第五十一話 これからのわたしは違う
サロレデシアさんに呼応するように、もう一人別の出席者は、
「クラデンティーヌ様、ルナリアーヌと申します。サロレデシアも申しておりますが、わたしたちは、クラデンティーヌ様の心変わりをとても怖れています。クラデンティーヌ様が本気であれば、当然わたしたちは従います。しかし、まだわたしたちは、クラデンティーヌ様に対する信頼がほとんどありません。当主が決められたことなので、従わなければなりませんが、本気でクラデンティーヌ様の政策を進めていくのであれば、クラデンティーヌ様もその本気を示してください」
と言った。
ここまで、老臣たちはわたしに遠慮して発言をしてない。
その中で、この三人だけが、発言をしてくれている。
お父様が推薦した三人。
クラシディネさんはイケメンだし、サロレデシアさんとルナリアーヌさんは美しい女性だ。
しかし、容姿がいいだけではなく、わたしに対する一定の敬意を持ちながら、しかも率直に話をしてくれている。
これだけでもこの三人は有能だということができる。
わたしは、この三人がプロジェクトチームの一員としてやっていけると判断した。
三人をすすめてくれたお父様はさすがだと思う。
わたしは、
「わたしは本気でこの政策を実行していきます。もう気まぐれで政策を変更することはありません」
と力強く言った。
そして、
「ギョーネさん」
といつものように感情を表に出していなかったギョーネさんに対して、わたしは呼びかけた。
「なんでございましょう」
「あなたには、今言ったように、税率をもとに戻すことと、臨時税の取り立てをすぐに止めることの二点を命じます。状況の大きな変化がない限り、今のこの政策は維持していきます。ここにいる関係者は、ギョーネさんの指揮のもと動いてください」
「かしこまりました」
ギョーネさんは率先してそう言ってくれた。
他の人はまだまだわたしの言うことが信じられないのだろう。
遅れて口々に、
「かしこまりました」
と言ってはくれたものの。わたしへの信頼はまだまだない。
しかし、ギョーネさんは、わたしの命令には忠実な男だ。
命令を遂行する為に、他の関係者の動かしてくれるはずだ。
その点は心配しなくていいだろう。
「そして、もう一つあります。先程のプロジェクトチームの話ですが、もう既にそのメンバーの選定は終わっています」
わたしがそう言うと、出席者の方からどよめきの声が上がった。
わたしが本気で言っているとは、全員が思っていなかったのだろう。
これは仕方のないことだ。
「メンバーは、クラシディネさん、サロレデシアさん、ルナリアーヌさんの三人です。前当主閣下からも推薦がありました。この後、三人には残ってもらいます。どうしても嫌であれば、その時申し出てください」
言われた三人は、突然のことで呆然としているようだ。
やがて、三人は口々に、
「今日、そのような話があるとは聞いていません」
と言う。
しかし、わたしは。
「話はこの後聞きます。それまで待ってください」
と言って、三人の言うことを抑える。
そして、わたしは、
「それでは全体の会議を終わります。今日、話をしたのが始めてですので、おそらくはわたしの言ったことは信じられないでしょう。でも、これからのわたしは違います。それだけでも記憶をしてくださるとありがたいです」
と言ってこの会議を終了した。
執務室から去って行く人たちの表情はみな固いまま。
まだわたしのことを信頼している人など誰もいないだろう。
ギョーネさんも、わたしの命令ををただ実行するだけだ。
昔から、わたしを信頼してきたということはない。
少し涙が出そうになる。
しかし、時間をかけて信頼を勝ち取っていくしかないと思い、心を立て直した。
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