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あとの祭り
人気も防犯灯も無い、暗く寂しい路地裏。
火折乃の前に、上下真っ黒なジャージ姿の大山祐二が立ってた。
大山の視線は虚ろに空を見つめている。
「もう、そこから出ることは出来ませんよ」
そう言うと、火折乃は黒いワンピースの裾のホコリを軽く払う。
「でも、幸せですよね?だって、力ずくでものにしようとした私と一緒に、ずっと夢の世界で暮らせるのですから。でもまあ……」
そう言って、伝線してしまったストッキングを見て顔をしかめる。
「一応、その夢が悪夢にならないことを祈っておいてあげますね。後は、そのうち誰かが通りかかったらその人にお世話になってください。私、警察キライなんで」
そう言うと、彼女は大山を置いて歩き去ってしまった。
静かな、星の無い夜の出来事だった。
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