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憑依したのは異世界の勇者でした

ハーメルンにて連載中の作品の投稿になります!!


ハーメルの原文ままに持ってきているので、改行などがだいぶ怪しいですが

温かい目で見てやってください!

私の名前は明空 翼 (みよく つばさ)


 


そして、私はたぶん、死んでしまった。


明晰夢のようにはっきりとした意識の中、私は真っ暗な世界で、

一人呆然と立ちすくんでいた。


わかることは、私が死んでいるということだけ。


 


死んだ理由は、なんだったかな・・・。誓って自殺とかはしてないはずだけど、

よく思い出せない


でもたぶん、学校から家に帰る途中だったと思う。


 


今日の晩御飯の当番は私だったし、

今頃、弟たちがいつまでも帰ってこない私に怒ってないかな。

明日、智ちゃんと遊びに行く約束すごく楽しみだったのになぁ・・・。

父さん仕事頑張りすぎてないかな、お母さんと一緒に作ってた手編みのマフラーだってまだ完成してなかった。みっちゃんとサイクリングにいく約束も、

もう守れないんだ。


 


今日死んじゃうなんて、思ってもみなかった。

まだまだたくさんやりたいこと、あったのに。


 


みんな、泣いてくれるかな・・・、


私が死んじゃった事、悲しんでくれるかなぁ・・・


 


嫌だよぉ・・・


 


死にたくなんかなかったよぉ・・・っ


 


涙は出てこない、だけど、すごく悲しくて、辛くて、怖くて、

もうみんなに会えないことが、信じられなくて、私は泣いた。

ただ泣き続けた。


 


私の意識はそこで一度途切れた。


 


 


 


 


 


 


 


「っ!お姉ちゃん!みんなお姉ちゃんが・・・っ!!」


 


次に意識を取り戻したとき、私は全く見知らぬ場所にいた。視界には空色のボブヘアー少女が何か叫びながら外へ出ていき、その声に反応して、外が騒がしくなり始めた。


 


 


 


 


 


どうやら私は異世界の勇者の体に憑依してしまったらしい。


勇者の名前はソフィア・アインホーンというらしい。


あの後すぐに色んな人がやってきて、混乱していたところ、ものすごい存在感のあるおばあさんが周りの人を部屋から出して教えてくれた。


私には、三人の仲間がいるらしくて、その人達と勇者として魔王討伐をしてほしいと、おばあさんにお願いされてしまった。そんなの無理だ、私は剣なんて持ったことないし、魔法の使いかただって知らない。なにより、殺し合いなんて恐ろしいことが、私に出来るとは到底思えなかった。


でも、その時のおばあさんの顔はとても辛そうで、私はおばあさんの手をとって戦ったことなんてないけど、頑張りますと言ってしまった。おばあさんは目を潤ませながら、ありがとう、ごめんねと何度も私に謝っていた。


 


それからおばあさんとの話し合いで、仲間の三人には、私がソフィアさんではないと話すことに決めた。おばあさん、ロゼさんは最初、記憶喪失になったことにしようと提案してくれたけど、私はあんまり嘘をつくのが得意じゃないし、命を預ける仲間なら、本当のことを話しておいた方がいいと、ロゼさんを説得して、本当の事を話すと決めた。


 


 


 


私は三人の仲間、魔法使いであり、ソフィアの妹である、ユリーカ・アインホーン、戦士で幼馴染のカレン・ヴァーハント、僧侶で同じく幼馴染のルミアにソフィアはすでに亡くなっており、彼女の体に私の魂が憑依したことを告げた。


 


 


彼女たちの反応は思っていた以上に大きく、ソフィアという女性がどれだけ人徳のある人物だったかが窺える。

そんな彼女の代わりが、私なんかに務まるのだろうか。


ある種の不安を抱えながら、彼女たちの反応を待つ。


 


結果として、私は選択を間違えてしまったのかもしれない、話し方がまずかったのか、記憶喪失ということにしておいた方が良かったのか、後悔してももう遅い。

私は彼女たちに拒絶された。

心無い言葉で罵られ、ユリーカからは「お姉ちゃんを返して!」と怒鳴り散らされた。


 


仕方がないことだ、彼女たちにとってソフィアさんとは、それだけ大きい存在だったのだから、ユリーカさんだって、姉がいきなり別人になったら混乱するにきまってる。だから、これは仕方がないことなんだ、彼女たちの事を考えず、唐突にソフィアさんの実質的な死を告げた私が悪かっただけの話なんだ。私は三人から向けられたあの視線を思い出し、震える身体を抱きしめてその日は眠った。


 


翌日から旅を再開することにした、ソフィアさんが重症を負ってからすでに、日が経っており、その間も魔王の配下による被害は出ており、

私たちは、急いで仕度を整え出発した。


彼女たちとの距離は以前遠く、私は三人から少し離れたところを歩いていた。


 


 


 


初めて、生き物を殺した


 


