恋バナ
「ねぇ?キョウコさん」
「はい?」
物思いに沈む間もなく声をかけられ、杏子が返事を返した。
「お客さんの中に素敵な人はいる?」
杏子の顔が熔けた鉄色に変わった。
「そうか……いるのか」
意地の悪い笑いを浮かべながら、コオリノが身を乗り出してくる。
「ほら、オネェちゃんに教えてごらん。さっき私を弄ろうとしたんだから、逃がさないわよ」
「えっと、ラクビー部の方なんですけど」
観念したように杏子が話し始める。
「お付き合いさせていただいてる方がいます」
「そこまで聞いて無い」
コオリノはソファーにもたれかかる。
「ドン引きだわ」
コオリノの言葉に杏子はますます顔を赤らめると下を向いて畏まってしまった。
「せっかくだから、名前くらい聞いてあげるわよ。なんて名前なの?」
コオリノが言うと、杏子はおずおずと口を開いた。
「い……と・う、さんです」
「地味な名字ねぇ」
「すいません……」
謝る必要は無いと思う。
「彼氏とデートとか良くいくの?」
(しつこいな)杏子はそんな風には思ったが、彼氏の話をするのは悪い気持ちはしなかった。
「部活が忙しいので、あまり休みが合わないんで、たまに隣町にある伊藤さんのおうちでBD見たり」
「聞かなきゃよかった。ノロケおつ」
コオリノの言葉に杏子が小さく微笑む。
「しあわせそうね」
杏子がうなずく。
「はい、とっても」
「思い出して来たみたいだし、そろそろいいか」
コオリノが呟くようにそう言った。
「えっ?」
訝しむ杏子を無視するようにコオリノが口を開く
「最近は、いつごろデートした?」




