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思考と時間  作者: 石田イサク
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暗転

 時々、どこかに落ちていくかのような感覚に襲われる時がある。。何の前兆も無く、突然降りだす夕立の様に。

 最初は子供の頃だった。放課後に教室で一人でいた時だ。西日がチョークの粉の舞う様を浮かび上がらせる時刻、それはやってきた。私がなぜそんな時に一人で教室にいたのかはよく覚えていない。覚えているのは、急に教室の床が抜けてどこまでも落ちていく様な恐ろしい感覚と、気付いたころにはあたりはすっかり暗くなっていたという事だ。それからこうしたことが時々起きるようになった。ある時は週に一度、またある時は月に一度、逆に二日連続で起きることもあった。特にそのことを誰かに話したことはない。解決策があるとも思えなかったし、その必要性も感じなかった。一つ気になっているとすれば、この感覚に襲われた後、時間が思ったよりも経過しているという事だ。感覚的にはほんの一瞬の様に感じても、実際には三十分以上たっていることが多い。それだけ時間が進むと約束に遅れたり、観たいテレビを最初から観れなかったりと何かと不便がでてくる。何よりもまわりから見られたときに、どう映っているのかが心配だ。白目をむいて涎を垂らしていたりでもしてたら頭のおかしい奴だと思われてしまう。いっそのこと家族に見られて、どんな顔をしていたのか教えてくれればいいが、生憎この感覚は一人でいるときにしか訪れないらしい。時間がたてばいずれ起きなくなるだろうと楽観視していたが、大人になった今でもこの感覚は変わらずにやってくる。

 異変に気付いたのは一年ほど前のことだ。いや、気付くのが遅すぎたと言っていいだろう。コンビニのバイト中、店長から裏のごみ置き場の清掃を頼まれ嫌々取り組んでいた時だった。視界が暗くなっていきあの感覚に襲われた。何度も経験すると慣れたもので、またか、という思いだった。あたりが明るくなり初め意識が正常に戻ってきた時、店長がかんかんになって私のもとにやってきた。聴くところによると私のこと探したが一時間近く見つからなかったという。どう事情説明したらいいのかわからず、しどろもどろの適当な理由をでっちあげその場は収まったが、それは不思議なことだったと言わざるをえないだろう。ごみ置き場は建物のすぐ裏手にあり、見つけにくい場所はない。第一店長自らごみ置き場の清掃を頼んだのだから、ごみ置き場周辺を探していないはずがない。つまり、私があの感覚に襲われている間、私はこの場所にいなかったという事だ。この時からだ。私の中に一つの考えが思い浮かんだのは。

 私は、タイムスリップしている。

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