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エッセイ 

新しい資本主義ってなんぞ?

作者: NOMAR


 さて新しい資本主義とは、第101代内閣総理大臣である岸田文雄が掲げるこれからの経済政策のこと。これまでの新自由主義的な経済から脱却し『成長と分配の好循環』『コロナ後の新しい社会の開拓』を目指す、ということなわけだが。


 そもそも先ず新しい古い関係無く、資本主義とはなんだ? というところから日本の経済政策、新しい資本主義というのを見てみようか。


■資本主義とは?


 資本主義とは乱暴に纏めると、個人の資本をもとに自由に経済活動していこう、ビジネスしていこうというもの。

 反対の共産主義は、皆のものは皆のものとして平等を目指すもの。個人の財産を持つことは不平等になる。


 同じように主義とついたものは民主主義や自由主義、社会主義などいくつかあって混同しやすいが、分かりやすく分別すると。


 資本主義は経済の思想

 民主主義は政治の思想


 なので日本は政治は民主主義、経済は資本主義、ということになる。

 アメリカも政治は民主主義、経済は資本主義。

 中国は政治は共産主義で経済は社会主義。

 サウジアラビアは政治は君主制で経済は資本主義。

 シンガポールは政治は一党独裁で経済は資本主義。

 組み合わせでいろいろなパターンがある。


 第二次世界大戦の勝利国が、アメリカ合衆国・イギリス・ソビエト連邦・フランス・中華民国の5つ。

 その後、ソビエト連邦が崩壊してからはソ連型社会主義がオワコンとなり、民主主義と資本主義のセットが世界的に流行を迎えることになる。


■メリット、デメリット


 資本主義のメリットとしては競争により経済が発展すること。個人で自由にビジネスをして稼ぐことができること。

 才能や運に恵まれた人が裕福になれる、努力した人が成功しやすい、という面で競争することにより経済が発展していくこと。


 デメリットは貧富の差が生まれること。格差が増大していくこと。

 競争に勝ちお金を稼ぐ人がいれば、競争に負ける人もいる。貧困が社会問題となっていく。

 労働者を搾取することによって存在する資本家に権力が集まっていき、利益追及の度が過ぎれば、天然資源の枯渇、環境破壊、政治腐敗も進んでいく。


 この資本主義的な思想を分かりやすく教えてくれるのが、アニメ『コードギアス』に出てくる皇帝の演説。引用してみよう。


『人は平等ではない。

 生まれつき足の速い者、美しい者、親が貧しい者、病弱な身体を持つ者。

 生まれも育ちも才能も、人間はみな違っておるのだ。

 そう、人は差別されるためにある。

 だからこそ人は争い、競い合い、そこに進歩が生まれる。

 不平等は悪ではない。

 平等こそが悪なのだ』


『戦うのだ!

 競い、奪い、獲得し、支配する。

 その果てに未来がある!!

 オール・ハイル・ブリタニア!!』


 平等を目指す共産主義とは真反対。優性思想とも親和性がありそうだ。


■資本主義のはじまり


 資本主義のはじまりは15世紀末から16世紀のイギリスで。

 羊毛が海外に高く売れることから、農民から土地を取り上げてそこで羊を育てよう、という囲い込み運動が起きる。

 自給自足できる土地を失った農民はその身にある労働力しか売るものが無いので、土地を追われた人々が都市に流入して労働力を売り物にするようになる。

 ここから労働者が誕生した。

 労働者とはもともと土地を失った農民のことで、労働力が売り物にならなければ難民になる。


 都市に流入したもと農民が貧困から犯罪を犯すようになり治安が悪化。1601年には救貧法という弱者救済の政策がはじまり、これが社会保障の理念の原点になる。


 マンガ『賭博黙示録カイジ』風に言うなら、

 「羊は命より重い」だろうか。

 この囲い込み運動が資本家と労働者の誕生へと。

 土地を追われたもと農民は、もう自分の身の労働力を売るしか生きる術が無い。

 そうして生まれた労働者が、技術の進歩で誕生した『工場制手工業』で働くようになる。産業革命へと繋がってゆく。


 資本主義の経済では、金持ちになるには資本家階級になるしかない。資本主義では多数派の労働者階級と少数派の資本家階級に分かれる。

 生まれや血統などで職業の決まる縁故主義では、ものごとの正しさや個人の能力よりも縁故を優先してしまう。

 自由な経済活動を目指す資本主義では縁故主義よりも、個人の自由をその運用において重視する自由民主主義の方が相性が良かったらしい。


■株主資本主義


 企業に投資する株主に利益が集中し、株主の利益の追求を最優先とするのが株主資本主義。

 日本はこの株主資本主義になる。株主の権力が増大し株主の利益のために労働者の賃金が上がらない。安全基準などの規制がいい加減になり公害などが増え、利益の為の偽装も増加する。


