第四十七話 お父様との話
一人ぼっちでの夕食。
お父様は、病床にあって一緒に食べることはできない。
お母様は、わたしが十歳の時にあの世に旅立っている。
他に兄弟姉妹もいないので、一人なのは仕方がない。
食べ終わった後、一旦身づくろいをし直して、お父様のお見舞いに行く。
新年のあいさつの時以来だ。
お父様のそばにいた執事、侍女、侍医は、全員席をはずし、隣の部屋で待機する。
ベッドに横たわっているお父様。
だいぶやつれてきている。
ただ、侍医によると、ここ一週間ほどは小康状態になっているので、一時間以上のように長くならなければ、話をすることはできるようだ。
「お父様、体の調子はいかがでしょうか? 九か月ほどご無沙汰して申し訳ありません」
ベッドのそばで、わたしが心配そうに言うと、お父様は驚いた様子だった。
「いったいどうしたんだ? 長いこと戻ってこなかったと想ったら、急に戻ってきて、しかも、しおらしくなっている。親のわたしからしても、今までは傲慢な態度を取っていたのに、ずいぶんと変わったように思える」
「申し訳ありません。お父様。わたしはお父様に申したいことがあって、参上させていただきました」
「申したいこととは?」
「わたしは今まで、お父様がおっしゃる通り、傲慢な態度を取り、わがままばかりを言う人間でした。そして、他人のことを思うことなどは、一切ないまま生きてきました」
「それは残念ながらそうだろうな」
「しかし、この間、高熱で倒れた時に、わたしは、このままではいけないと思ったのです。そして、今までの人生を反省しました。これからは、人々にやさしく、思いやりのある人間になろうと思いました」
お父様は黙ってわたしの話を聞いている。
ただ、どうも戸惑っているようだ。
今までとは百八十度違うことを言っているのだから、仕方がない。
「そう思ってくると、わたしは、コルヴィシャルデ公爵家の当主でありながら、領民のことなど一切考慮することなく、重い税を課しました。また、臨時税も課しました。財政赤字をカバーすると言う意味も最初はあったのですが、やがて、わたしの贅沢の為という意味が強くなってしまいました。今のわたしは、そういう施策をとってしまったことを恥ずかしいことだと思い、反省しきりです。まず税については、税率をもとの状態に戻し、臨時税の取り立てを止めたいと思います。そして、この公爵家を発展する為と領民を幸せにする為の方策を練って、実行していきたいと思います」
わたしは熱意を込めて、一気にそう言った。
わたしはお父様にも、自分が変わろうとしていることを理解してほしかったからだ。
お父様は、じっとわたしの言葉を聞いている。
やがて、お父様は、
「お前はこれから変わっていこうと言うのだね」
と言った。
「はい。そうでございます」
「その決意は本物なんだね」
「はい。本物でございます」
「その決意はわかった」
お父様はそう言った後、一度言葉を切り、続ける。
「お前にはもともと才能がある。だからこそわたしは、当主の座をお前に譲ったのだ。それだけ、わたしはお前には期待をしていたんだ。しかし、残念ながら、今まではうまくいっていたとは言い難い。お前がわが公爵家の中でも、領民の間でもだんだん嫌われ始めてきていることは、わたしの耳にも入り始めていた。しかし、わたしはお前にもう全権を譲って隠居している身だし、なによりも、もう。病気で体が動かない。最近は小康状態にはなってきたが、一時期は話を聞く時間をとることすら難しかったぐらいだ。わたしにできるのは、お前が心を改めてくれるのを待つしかなかった」
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