第四十四話 今までの公爵家
もともと、クラデンティーヌは、幼い頃からお父様の意向で一通りの学問を家庭教師から学ぶだけではなく、領地経営についての学問を学んでいた。
その才能を見込まれ、十二歳になると、学校に通い出すと同時に、お父様の権限移譲を少しずつ受け始めた。
その五年後、お父様が病気で倒れると、お父様は当主としての仕事ができなくなった。
その為、お父様の指示により、クラデンティーヌが当主の座につくことになった。
この頃、既に悪役令嬢の片鱗が現れはじめていたクラデンティーヌ。
公爵家の中には、反対する人たちもいた。
しかし、既に公爵家の政務をとることができるほど成長をしていたし、有能なことはその反対している人たちも理解していた。
結局は全員一致で、クラデンティーヌの当主就任を認めることになった。
就任当初はみなクラデンティーヌに期待をしていた。
きっといい政治をしてくれるだろうと思っていたのだ。
ただ、クラデンティーヌは当主の座を継いだ時点では、入学後五年目の学生だったし、今も入学後六年目の学生だった。
公爵家の領地に行くことはなかなかできない。
そこで、クラデンティーヌが学校を卒業するまでの間は、もう七十歳になる老臣であるギョーネさんに。大切な役割を充てることにした。
その役割とは、コルヴィシャルデ公爵家の領地経営について、わたしの意志を汲み取り、それを忠実に実行してもらうことだ。
もともとギョーネさんは、お父様の下で、お父様の意志に従い。領内の細かい業務を取り仕切っていた人物だった。
その実績を買ったのだ。
当主になったので、領内のすべてのことについての最終決定権はクラデンティーヌにある。
その為、休日になると、クラデンティーヌはギョーネさんを王都の公爵家屋敷に呼ぶことにした。
ここで、ギョーネさんに領地経営についての資料を提出させ、報告をさせる。
そして、クラデンティーヌは領地経営の才能をここで発揮し、必要な指示を出して、実行をさせていく。
ギョーネさんを通す形とはなるが、この形でも的確な指示をすることによって、コルヴィシャルデ公爵家を発展する方向へ導いていく。
学校卒業後、マクシノール殿下と結婚することができた場合、クラデンティーヌは王都にとどまることになるので、そのままの体制を維持することになる。
コルヴィシャル公爵家も今までと同じペースで発展させることができるということだ。
婚約破棄をされた場合は、わたしの心には打撃を受けることになる。
しかし、コルヴィシャルデ公爵家の領地経営には専念できるので、こちらの場合では、結婚するよりもむしろ、コルヴィシャルデ公爵家としては発展が期待できることになる。
とは言っても、マクシノール殿下との結婚を第一に考えていきたい。
クラデンティーヌは、当主の座を受け継いだ直後は、このように考えていたのだった。
最初から、贅沢三昧になり、領民の困窮など考慮しない領主になっていたわけではない。
もともと傲慢なふるまいをし、あまり規模は大きくなかったとはいっても贅沢をしながら生きてきていたクラデンティーヌではあったのだけれど、この一瞬だけは生まれ変わろうとする気はあった。
しかし、当主になって一か月もしない内に、クラデンティーヌはそれまでの自分に戻ってしまった。
公爵家当主ともなれば、その気になれさえすれば、大きな贅沢ができることに気がついてしまったことが大きい。
それからのクラデンティーヌは、ギョーネさんの持ってきた資料は読み、報告は聞くけれども、こちらからは、増税と臨時税の話以外についての指示をすることがほとんどになってしまった。
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