『世界不平等レポート2018』によれば、1980年代以降の20年間の生産性の伸びがもたらした利益の大半が、所得分の上位10%に集中している。下位の実質所得は伸び悩んだことが指摘されている。


 株主資本主義では資本家階級の為の経済となり、株主が権力を持つようになる。

 この状態からの更なる未来を想像して、一昔前のSF小説には巨大企業が国家のように統治する近未来社会が描かれた。


 株主といった資本家階級の権力が増大したことを身に感じたことがある。私は子供の頃に売られそうになったことがある。

 大株主が社長の子供を売って欲しいと言い出した。人身売買になるが書面上では養子縁組となるので違法では無い。株主配当金の一種が人間の子供ということになる。

 人が人権という概念を発明するまでは、牛や馬より安く買える家畜とは人間だった。その根底は現代でも変わらない。

 格差が開き価値のある資本を売買するのが当然という資本主義では、人の家畜化という問題も現れる。

 これはブラック企業や生活保護受給者を囲う囲い屋、無抵といった貧困ビジネスなどの社会問題に繋がっている。


■ステークホルダー資本主義


 株主資本主義における資本家階級の為の経済活動が、低賃金奴隷労働や環境破壊による気候変動問題へと繋がる。

 それを改善しようというのがステークホルダー資本主義。


 ステークホルダーは、企業が経営をするうえで、直接的または間接的に影響を受ける利害関係者全てのこと。

 『stake』(掛け金)と『holder』(保有する)が由来とされる。


 ステークホルダーの例としては、クライアント、従業員、地域社会、行政機関、金融機関、各種団体などなど。

 株主に集中し過ぎた利益を、その業界に関わる末端の人々まで再分配しようというものになる。


 2020年1月の世界経済フォーラム、ダボス会議の主題ともなったので、このステークホルダー資本主義というのが新しい資本主義と関連するだろう。


■無政府資本主義


 無政府資本主義とは、自由市場の自治を重視し、そのために国家を廃止しよう、というもの。


 警察や裁判所などは税金によって賄われる。

 しかし、無政府資本主義の社会では警察や裁判所など全ての福祉は消費者がそのサービスを買うことで成り立つ。

 自由な経済活動のためには政府が邪魔という思想だ。


『ブルー・フロンティアズ・プロジェクト』とは、海の上にどこの国にも属さない人工の島を作り、政府の統治とは無縁のハイテクかつエコトピアな海上都市を運営するという壮大な計画。


 日本では江東区立第六砂町小学校で小学生がゲームを通じてSDGsを学ぶ特別授業が行われた。

『あつまれどうぶつの森』内に建設された水上都市『フローティングシティー』の中で気候変動、環境や食料問題などSDGsの様々な問題についてを学ぶ。

 実際に南半球に持続可能な水上都市の建設を目指しているブルーフロンティアズ社Co-Founder監修のもとに作られたゲーム内のユートピア。

 若年層の環境問題への関心を高めつつ、未来に関して考えてもらうコンテンツであり、国家の規制に囚われない新たな自由市場の提案ともなる。


■新反動主義


 近代国家をひとつのシステムとして解体しよう、という新反動主義。こちらも企業政府と言うべき社会を目指している。

 多様な人間が集まる民主主義とは不合理であり解体すべし。その後は複数の小さな疑似封建的な都市国家システムを作ろうというもの。


 小さな国家=企業

 君主=CEO

 市民=企業の株券を持つ消費者


 CEO=君主は、株主=市民の要求に応える国家運営をしなければならない。

 市民が自分の住む国家に不満を感じるなら、他の国家へと移住する。

 株券を持つ株主=市民がいなくなる国家は破産する。

 国に不満を感じた者がデモも反乱も暴動も起こさない、黙ってよその国に行くという平和なやり方だと言う。

 人気を得た国に人が集まり、人気を無くした国から国民がいなくなる。一週回って民主主義的とも言える。


■国家資本主義

 

