのように声をかけられて、わたしは我に返った。


 その声は、マクシノール殿下のものだった。


 微笑みをわたしに向けてくれている。


 しかも、心の底からのもののように思う。


 もしわたしのこの思いが間違っていなければ、マクシノール殿下の方も、わたしへの想いが少しずつ高まっているような気がした。


 わたしは、そう思うと、ますます心が沸き立っていく。


 そして、マクシノール殿下に。


「とても素敵なドレスを着ておられますね」


 と褒められたので、心が沸騰しそうになる。


 それでもなんとか、


「マクシノール殿下、今日はお招きいただき、ありがとうございます。そして、ドレスのこと、お褒めいただきまして、ありがとうございます」


 と恥ずかしさをなんとか抑えながら、応えることができた。


「舞踏会が始める前には、席に戻ってきてください。わたしも戻りますので。そして、今日も、一緒に踊りましょう」


「お気づかい、ありがとうございます。マクシノール殿下とのダンス、楽しみにしたいと思います」


「それではよろしくお願いします」


「よろしくお願いします」


 マクシノール殿下はわたしとの話が終わると、また貴族令嬢たちを始めとしたあいさつの場に戻っていった。


 わたしはしばらくの間、またうっとりとしていた。


 しかし、やがて、マクシノール殿下に伝えなければならないことを伝え忘れていたことに気がついた。


「好き」と言う言葉。


 ここで言うはずだった言葉のことをすっかり忘れていた。


 それだけマクシノール殿下は素敵で、心を奪われていたということだ。


 でも今の場面は、本来であれば、一番言いやすかったところ。


 これはわたしにとっては痛手ということになる。


 少し落ち込まざるをえないところだ。


 しかし、そういうことは言っていられない。


 まもなく舞踏会が始まる。


 ここで、わたしは、マクシノール殿下と息のあったダンスを踊っていく。


 そうすることによって、マクシノール殿下との距離を縮めていく。


 恋人どうしとしての意識に高めていくきっかけにしたい。


 わたしはそう思い、心を立て直していくのだった。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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