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第二十六話 一度目の転生・わたしの敵のみじめな人生

 わたしがこの世を去った後、転生をした世界。


 それは、わたしが生前プレイをしていた、


「幼馴染、王太子殿下との恋、そして愛への遠い距離」


 という人気乙女ゲームの世界だった。


 主人公はコルネイテール侯爵家のセリラーヌ。


 悪役令嬢でマクシノール王太子殿下の婚約者でもあるコルヴィシャルデ公爵家のクラデンティーヌにいじめられ続ける美少女だ。


 しかし、芯の強い彼女は、じっと耐え続ける。


 やがて、彼女はイケメンであるマクシノール殿下と舞踏会で出会うことによって、好意を寄せられるようになり、マクシノール殿下と愛を育んでいくようになっていく。


 クラデンティーヌは、公爵家の当主でもあった。


 自分の贅沢の為に、領民に重税を課し、次第に領民の不満が高まっていた。


 マクシノール殿下は、セリラーヌに心が傾いたことと、クラデンティーヌが悪行を重ねたことにより、クラデンティーヌとの婚約破棄を破棄し、セリラーヌと婚約することを決めた。


 この計画は、クラデンティーヌの知らないところで進められる。


 国王陛下と王妃殿下は、最初は難色を示していたのだが、クラデンティーヌの悪行が続いていたため、やむをえずマクシノール殿下の申し出を受け入れる。


 そして、大勢の人々が集まる舞踏会の時に、マクシノール殿下はクラデンティーヌとの婚約破棄を宣言し、セリラーヌと婚約をすることになる。


 コルヴィシャルデ公爵家に戻ったクラデンティーヌは、鬱憤を晴らす為もあってか、より一層の贅沢をするようになる。


 これに対して、公爵家の領民の反発は強まり、ついに反乱が発生した。


 公爵家の方からもこの反乱に呼応するものが出現する。


 大勢力になった反乱勢力に対して、クラデンティーヌは抵抗することはできなかった。


 そして、クラデンティーヌの処分は反乱勢力の要請で、国王陛下にゆだねられた。


 国王陛下は、クラデンティーヌがコルヴィシャルデ公爵家の領民を重税で苦しめ、混乱を招いたということで、処断することを命じた。


 クラデンティーヌは処断され、短い生涯を閉じる。


 マクシノール殿下とセリラーヌは、その後、結婚式を盛大に行った。


 そして、後継者にも恵まれ、幸せな一生を送った。




 これがこのゲームの主要なストーリーということになる。


 マクシノール王太子殿下の他にも、幼馴染キャラクターがいて、攻略対象になっていた。


 また、何人かのイケメンキャラクターも登場し、いずれも攻略対象になっていた。


 主人公やこうしたキャラクターたちは、このコレットギュール王国が設立した学校に通っている。


 この学校は、十二歳から十八歳までの間、王室・貴族・平民の中から選抜されたものが通う。


 男女共学ではあるものの校舎は別々。


 その為、男子生徒と女子生徒が学校で知り合うのは、学校行事であることが多い。


 マクシノール殿下とは、卒業半年前の舞踏会まできちんと話をする機会はない。


 それまでの学校行事でも、話をきちんとする機会には恵まれない。


 その為、序盤から中盤にかけては、幼馴染キャラクターとのやり取り、そして、何人かのイケメンキャラクターとの出会いとやり取りが、話の中心になっている。


 選択によっては、マクシノール殿下ではなく、そのキャラクターと婚約、そして、結婚をすることが可能だ。


 しかし、この幼馴染キャラクターについては、この幼馴染中心のプレイを続けない限り、だんだん影の薄いものになっていく。


 わたしは、このゲームの全キャラクターを攻略しているのだけれど、一番の推しということになると、やはりマクシノール殿下だ。


 マクシノール殿下のルートはかなりの回数をやり込んでいる。


 もし、このゲームの世界に入ることができるのなら、主人公役として、マクシノール殿下ルートを選択したいところだ。


 しかし……。


 わたしは主人公役で転生することはできなかった。


 それならせめてモブ役で転生したいところだ。


 主人公とマクシノール殿下と関わらないところで恋愛をして、結婚をすることができたかもしれないからだ。


 でもそれもかなわなかった。


 なんと、わたしは悪役令嬢クラデンティーヌとして転生をしてしまっていた。


 自分がやり込んでいたゲーム内に転生していることなど、想像もつかなかったわたし。


 ゲーム内の設定通りにしか動くことはできず、結局、処断されるという悲劇を避けることはできなかった。


 わたし自身、この悪役令嬢の行動はいいとは思えなかったし、好きなタイプではなかったので、自分が

 その悪役令嬢に転生するということは、想像できなかったことだった。


 主人公役で転生して、幸せを味わいたかった。


 そう思うのだけれど、どうにもならない。


 これが、わたしのゲーム世界の一度目の転生だった。




 一方で、わたしの心の中には、わたしが処断された後の情報も流れ込んでいた。


 ゲームではその後、幸せな生活を送ったマクシノール殿下とセリラーヌさん。


 しかし、わたしの心に流れ込んできた情報では違っていた。


 わたしが処断されてしばらくすると、二人は贅沢をするようになった。


 もともとマクシノール殿下自体、贅沢を好むタイプだった。


 ゲームにおいては、そのことについては触れられていなかったのだけれど、わたしが婚約者として実際に接していた中では、そのことは認識していた。


 しかし、国民のことを思う気持ちが強かったので、贅沢をしないように努力をしていた。


 セリラーヌさんの方も、もともと贅沢を好むタイプ。


 セリラーヌさんの方も、ゲームではそのことについては触れられてはいなかったものの、実際にわたしが接していた中では、そのことを認識していた。


 しかし、自分が婚約者になる為に、マクシノール殿下と周囲に対しては、いつも贅沢には興味がないようにふるまっていた。


 それがセリラーヌさんの人気を高めた大きな要因の一つになり、マクシノール殿下の婚約者の座につく大きな要因の一つにまでになっていく。


 そういう二人だったのだけれど、わたしが処断されてから、一年を過ぎた頃から贅沢をし始めるようになる。


 それによって王国の財政は赤字になり、しかも、それがどんどん膨らんでいった。


 その分を埋める為、国民に重い税を負担させることにした。


 しかし、これは国民の生活を苦しめることになった。


 そして、この負担に耐えられなくなった国民により、大規模な反乱が察生した。


 この反乱によって、マクシノール殿下とセリラーヌさんは別々の修道院に送られ、王室の一人が新たに王太子として擁立されることになった。


 二人はそのまま修道院で生涯を閉じることになる。


 しかし、二人は心を入れ替えることはなく、国民を苦しめたことについての反省はなかった。


 最後まで、


「わたしがなぜここにいなければならないのだ! 国王になるのはこのわたしだ!」


「わたしは王妃となるうのにふさわしい人間なの。なぜここにいなきゃならないの!」


 と言っていたそうだ。


 その一方で、


「わたしとクラデンティーヌと結婚していればこんなことにはならなかったのに……」


「そのまま、マクシノール殿下とクラデンティーヌと結婚していればこんなことにはならなかったのに……」


 ということも言っていたそうだ。


 自分達が間違った選択をしたことに対して、後悔もしていたのだろう。


 でももう間に合わない。


 この二人はもともと有能だ。


 国民の生活をより豊かにする政治をすることは十分できたはずだ。


 贅沢をつつしむことができたら、こんなことにはならなかったのに、と思わざるをえない。


 わたしも処断された人間。


 全体的には、みじめな人生だったと言えるだろう。


 しかし、この二人についても、みじめな人生だと言わざるをえないと思う。







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