 国家資本主義とは、国家が経済活動を主導することによって推進される資本主義。

 本来の資本主義は個人が自由に金を稼いで良しとするものだが、それを国家が主導して進めるところが異なるところ。

 日本の経済成長も初期はこの国家資本主義で行われた。


 中国では1978年の改革開放路線の採用以降、中国政府は計画経済から市場指向型の経済への改革を行う。この経済体制は『中国の特色を持った社会主義市場経済』と呼ばれているが、国家が資本主義的な世界経済に積極的に参加する国家資本主義と言える。


 中国の経済成長を受けて、国際競争力の強化を図るインド・ブラジルなどの新興国や中東産油国などで国家資本主義が採用されている。


 2019年、スウェーデンの調査機関VーDemは、世界の民主主義国・地域が87カ国であるのに対し、非民主主義国は92カ国と増加。18年ぶりに非民主主義国が多数派になったという報告を発表した。

 

 東西冷戦後に欧米流の民主主義システムを取り入れたものの、国内の政治や経済が混乱したため再び権威主義国家に戻ったハンガリーやポーランドなど。

 中国からの援助を期待して中国に歩調を合わせる途上国などがある。


 何事にも流行があり終わりがある。

 欧米的な民主主義と資本主義のセットは行き詰まり、その流行は終わり、これからは共産主義と国家資本主義、または独裁制と国家資本主義が流行する、という話もある。


■加速主義


 資本主義は様々な問題を抱えて行き詰まりを見せている。しかし世界経済は資本主義的なシステムで動き、簡単には変えられない。


 そこで現れたのが加速主義。

 何事にも終わりがあり寿命がある。それなら資本主義のプロセスを更に加速させることで、資本主義のゴールを目指す。

 テクノロジーを発展させて技術革新を起こす。その過程で民主主義や平等主義の欺瞞を暴き、辿り着いたゴールから社会問題を解決する為の次の新たな主義思想を見出だそうというもの。


 まるで小説『戯言シリーズ』に出てくる人類最悪、西東天のような思想だ。

 加速主義がどういうものか、加速主義の父と呼ばれる哲学者ニック・ランドの思想の中には、


『人種差別を根絶するためには啓蒙活動や法制度に頼るのではなく、人間の遺伝子操作技術を普及させることで、人種という概念そのものを無意味にしてしまえばよい』


 というものがある。社会問題をテクノロジーで解決してしまうという自由で平等な社会でもある。

 もしも遺伝子操作で男性にも妊娠機能を付加できれば、男女平等な社会ともなるだろうか。


■本題に戻って新しい資本主義とは?


 資本主義も様々な種類がある。調べてみると派生はまだまだいくつもある。

 では日本が政策として進める新しい資本主義とは、いったいどの資本主義なのか。


『働く人への分配機能の強化』

 賃上げを実施する企業への税制支援や大企業による中小企業に対する下請け取引の監督強化など。


『中間層の拡大と少子化対策』

 教育費や住居費支援、保育制度拡充と環境整備など。


『看護、介護、保育などの現場に働く人の収入増』

 コロナ禍での医療現場や少子高齢化の最前線で働く人々の収入を増やすために、サービスの公的価格の在り方を見直すなど。


 賃上げから労働者が新たな消費者となる。余裕のできた新たな消費者が買い物をすることで、経済は活性化する。

 こういうのは現代知識チート、内政チートなどの物語では度々見かけるもの。新しい、だろうか?

 労働者が消費者ともなり経済を回す。経済成長の初期にはありがちで新しいどころか古いやり方とも言える。

 テクノロジーの進歩から人の労働力より機械の労働力の方がランニングコストが安くなってきたのが現代。仕事が無ければ皿洗いでもすればいい、というのはひと昔前の話。皿洗いの為に人を雇うよりも食器洗浄器を導入した方がコストは安い。

 今では皿洗いの為に人を雇うところとは、時代遅れの企業になる。

 人の労働力を売り物にするのが難しくなってきたのが現代の問題だ。引きこもりが増えた要因のひとつが、誰でもできる仕事が機械化されたり、人件費の安い国外へと流れたりしたことにある。


 では、今の労働者の賃金を増やす為には、何処からその金を引っ張って来るのか? 