生き物を殺した時のぐちゃっとした感触が未だに残っていて、

忘れられそうにない。


私が殺したんだ。


気分が悪い、今にも吐きそうになるのをこらえながら、野営の準備をする。


幸いにも、戦い方などは、身体が覚えていてくれて、剣や魔法を使うことに違和感などは無かった。それでも、カレンさんから戦い方がなってない、ソフィアはもっと強かったお前とは違うと物凄い剣幕で怒られてしまった。


それはそうだ、私はソフィアさんじゃない、私は明空翼なんだから。


 


野営の時も、三人とは、距離を取ってしまった。三人の視線は相変わらず、

私を目の敵にしているのがひしひしと伝わってくる。

三人の目につかないところで食事をとり、三人から離れた場所で眠る。

真っ暗闇の中、一人で眠るのはとても怖かった。


 


今日は初めて人を殺した


 


最悪の気分だ、殺したのは山賊で、たまたま寄った村で近くの村々で山賊の被害が出ているということで、討伐の依頼を受けたのが始まり。


山賊を殺した時の悲鳴と殺される直前のおびえた表情が頭から離れない。


ふらふらと倒れそうになる足に無理やり力を入れて、倒れないよう踏ん張る。山賊を倒したころにはすでに太陽が沈みかけており、そのまま山の中で野営をする。


戦闘中は、連携をとるために声を掛けてくる三人だが、そこにもやはり敵意がこもっており、こうして戦いが終わると、全く話してくれない。

私は仕方ないと自分に言い聞かせて、刺すような視線から逃げた。


 


初めて人を殺した感覚が忘れられず、

私は晩御飯に食べたものをすべて吐き出してしまった。


 


 


 


やっやめてくれえ!


 


殺さないでくれェ!!


 


く、来るなぁ!!


 


あああああぁアア!


 


 


「っはぁ!」


 


夢か


 


辺りはまだ真っ暗で、まだまだ日は上りそうにない。


 


私は殺した人たちのことを必死で頭の隅に追いやり、

汗ばんだ身体を気にする事も出来ず、無理やり眠りについた。


 


 


 


 


旅に出てから一月ほど時間が経った。


相変わらず、息が詰まるような生活を続けている。


戦いには慣れてきた。だからといって殺すことに慣れたわけではないけれど、

この一か月で数えきれないほどの生き物たちを殺してきた。


三人との関係は相変わらず。変わったことと言えば、私の体調くらいなものだ、食事が喉を通らなくなってきて、無理やり詰め込めんでは胃の中のが空っぽになってもひたすらに胃液を吐き出してしまうようになったことと、寝ると必ず、仲間の三人から罵詈雑言を吐き捨てられる夢や、街や村の人から、勇者様、ソフィア様と助けを求めてくる声が、今まで殺してきた人や生き物たちの恨みや悲鳴が聞こえてくる夢を見るようになったことが原因で眠れなくなってしまった。


 


頭がおかしくなりそうな日々を今でもこうして続けられている理由はロゼさんに魔王と倒してくると約束したからに他ならない。ユリーカたちだって、本当はとっても優しいんだ。ただソフィアさんのことで折り合いがついていないだけなんだ。私がそのストレスのはけ口になることで、三人が魔王討伐に向かうことができるのなら、それはとてもいいことだ。早く、早く魔王を倒してしまいたい。


 


 


先日、ユリーカさんと二人雪山にある洞窟に閉じ込められてしまった。


街で受けた依頼の最中、突然の吹雪で視界が悪くなっていたところ、イエティに襲われ、私たちは散り散りになってしまった。

その時に近くにいたのがユリーカさんだった。


吹雪が一時的に止んだ頃にはすでに日は落ち、雪山の中で遭難してしまった私達。途中ユリーカさんが体調を崩してしまい、私は彼女を背負って、歩き続けた。


たまたま見つけた、洞窟、横穴かな、を見つけたので、ユリーカさんを下ろして、容体を確認する。熱が上がっており、汗もかいていたため、私は下着を脱いで、それを使ってユリーカさんの体を拭いた。横穴の中は外よりかましでもとても寒く、私はユリーカさんが冷えないよう風避けになりながら彼女の体を抱き、温めた。

食べ物は携帯していた保存食しかなかったけれど、どのみち私が食べても吐き出すのがオチなのでユリーカさんにすべて渡した。


 


 


それから二日程経って、ユリーカさんの容体も安定し、

カレンさんたちとも合流出来、雪山を降りることが出来た。


 


 


 


それからも、色んな事があったものの、私たちはついに魔王のもとに辿り着いた。


私がこの世界にやってきてから、実に3か月ほど経っていた。


といっても、ここ一か月半ほどの記憶は朧気にしか覚えていない。


 


 


「はあぁああ!」


「っぐぅ、おのれ、勇者!」


 


苦悶に歪む魔王に私は刀身に光を纏わせ、切りかかる。


 


「これっデ!・・・お、わり!!」


「ぐわああああぁアアアアァ・・・・・ッ!!」


 


 


 


おわ、っタ


 


こレで、ヤ、っと


 


ユ・う・・しゃ、っも、オ・・ワ、リ


 


 


 


翌日、勇者ソフィア・アイホーンは三人の仲間の元から姿を消した




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