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第六十話 わたしとの仲を深めたいと思うマクシノール殿下

 マクシノール殿下も、わたしのことを理解したいとは思っているのは伝わってくる。


 しかし、理解がなかなかできないでいるようだ。


 わたしは、これから、マクシノール殿下に対してどう対応したいのだろう?


 今日ここに来たのは、マクシノール殿下に、「生まれ変わった」わたしの姿を理解してもらうというのが、大きな目標だった。


 そうすることによって、婚約を維持し、結婚にまで進んでいきたいと思っていた。


 そして、今までの経緯から、婚約破棄は避けられなかったとしても、処断は避けられることができると思っていた。


 ただ。わたしは、お互いの心がわたしへの理解が進むことによって近づき、恋人どうしの意識になっていくことは、理想だとは思っていたし、想定はしなかったわけではないものの、現実的には難しそうだと思っていた。


 マクシノール殿下が、「形式結婚」「白い結婚」の話をしていたけれど。わたしの方も。マクシノール殿下と結婚できたとしても、その状態になる可能性は強いと思っていた。


 わたしは、心の底ではマクシノール殿下に好意を持っていたので、その状態は避けたいと思ってはいたものの、マクシノール殿下の心が動かなければどうにもならない。


 もし、そうなったら、「婚約破棄」「処断」という厳しい状況を避けることができたので、それだけでもよかったと、自分を納得させるしかないと思っていた。


 そのように思っていたので、マクシノール殿下がわたしに心を動かし、恋に近い状態になることは、全く想定をしなかったわけではないのだけれど、今までの対応からすると、まずないことだと思っていた。


 そして、わたしの方も、マクシノール殿下に恋をするほど、心を動かされることは、今日ここに来るまでは、ほとんどないことだと思っていた。


 しかし、わたしたち二人の心は、今日ここに来るまでは、ほとんど想定していなかった方向に行っている。


 今日のやり取りをしている間に、わたしはマクシノール殿下に恋をし始めた。


 そして、あっという間にその気持ちが強くなってきていることは、自分でも理解をしている。


 しかし、お互いが恋人どうしの意識になっていく為には、マクシノール殿下も言っていた通り、お互いの仲を深くしていかなければならない。


 そうでなくては、片想いをいうことになってしまう。


 マクシノール殿下は、月一回会っていたのを、これからは、月二回にしたいという提案をした。


 わたしは、もちろん、


「月二回のことは、もちろん承諾させていただきます。お忙しいところ、わたしに対して思いやりをしていただきまして、ありがとうございます」


 と言って承諾した。


 うれしくなったわたし。


 その後、マクシノール殿下が


「気にすることはないです。もともとわたしたちは婚約者どうしなのですから。本来は、結婚に向けて、仲を深めていく必要があるのです」


 と言ったのに対し、わたしは、


「わたしもそれは同じ気持ちでございます」


 と返事をした。


 わたしも、この返事の通り、マクシノール殿下との仲を深めていきたいと思っていた。


 とはいうものの。それは心の底からの想いにはなっていなかった。


 今日、そこまで話が進むことは想定していなかったわけではない。


 しかし、今までのマクシノール殿下との状態が、ほぼ形だけのものだったので、心の底から仲を深めていくという想いには、まだ到達はしてはいなかった。


 二度目の転生のことを思い出したのも影響している。


 わたしは、婚約者だった幼馴染と恋人どうしの意識になってラブラブになった。


 そして、結婚まで進むことができた。


 しかし、そこまでして愛し合った仲だったのに、浮気をされてしまった。


 わたしはそれで、心も体も壊れてしまい、短い生涯で終わってしまった。


 ゲームでの運命の通りに生きることになってしまったとはいうものの、わたしの心の中では、恋愛というものに対する恐れができてしまったように思う。


 でも、ここは二度目の転生とは違う世界。


 そういった恐れというものは、乗り越えていかなければならない。


「面白い」


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