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第六十六話 マクシノール殿下に言葉で想いを伝えたい

 舞踏会出席の為、王宮に馬車で向かっているわたし。


 今日、わたしは一つしなければならないことがあった。


 それは、マクシノール殿下に対して、


「マクシノール殿下、好きです」


 と言うこと。


 わたしは前回、マクシノール殿下に謁見をした後、急速にマクシノール殿下に心が傾き始めていく。


 謁見した後の夜、これからは、謁見等で会う度に、「好き」という気持ちを言葉で伝えるという決意をした。


 わたしはその日以降、マクシノール殿下への想いが、どんどん高まってきていて、夜は特にマクシノール殿下のことのみを想うようになっていた。


 わたしの中で、マクシノール殿下への想いが、わずかの間でこれほどまでに高まってくるとは、想像もしていなかった。


 出発点での人生では、病弱だったこともあり、わたしの恋の対象になったのは、ゲームでのキャラクターのみ。


 そして、その中でも、わたしが恋をするほど好きになったキャラクターは、マクシノール殿下とグレゴノール殿下の二人だけだった。


 一度目の転生では、マクシノール殿下の婚約者になることはできたものの、恋としての想いは持つことができず、婚約を破棄されてしまい、悪役令嬢として処断。


 二度目の転生では、グレゴノール殿下に恋としての想いを持つことができて、結婚もすることができたものの、浮気をされてその関係は壊れ、心も体も壊れてしまう。


 二度目の転生の時に、恋という想いを持つことはできてはいるので、この想い自体の経験は持っている。


 しかし、その時でも、ある程度の時間はかけていた。


 今回のような短い時間での、想いの高まりは経験がない。


 昨日の夜、寝る前のわたしは、心のコントロールができないくらい、マクシノール殿下のことを想ってしまうほどになっていた。


 いったいわたしはどうしてしまったのだろう……。


 今日は、自分の心を落ち着かせ、今まではなんとか心をある程度冷静な状態に保っていたのだけれど、またマクシノール殿下での想いが高まってきていた、


 この状態でマクシノール殿下にお会いをしたら、「好き」という気持ちが高まりすぎて、心が沸騰してしまうかもしれない。


 わたしにとって、マクシノール殿下はそこまでの気持ちにさせるほどの方だった。


 ただ、今日、わたしはマクシノール殿下に「好き」という気持ちをきちんと言葉で伝えることはできるのだろうか?

 どうも自信がない。


 マクシノール殿下の素敵な容姿を見るだけで、心が沸き立ってしまいそうだ。


 他の言葉はなんとか言えたとしても、「好き」という言葉は、恥ずかしくなりすぎて言えなくなってしまいそうな気がする。


 それでも今日どこかでその言葉を言わなければならない。


 言って、マクシノール殿下にその気持ちを伝えて、距離を少しでも縮めなければならない。


 後は想いを伝える場面。


 マクシノール殿下と会ってすぐがいいのか?


 ダンスをマクシノール殿下と踊る前がいいのか?


 その後がいいのか?


 ここも悩みどころだ。


 ただこれは、その時の状況で判断するしかない。


 この場面で、ということは決めておかない方がいいだろう。


 もし、決めていた場面でうまくいかなければ、混乱して、結局伝えることができなかったということになりかねないからだ。


 どの場面でもいいので、伝える準備をしておかなければならない。


 マクシノール殿下、好きです。


 わたしは、心の中で、マクシノール殿下にその想いを伝える場面を思い浮べ、練習をしていた。


 しかし、練習をするだけでもだんだん恥ずかしくなってくる。


 この恥ずかしいという気持ちを乗り越えなければならない。


 なんとか今日、マクシノール殿下に「好き」と言う気持ちを伝えたい。


 その気持ちを強く持っていくわたしだった。


「面白い」


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