 投資家の利益を減らし、その分を業界の中で回す。これはステークホルダー資本主義と同じ思想だろう。


 一方で経済活性の為に投資家を増やしたいようで、高校の家庭科で金融の授業が始まる。

 また、個人の金融資産を貯蓄から投資に促すため、個人投資家向けの優遇税制『NISA』、個人型の確定拠出年金『iDeCo』の改革など、『資産所得倍増プラン』を提案している。


 まとめると。


〇投資家の数を増やしたい

〇投資家の利益を減らしたい


 ずいぶんと難しいことに挑戦しようしているらしい。

 利益を減らすけれど投資家になってほしい、というのは。


◇◇◇◇◇


「老後の生活の為には年金だけでは足りません。これからは投資で資産運用して老後にそなえましょう」

 

「え? 投資は未来の不確定な事象を対象にして儲かる儲からないとなるギャンブルですよね? しかも投資家の利益は昔より減るんですよね?」


「あなたの投資で企業は設備投資をし、労働者への給料も増え経営が安定し、日本は経済成長するのですよ。多くの人が生活の安定を得られるのです」


「では、私が投資に失敗して資本を失ったら? 私が破産して貧しくなったらどうするんですか? 生活の安定を失ったら?」


「あ、その場合は生活保護を申請してください」


◇◇◇◇◇


 なんだろう? 国家規模の特殊詐欺かな?

 高校での金融教育は金融詐欺に騙されるリスクを減らす為の知識を得る点で良いと思う。

 しかし、学校教育で投資家を増やしても日本が経済成長するとは思えない。


 経済ではお金が人体の血液に例えられることがある。お金が血液のように全身にスムーズに巡ることが健康な経済、だとか。銀行は血を送る心臓だとか。血行が良くなれば景気は良くなるとか。

 金融が停滞し必要とされるところに融資が届かないことを、経済の動脈硬化のように例えられる。


 同じように経済を身体に例えるのなら、日本の経済は成長しない。日本の経済は成長期が終わって成熟期を迎えている。

 これをまだ経済成長する、と言うのは成長期の終わった30代の大人が『まだ身長は伸びる』と信じ、毎日4食5食と栄養を取ろうとしているように思える。

 もう縦に伸びることは無く、横に太くなりメタボな不健康になりそうだが。


 成長するためには生まれ変わりか死に戻りか若返りが先ず必要になるだろう。そのためには第二次世界大戦後の焼け野原のような状態に加えて、1ドル360円といった安い円相場など、成長前段階の状態に戻らないと無理ではないだろうか。

 これは、東日本大震災後の震災バブル、復興バブルなどが参考になる。


 学校教育で投資家が増えても、その投資家は何処に投資するだろうか?

 投資で利益を得るにはこれから成長する企業に投資しなければならない。となればこれから経済成長しそうな、景気の良さそうな他所の国の企業の株を買うのではないだろうか。

 過去の経済成長する国家を見れば、これから成長する国家の要因とは。


 その国の貨幣価値が低いこと。

 その国の人件費が安いこと。


 人件費の安い国には工場が集まる。雇用が増え労働者が労働力を売れるようになる。収入を得た労働者が新しい消費者になる。そして景気が良くなる。

 1960年代からの日本の高度経済成長とは、安価な労働力を武器にして世界中から仕事を受けたことにある。

 今の日本国内で投資家が増えても、その投資先とは国外の企業となるだろう。


■労働者の賃上げ


 労働者の賃上げに政府が介入して上手くいくのだろうか? 

