第二十八話 転生への理解
こうして、わたしは、二度の転生をしてきたことを理解した。
いずれも悲惨な人生というしかない。
ではこの今の三度目の転生はどうなのだろう?
わたしは今世での人生を心の中で整理をしていったのだけれど……。
わたしは愕然としてしまった。
今世の人生は、一番目の転生と同じ、乙女ゲーム「幼馴染、王太子殿下との恋、そして愛への遠い距離」の世界だった。
しかも、悪役令嬢クラデンティーヌとして。
さらに情勢としてよくないのは、ゲーム内の時間でわたしが処断されるまで、後半年ほどしかないということだ。
既にわたしは、コルネイテール侯爵家令嬢セリラーヌさんのことを、学校に入学以来五年半もイジメ続けていた。
一年半前に、病床のお父様から公爵家当主の地位を継いでからは、贅沢の為、領民に重税を課すだけではなく、さらに臨時で多額の臨時税を課していた。
領民と公爵家の一部の人たちの間から、反発の声が上がってきていた。
コレットギュール王国王太子マクシノール殿下とは、この学校に入る前に婚約をした。
同い年であるものの、幼馴染ではない。
一か月に一度ほど、わたしは王宮にご機嫌伺いに行き、謁見を受けるものの、あいさつをするぐらいで、毎回、ほとんど話をすることのない仲だった。
学校内でも、男子と女子は校舎が別れていることもあり、話すことはほとんどなかった。
マクシノール殿下とセリラーヌさんとは、この一か月後の王室主催の舞踏会で会い、話す機会に恵まれる。
マクシノール殿下は、こういう状態だったので、セリラーヌさんと出会った後は、彼女に夢中になったのだろう。
その後は、一気に仲が深まっていくことになる。
このままマクシノール殿下の好感度を上げることができず、コルヴィシャルデ公爵家内のわたしに対する反発が強まっていけば、やがて、婚約は破棄されることになり、処断されることは避けられないだろう。
これを避けるにはどうしたらいいのだろうか?
とにかく時間がない。
ゲームの本来の開始は、学校に入学後五年目の春になっている。
主人公のセリラーヌさんは、この時点での男子の知り合いは幼馴染しかいない。
この後少しずつ他の恋人候補と出会っていくことになるが、マクシノール殿下と会うのは、一年半よりもさらに先になってしまうので、マクシノール殿下を推しにして結婚したいのであれば、他のキャラクターとの好感度を上げないままでいる必要がある。
クラデンティーヌの方はここで、病床のお父様から公爵家の地位を受け継いだ後、ゲームは進行していく。
もう既にわたしは悪役令嬢としてイメージが確立してしまっている。
この時点で、
「セリラーヌさんへのイジメを止める」
「マクシノール殿下への好感度を上げるべく自分磨きをし始める」
「領民に重税を課したり、臨時税を課したりはしない」
と、今までのわたしから百八十度転換することを行えば、婚約破棄されることも、処断されることもなくなるだろうと思う。
しかし、半年しかない今の時点で、これらのことを実行したとしても間に合うのだろうか?
もう既にわたしは悪役令嬢としてイメージが確立してしまっている。
こんなわたしが、イメージチェンジを図ろうとしても、ただの気まぐれだと思われるだけかもしれない。
そうなることは避けたいのだけれど……。
いや、そんなことを今思ってはいけない。
もう婚約破棄をされたり、処断されたりするのは嫌だ。
これからこの半年の間は、今までのわたしのイメージを変える為、精一杯努力をしよう。
これで反乱の発生の方は抑えられるようになると思う。
しかし、マクシノール殿下とわたしの関係の方はわからない。
婚約を破棄されるのはつらいことだけれど、されたらされたらで、仕方がないと思う。
その場合は、公爵家を発展させることに心を切り替えていくしかない。
わたしは、今までのわたしから脱却し、マクシノール殿下の婚約者として、ふさわしい人間になることを決めた。
乗り越えなければならないことはたくさんあって、途方にくれそうだ。
それでもわたしは、一度目と二度目の転生の経験を活かし、新しい自分に生まれ変わる為、動き出さなくてはならなかった。
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