第四十話 セリラーヌさんの好きな人
わたしとセリラーヌさんは友達になった。
その翌日。
わたしはセリラーヌさんを連れて、そのことをわたしの取り巻き二人に報告した。
いや、この二人も取り巻きではもうない。
本人たちは、わたしの取り巻きとしての意識が抜けないのだけれども、わたしの意識としてはもう友達だ。
「これからは、この全員で友達になりましょう」
そうわたしは提案したのだ。
セリラーヌさんを入れた四人は、戸惑っていた。
身分の差は、どうしても四人全員が意識をしてしまう。
でも、わたしの言うこと自体は理解をしてくれた。
リデクさんとラヨンドさんは。直接セリラーヌさんに酷いことを言っていたわけではないのだけれど、わたしの取り巻きとして、冷たい態度は取っていたので、そのことをセリラーヌさんに詫びた。
もともとセリラーヌさんは、この二人にはそれほどのわだかまりは持っていなかったようなので、その詫びをすぐに受け入れた。
後は、時間をかけて、みんなで友達どうしとして仲良くしていけばいいだろうと思っていた。
放課後になると、一週間に二回程度ではあるのだけれど、セリラーヌさんと一緒に図書館に行くようになった。
彼女は読書が好きで、その中でも小説を読むのが好きだった。
そして、一番好きなのが、恋愛小説。
わたしも出発点の人生、一・二度目の天性を通じて、恋愛小説が好きでよく読んでいた。
わたしたちは、たちまちの内に意気投合をしていく。
ある日のこと。
わたしたちは、図書館でお互い本を少し読んだ後、図書館のとなりに設けられた休憩室で、おしゃべりをしていた。
お互いに、恋愛小説が好きなこともあって、話は自然と恋話になっていく。
この際なので、わたしは、
「セリラーヌさんは、今、好きな人とか、あこがれに思っている人はいるの?」
と言った。
舞踏会の前なので、まだマクシノール殿下とは出会っていない時だ。
どういう返事をするのだろうか?
マクシノール殿下がイケメンで素敵な人であるという話は、この学校の女子の間に伝わっていて、あこがれを持つ人は多い。
かつてのわたしを擁護するわけではないのだけれど、こうした人たちにわたしがなめられないようにする為には、気品を通り越して、傲慢にならざるをえなかったというところはあったと思っている。
いずれにしても行き過ぎであったことは間違いない。
セリラーヌさんもこの時点でマクシノール殿下にあこがれを持っているのだろうか?
そう思っていると、
「はい。います」
とセリラーヌさんは応える。
これは、やはりマクシノール殿下のことだろうか?
いや、あこがれを通り越して、好きだと思っている可能性もある。
わたしは、少し心が沸き立ち始めるがなんとか抑えていく。
「どんなお方?」
「恥ずかしいのでちょっと教えにくいですけど」
「できれば教えてほしいな」
「うーん、やっぱり恥ずかしいです」
少し顔を赤らめるセリラーヌさん。
かわいい。
「わたしとしては教えてほしいんだけど、無理かな?」
「クラデンティーヌ様がそんなにお聞きしたいというのでありますならば、教えて差し上げたいと思っています」
「よろしくお願いします」
わたしがそう言うと、セリラーヌさんは、
「わたしが好きなのは、幼馴染のグドノディメル侯爵家令息のテドランス様です。まだ恋人どうしというわけではないんですけど」
と言った。
わたしにとっては、意外な人物の名前を挙げていた。
いや、意外というわけではない。
幼馴染が好きなプレイヤーであれば、このキャラクターを推しにしていけば、この頃には恋人どうしになっていて、かなりのラブラブな状態になっていたはずだ。
この幼馴染は、プレイ開始時点ではそれほどこの幼馴染に対する想いを持っていないセリラーヌさんに比べると、表面に出すことができていないとはいうものの、かなりの好感度を最初から持っている。
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