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第五十三話 わたしから三人への説明

 しばらくの間、三人はそれぞれ黙って考えていた。


 わたしはもう言うべきことは言ったと思っていた。


 後は返事を待つだけだった。


 いい返事が来ることを期待していた。


 やがて、三人は、それぞれ、


「わたしは、クラデンティーヌ様についていきます」


「クラデンティーヌ様の為、力を尽くしてきます」


「クラデンティーヌ様の為に、一生懸命働きます」


 と言ってくれた。


 わたしは、その言葉を聞いて、涙が目からこぼれてくる。


「三人ともありがとう。これからよろしくお願いします」


 わたしは三人に対して、そう言って頭を下げた。


「こちらこそよろしくお願いします」


 三人もわたしに頭を下げる。


 わたしと三人は、お互いの手を重ね合った。




 しばらくそうしていた後、わたしたちは手を離す。


 そして、わたしは三人に対し。


「それでは今日から、このプロジェクトチームは始動します。みなさんに案をこれから検討してもらうことになりますが、その前に、わたしがこれからの目標と、今まで考えてきたことを話したいと思います」


 と言った。


 三人は、最初この執務室に入ってきた時に比べると、格段に顔つきが変わってきている。


 わたしの言葉を受けて、やる気が出てきているのだと思う。


 いい傾向だ。


「わが公爵家の財政赤字をなくし、健全化させること。これが目標の一つ。そして、もう一つの目標は、公爵家領の経済の活性化をはかること。そして、最終的には、公爵領の人々全員を幸せにしていくことです。その為に今まで考えて来た方策を、今日は概略ではありますが、話をします。まず財政健全化については、公爵家の支出を抑えていくことが必要だと思っています。今までのわたしが言うのは心苦しいのですが、無駄な支出が多い、これらを一つ一つ見直していけば、それだけでも財政は改善されるはずです。ただ、それはわたしを含め、この家全体の痛みを伴うことになるでしょう。反対勢力も生まれるかもしれません。でも、説得していくしかないと思っています」


 三人はじっと聞いている。


 反対勢力が生まれるには、やむを得ないだろう。


 しかし、わたしの転生一度目のような、わたしの生命までを奪うような勢力にはならないと思っている。


 そして、わたしが説得をしていけば、必ず納得してくれるだとうと思っていた。


「そして、次は経済の活性化です。まずは農業を振興させる必要があります。今までのわが公爵領は、小麦しか生産されていないといっても過言ではありません。これからは、小麦だけでなく、ぶどうを中心とした果物、トマトを中心とした野菜、といった他の作物を栽培することを奨励します。これらの作物については、品種改良を行い、品質を向上する努力をいたします。主力の小麦の方も同じように、品種改良を行い、品質を向上させていきます。その為の研究を促進する為に、補助金を出して行きます。そうして、今まで作っていなかった作物を作り、小麦とともに、品質を向上させていけば、わが公爵家の名物ともなり、経済活動の向上につながることは間違いと思います」


「ぶどうやトマトですか……。確かにわが公爵領は、夏は気温が上りますし、年間を通じて、そこまでは降水量は多くないので、栽培するにはいいかもしれませんね」


 クラシディネさんは、そう言った後、言葉を一回切った。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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