 労働基準法や最低賃金などの法律とは、道路交通法ほどに守られてはいない。

 これは道路交通法を守らせる警察には権力と武力があるが、労働基準法を守らせる労働基準監督署には権力と武力が足りないからになる。


 労働基準監督署に相談するとどうなるか? それを描いたエッセイがある。


『豆腐屋さんの社畜日記

 ~愉快なブラック企業と労働基準監督署~』(N8373FN)

 作者 福沢

https://ncode.syosetu.com/n8373fn/


 ブラック企業との戦いをおもしろおかしく描いた名作エッセイ。労働基準監督署の権力の無さがよく分かる。

  

 企業に最低賃金法を守らせるためには、労働基準監督署に企業を制圧できるだけの権力と武力が必要になる。

 具体的には『図書館戦争』のメディア良化隊のように、拳銃やサブマシンガンなどの武装が必要になるのではないか。


 国が賃金を上げてください、とお願いしたところで企業から見れば人件費というコストは削りたいところ。この点で国家権力で圧をかけられるところは強い。

 企業から見て労働基準監督署は税務署ほどに怖れられてはいない。


 どうにも新しい資本主義というのは、こうなるといいなあという希望が描かれているだけで、具体的な案としては弱いように感じられる。ステークホルダー資本主義のウケそうな部分を取り入れつつも、実現するための方法論が助成金と政府からのお願いでは、どれほど効果があるのだろうか。

 新しい、と言いながらも経済成長の初期段階に逆行しようというものにも見える。


■里山資本主義


 新しい資本主義と言うなら『里山資本主義』というのもある。

 里山資本主義とは地域循環型の経済で持続可能な社会を形成することが目的。

 2013年にエコノミスト・藻谷浩介とNHK広島取材班が出版した著書において提唱された、日本発のわりと新しい資本主義。


 2011年、東日本大震災の状況ではお金があってもインフラやネットワークが崩壊、水も食料も電気も手に入れられない。そんな災害に弱い現代社会の弱点が提示された。

 既存の経済が破綻したときのサブシステムとして、貨幣経済に頼る割合を減らし、お金に頼らなくとも人が暮らしていける仕組みを作るのが里山資本主義の目的となる。


 エネルギーと資源を際限なく消費することで利益を増やし、今稼げる金の為には20年後、50年後の人の暮らしなど知ったことか、というマネー資本主義とは反対側の思想だ。


 食料とエネルギーの自給自足を目指すというのは、今の拝金風土(マネーカルチャー)の経済社会に暮らすのに慣れた人には受け入れにくいかもしれない。


■エネルギーの自給率


 しかし自給自足率は少しずつ上がっている。

『永続地帯2021年度報告書』によれば、日本国内でエネルギー自給率100%を越える自治体が174に増加。


『エネルギー永続地帯』とは、再生可能エネルギーで自給できる市町村のこと。民生用と農林水産用エネルギー需要を、域内で生み出された再生可能エネルギーで供給できる市町村のことを言う。

 2011年では50の市町村であり、約3倍に増加。


 地域的エネルギー自給率の都道府県別ランキングは以下に。


1位 秋田県 51.3%

2位 大分県 50.0%

3位 鹿児島県 48.3%

4位 宮崎県 46.1%

5位 群馬県 39.5%

6位 三重県 38.1%

7位 高知県 36.0%

8位 福島県 35.9%

9位 岡山県 35.8%

10位 栃木県 34.1%


 また、『永続地帯市町村』とは、エネルギーの自給に加えて、カロリーベースの食料自給率が100%を超えている市町村のことを言う。

 永続地帯市町村数は、2016年度に44、2017年度に58、2018年度に70、2019年度に80、2020年度に90と、年々増加。


 極論すれば、テクノロジーが進歩し、エネルギーと食料の自給自足の方が労働するよりも利益率が高いとなれば、貨幣経済に頼る必要は無くなる。


■最後に


 いくつか紹介してきたが、あなた好みの資本主義は見つかっただろうか?

 私はこれからの時代は、貨幣経済を維持するマネー資本主義と自給自足率を高める里山資本主義の静かな戦い。

 国家(クニ)故郷(クニ)の冷戦の時代となるのではないか、と考える。


 最後にひとつ。

 どのような経済社会になろうとも、人に一番重要な資本とは、自分の身体であることは変わらない。人間、身体が資本。

 時代がどう変化しようとも、先ずはあなたの身体を大切にして欲しい。



BGM

『GASSHOW』

illion

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― 新着の感想 ―
[一言] 無政府資本主義。 その最たる例というのがアーマードコア4、faの世界ですね。 どういった世界かというと文字通り資本、巨大企業が国家を解体し「パックスエコノミカ」のスローガンの下、限りある資源…
[一言] 最後のBGMで全て持っていかれました 祈ろう、もうこのディストピアにはそれしか残ってない
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