第三十九話 セリラーヌさんと友達になる
「頭をお上げください。クラデンティーヌ様とわたしは身分が違います。学校内では身分の差を気にしてはならないと言われていますが、わたしとしては意識をしてしまいます。どうか、頭をお上げくださいませ」
セリラーヌさんは困惑しているようだ。
わたしが頭を上げると、セリラーヌさんは話し出す。
「今まで、わたしはクラデンティーヌ様にイジメられてきました、正直言って、つらく苦しく思ったこともあります。でもそれで、自分の心が鍛えられたような気がします。そして、何よりも今日、ここでわたしに謝っていただきました。身分の高い方は、身分の低いものに対して、自分の誤っていたことを謝ることはまずありません。この学校は、そういう身分の差を打破しようという教育を行っていますが、実際にはなかなか浸透していないものです。そんな中、クラデンティーヌ様にこうして謝っていただくことが、どれだけ異例なことであるかは、わたしにも理解できますので、クラデンティーヌ様のお言葉、受け入れたいと思います」
セリラーヌさんは言葉を一回切った。
そして、
「これを機に、クラデンティーヌ様と友達になることができたら、と思います。クラデンティーヌ様も、読書が好きだということは、前々から伺っておりまして、わたしと同じ趣味をお持ちだと思っておりました。それで、友達になりたいという気持ちは、一年目の頃からあったのです、でもイジメるということは、わたしのことが嫌いだということですので、今まで言うことはできませんでした。でも、こうして、イジメを止めていただくということであれば、次は友達になっていくのが、これからの姿だと思っているのです。もちろん、身分の差はありますので、学校以外の場所では、気軽におしゃべりをするのは難しいと存じますが、学校の中だけでも、友達として仲良くできれば、と思います」
とセリラーヌさんは、少し恥ずかしそうに、しかし真剣な表情で言った。
今度は、わたしの方が、信じられない言葉を聞いている気持ちになった。
わたしの言葉を受け入れてもらえるだけではなく、友達になりたいと言ってきている。
イジメていた相手と仲良くすることになるのだ。
普通であれば、ここまでの心の切り替えをすぐに行うは無理だと思う。
でも真剣な表情で言ってきているのだから、その思いは本物だろう。
それだけセリラーヌさんは芯が強いのだと言えると思う。
「わたしでよろしければ、よろしくお願いしたいと思います。わたしはあなたといい友達になれるのではないかと思っています」
読書という共通の趣味があれば、仲良くなっていけるに違いない。
何よりもこの芯の強さがいい。
わたしは、恋愛という意味では決してないのだけれど、急激にセリラーヌさんのことが好きになっていく。
ゲームの原作ではありえなかったことだ。
「クラデンティーヌ様、そう言っていただいて、ありがとうございます。うれしいです。クラデンティーヌ様のいい友達になれるよう、一生懸命努力します」
「セリラーヌさん、これからは仲良くしていきますので、よろしくお願いします。お互いに、いい友達になっていきましょう」
わたしはセリラーヌさんに手を差し伸べる。
その手をセリラーヌさんは握ってくれた。
やさしい手だった。
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