第二十七話 二度目の転生・わたしの敵のみじめな人生
わたしはその後、二番目の転生をすることになる。
それは、
「幼馴染は王太子殿下で婚約者。でもわたしは殿下に恋をしたい」
という人気乙女ゲームの世界の中だった。
主人公はキュヴィシャルデ公爵家レデシアーヌ。
ゲームの初期設定の時、ボダンシャルフィス王国のグレゴノール王太子殿下と、まだ幼い時点で婚約するかしないかという選択肢がある。
グレゴノール殿下との婚約をした設定で始めれば、グレゴノール殿下との関係は、好感度がある程度あるところからゲームは開始される。
ストーリーも、グレゴノール殿下との関係を、いかに親密なものにしていくか、というところに焦点があり、好感度が上がらなくなって始めて他のキャラクターとの接点が生まれる。
グレゴノール殿下との婚約をしない設定だと、グレゴノール殿下との関係は、他のキャラクターと変わらないところからスタートする。
このルートでもグレゴノール殿下と恋愛して、結婚をすることは可能だが、難易度はかなり高くなる。
どちらかというと、他のキャラクターと恋愛、そして、結婚したい人向けの選択肢ということになると思う。
グレゴノール殿下も他の攻略キャラクターも全員イケメン。
他のキャラクターも魅力はある。
しかし、わたしの推しは、グレゴノール殿下。
この転生は、そのグレゴノール殿下と、幼い頃に婚約をした世界だったので、わたしとしては幸せをつかむことができるはずだった。
しかし……。
この「グレゴノール殿下との幼少期婚約ルート」は、選択肢を間違えると、バッドエンド一直線に進むものだった。
わたしのこの回の転生はまさにそのパターンだった。
選択肢を間違えた為、グレゴノール殿下と結婚はできたものの、その後、ボダンデリックス子爵家令嬢オルリドにグレゴノール殿下の心を奪われる結果になった。
レデシアーヌはその後、心と体が壊れ、短い生涯を閉じる。
この選択の分岐点は、学校に入学後五年目にあった。
グレゴノール殿下の好感度を上げる選択を続けていると、グレゴノール殿下とレデシアーヌはこの時点で親密になっていく。
幼馴染の枠を乗り越え、恋人どうしとしての意識になる。
これは、いい話のように思うかもしれない。
ところが、グレゴノール殿下のレデシアーヌに対する愛情は、学校を卒業して数か月の頃がピークで結婚をする頃には、少しそれが下がり始めていたところだった。
そして、ボダンデリックス子爵家令嬢オルリドの登場により、一気にグレゴノール殿下の想いはレデシアーヌから離れ、オルリドに向くことになってしまう。
それが、レデシアーヌの心と体を壊すことにつながってしまった。
グレゴノール殿下とレデシアーヌがハッピーエンドを迎えるにはどうすればよかったのだろうか?
それには、入学後五年目の段階において、グレゴノール殿下のレデシアーヌへの好感度をあまりあげないようにすることが、必要だった。
グレゴノール殿下の好感度がマックスになるのを、結婚後だいたい一年ぐらいのところに持っていく。
急激に仲が深まっていくのではなく、少しずつ仲を深めていくのが、このルートでは大切なところだった。
そうすれば、グレゴノール殿下はレデシアーヌに対する愛情が冷めることはなく、オルリドさんとの仲が深まることはなくなり、後継者にも恵まれる人生になっていた。
わたしがゲームのプレイをしていた時から、この選択肢のことは話題になっていた。
このゲームの世界に転生することができるのであれば、「グレゴノール殿下との幼少期婚約ルート」で、選択肢を間違えずに、グレゴノール殿下と幸せになりたい、と思っていたのだけれど……。
結局、選択肢を間違えて、心と体を壊してしまい、短い生涯を閉じてしまうことになってしまった。
わたしは、このゲームの方もやり込んでいた。
しかし、「幼馴染、王太子殿下との恋、そして愛への遠い距離」の時と同じで、自分がそのゲームをプレイしていたことを思い出せなかった以上、選択肢を間違えてしまい、みじめな思いをすることになってしまったのも仕方のないことだったと思う。
思うのだけれど……。
一番目の転生とは違い、今回の転生では主人公役で転生することができた。
それだけに、ハッピ-エンドを迎えることができなかったのは、悔しいものがあった。
一方で、わたしの心の中には、この二度目の転生において、わたしがこの世を去った後の情報が流れ込んできていた。
ゲームではその後結婚して幸せになったはずのグレゴノール殿下とオルリドさんだったのだけれど、わたしの心の中には違う情報が入ってきていた。
グレゴノール殿下とオルリドさんは、結婚した頃から贅沢をするようになった。
二人については、もともと贅沢をするタイプではなかったように思う。
しかし、いつの間にか贅沢をするようになってしまった。
わたしがこの世にいた頃は、国民の為に尽くそうとしていたグレゴノール殿下。
その為に一生懸命努力をしていたのだけれど……。
贅沢をするようになった頃からは、国民を苦しめる人になってしまった。
度を越した贅沢をすることにより王国の財政は悪化し、重い税を国民から取り立てるようになる。
そして、その負担に耐えかねた国民による反乱が発生することになってしまった。
この反乱の結果、王室の一人が王太子となり、二人は別々の修道院に送られることになった。
二人はこの処置に、一生納得することはなかった。
国民の生活を苦しめたことに対する反省もなかった。
その一方で、二人は、
「わたしはレデシアーヌとの結婚を続けるべきだった」
「わたしはグレゴノール殿下と結婚をするべきではなかった」
と言っていた。
わたしへの対応を間違いだと思い、後悔をしていたのだろう。
でももう間に合わない。
結局、この二人も転生一度目のマクシノール殿下とセリラーヌさんと同じことになってしまった。
この二人も有能だったので、その能力を発揮すれば、十分国民の為の政治をすることができたと思う。
どうして度を越した贅沢をするようになったのだろう……。
もともとは国民の為の政治をしようとしていたグレゴノール殿下なので、残念でならない。
転生二度目のわたしの人生も、転生一度目よりはましだとはいうものの、全体的にはみじめだったと言えるだろう。
しかし、この二人の人生も、みじめなものだったと言わざるをえない。
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