#05 美人教師からの呼び出しイベント
「こらぁ水元!!! キサマまたマスクを外して廊下を歩くな!!!」
おっと
またサクラ先輩か
いつものこととは言え、お昼休憩にまで俺に絡んでくるとはまったく、やれやれだぜ
「サクラ先輩、2年の校舎まで来て俺に会いたいだなんて、ホントに俺の事が好きなんですね」
「水元の脳みそは腐ってるのか!? 私は風紀委員としての見回りだ! キサマの様なマスクをせずにウロウロする輩を取り締まってるんだよ!」
「はいはい、無理に強がってテレてるの隠さなくても良いですよ。 また今度ゆっくりお相手しますからね。 今日のところは図書室に行きたいのでごめんなさい」
そうお断りしてからマスクを装着して図書室へ向かって歩き出す。
そう
俺は罪作りな男、ノリオ。
「なぜ私があしらわれる様にデートを断られたみたいになっているのだ!?」
図書室に到着すると、今日の新聞を取って窓際のいつもの定位置に座る。
背もたれにもたれて脚を組み、新聞紙を広げる。
まるで、朝のコーヒーショップとかにいる”仕事デキルアピール”ばかり勤しむ意識高い系ビジネスマンぽい演出だ。
一人そんな演出をして、心の中で女子生徒達からの視線に答えていると
ピンポンパンポ~ン♪
「2年2組、水元ノリオ! 今すぐ職員室に来なさい! 繰り返す!水元ノリオ! 教師を待たせるとはいい度胸だ!」
ピンポンパンポ~ン♪
あ、キョウコちゃんに呼び出されてたの忘れてた。
俺は新聞紙を元の位置に戻すと、職員室で待つ我儘キョウコちゃんの元へ急いだ。
「失礼します。 キョウコちゃん、お待たせしました。 でも、朝も言いましたが、お付き合いの件はごめんなさい。先生にはもっといいひとが居ると思います」
「ようやく来たか。 それでなんで呼ばれたのか分かってるのか?」
いきなりスルーかよ
キョウコちゃんって、結構メンタル強いよな
「はい、先ほどからお断りしてますが、告白イベントですよね? 職員室のようなこんな衆人環視のもとでなんて、まったく困った子猫ちゃんだぜ」
「水元ー!!いい加減にしろや!!!ゴラァ!」
そう言って、キョウコちゃんは俺の首にガッチリ腕を回して、チョークスリーパーをグイグイ決めて来た。
「お前は何でこうも毎回毎回私のことを行き遅れの三十路扱いするのだ!!! 別に結婚に焦ってるわけじゃないぞ!!! その気になれば結婚相手の一人や二人、簡単に見つけられるんだぞ!!!」
俺はチョークスリーパーが外せないので、首を絞められながらも必死に訴えた。
「先生!!!嘘つきはドロボーの始まりですよ!!! いくら悔しいからって生徒に見栄張って嘘ついちゃダメですよ!!!」
「だーかーらー!!!ウソじゃねーよ!!!」
いい加減首が辛いので、キョウコちゃんの脇腹を掴んでモミモミしたらようやく解放して貰えた。
俺は生徒でキョウコちゃんは教師
本来なら、俺は教わる立場だ。
しかし、ココで俺は心を鬼にした。
俺が言わないと、先生はいつまで経っても現実と向き合うことが出来ないだろう。
キョウコちゃんを壁に押し付け、右手で壁ドンしてキョウコちゃんの顔を見つめる。
「キョウコちゃん、もう強がらなくても良いんだよ。 世の中結婚出来なくても人生を謳歌してる人なんて沢山いるんだから。 別に結婚だけが幸せな人生ってわけじゃないんだからさ。 それに結婚しても幸せじゃない人だって沢山いるしね」
優しい声音で囁くと、キョウコちゃんは深いため息を吐いてから
「もう、それでいいわよ・・・アナタの相手は疲れた・・・」
そう零して、俺を押しのけて自分の席に座り、机に突っ伏してしまった。
また一人の女性のハートをブレイクしてしまったようだ。
まったく俺ってヤツは、やれやれだぜ。
そう
俺は罪作りな男、ノリオ。