第十六話 グレゴノール殿下をあきらめない人たち
それからのわたしたちは、順調に愛を育んでいく。
幼い頃とは違い、ケンカをすることはもうなかった。
学校では結局クラスが別々のまま。
その分、学校が終わった後は、毎日ではなかったのだけれども、わたしが王宮を訪問して二人でいる時間を作るようにしたし、休日は必ず王宮で会うようになった。
お互い、一緒にいると幸せだった。
しかし、わたしはまだまだ物足りなかった。
グレゴノール殿下と一秒でも離れたくはないほどの想いが湧き上がってきていた。
実際にはそういうことは無理なのだけれども、それくらいわたしはグレゴノール殿下のことが好きになっていった。
わたしたちが仲睦まじくなっていったことは、王室とキュヴィシャルデ公爵家の両方から歓迎された。
特にわたしのお父様はホッとしていたようだった。
幼い頃から婚約をしていても、意識が幼馴染、あるいは、ただの異性の他人のままになることは、意外と多い。
そうなると。形式的な結婚ということになり、「第二夫人」あるいは「第三夫人」以降を作り、愛を奪われてしまうということは、王室や貴族の間では、めずらしいことではない。
極端な場合は、婚約破棄になることもあった。
それが避けられそうなので、お父様としては、一安心というところだろう。
わたしとしては、もうグレゴノール殿下と結婚をして、幸せな家庭を作っていくことしか心の中にはなかった。
わたしたちは、周囲からもあこがれの関係として認識されるようになった。
二人だけの思い出を、お互いに、忙しい中でも作っていったし、二人だけの世界にも入って行った。
そう思うと、少し恥ずかしい気持ちになっていくのだけれど……。
多くの人たちは、わたしたちの仲を応援してくれていた。
しかし、応援してくれない人たちもいた。
グレゴノール殿下は、成長するにつれて、そのかっこよさはさらに磨きがかかっていた。
イケメンで文武両道というのが大きく、「第二夫人」になりたいと思う女性は、増える一方だった。
特に学校では、グレゴノール殿下の人気はますます高くなっている。
そうした人たちの中には、今までもそうだったように、
「どうしてあんな子がグレゴノール殿下の婚約者なの?」
「わたしこそグレゴノール殿下にふさわしいのに」
とわたしに嫌味を言ってくる人はどうしても一定数はいた。
その人たちの多くは、わたしにおかまいなく、グレゴノール殿下にアプローチをかけていた。
それだけグレゴノール殿下は魅力的なのだろう。
わたしはグレゴノール殿下と可能な限り一緒にいたいと思っているのだけれど、クラスが違うので、一緒にいられない時間は多い。
告白したい女性たちは、その隙を狙ってくる。
しかし、グレゴノール殿下はその全員の告白を断っていた。
失恋した人たちにとっては、わたしという人間の存在がじゃまでしょうがないのだと思う。
それで、嫌味という形でわたしのことを攻撃してくるのだろう。
わたしは気にしないようにはしていたが、気分はいいものではない。
グレゴノール殿下は、
「気にしないで。わたしの好きなのは、婚約者にして恋人のあなただけだ」
といつも言ってくれていた。
わたしはその度に。
「グレゴノール殿下の心を煩わせてしまいまして、申し訳ありません」
と言って謝っていた。
でもグレゴノール殿下は、
「レデシアーヌさんが謝ることはない。心を煩わせるようなことは思わなくていい。わたしは、あなたにいつでも寄り添いたいと思っている。それだけあなたのことが好きなんだ」
と言うのだった。
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