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憑神  作者: 右下
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【二章】第一話:ネリウス教会

今回から一新、第二章として始まりました。話のカウントも一からです。

太陽が僕たちの真上に昇った頃、やっと僕の住んでいる町『クリード』へと着いた。


「ほらシロさん、着きましたよー」


僕は声でシロさんを起こす。勿論それはシロさんの体が触れないからだ。


結局シロさんはデルの村を出発してから、今まで一回も起きなかった。


今でもプカプカと気持ちよさそうに宙に浮かび、幸せそうな顔で寝息を立てている。


「ほらほらー」


シロさんの眠りを覚ますには声をかけるしか方法がないので、僕はただただ声をかけ続ける。


「シーローさーんー・・・・・はぁ、不便だな・・・」


今僕がいる所は、クリードの北入口の手前にある小さな馬小屋の近くだ。商人や旅人、楽団に雑技団などの来訪者たちが乗ってきた馬達を繋ぐため、基本的に町の入り口には馬小屋が設けてある。


周りを見渡すと結構な数の馬が繋がれている。ざっと数えても二十頭はいるだろうか、町の中に楽団や雑技団でも来てるのかな?


現在シロさんは僕以外人目には見えないマナーモード(クリードへ向かう道中暇だったので、僕が勝手に名付けた)の状態で、勿論周りにいる馬達にも見えていない。


だからして、僕が必死にシロさんを起こすためにかけている声は、他人から見たらかなりの異常者に映るだろう。馬には人の言語を話す事が出来ないので、誰かに公言される心配はない。だが、もしこの姿を人に見られれば、今まで築き上げてきたこの町の僕の評判が著しく低下するだろう。


僕はクリードにたった一人しかいない神父なのだ。だから人々は僕を頼り、教えを説いてくれと何時もせがまれる。もしそんな僕が後ろ指を指されるなんて事が起きたら、僕は絶対に我慢ならない。何をしてたか追及されたら『ちょっと神様と会話をしてました』と相手が納得か諦めるまで言い張ってやる。なーに、嘘はついていない、目の前の神に誓って真実を訴えてやる。


何がおかしいのか『ふふふ』と意味もなく笑った。その間も馬達は僕の事を不思議そうにがん見している。


「お主、何か変な事でも考えているのか? 気持ち悪い感情がぬるぬると伝わるんじゃが」


「ふふふふ・・・・・はっ!シロさんおはようございます」


いけないいけない・・・つい最悪の未来の予想図を見ていたら、頭の中がすっ飛んでいたようだ。


「コラコラ、何事もなかったように話を戻すな。わしの睡眠を妨げたんじゃ、それ相応の事情でもあったんじゃろうな?」


「あ、いえ特には。・・・・・さてシロさん、やっとクリードに着きましたよ。いやーここはですね、気候も良て・・・・・・」


「って、おい!無視するすでない!」


僕はそのまま町の素晴らしさを説明しながら、北入口から町へと入った。すっ飛んでいた頭は、まだ治ってないようだ。


町の入口には少なからず人が通っている。それもそうだ、入口なのだから。つまり少なからず今の僕のすっ飛んでいる姿を確実に見てしまう、とゆう事だ。


僕に対し、周りの人たちが『一人でブツブツと町の紹介をしながら、町の中に入るおかしな人。しかもよく見たらこの町の牧師さんだ』とゆう認識をしたのも決しておかしな話ではない。


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


久々と言う程でもないが、数日ぶりに見た町並みに僕は自然に安堵をするだろうと予測していた。


ここ最近は色んな事が僕の身の回りに起きまくったせいか、どうも心の余裕が無くなりかけている。またいつ何時トラブルが降りかかるか分かったものじゃない、だがつねにそんな事を心配していたら、オチオチ外にも出れない。


だがしかし!今の僕には文字通り僕の中に神様がいるのだ!!だったら聖職者として、牧師として一体何を恐れるか!? 毎日、毎月、毎年祈りを捧げ崇拝している『神』がここにいるのだ!だったら何も恐れる事はないのだ!!!


と、言いたい所だが。はっきり言って全てのトラブルの元凶はその『神』なのだ。本末転倒もいいところ、もはやこれじゃ天罰に近い。しかも神様直々に体を張ってだよ?


つまり、今の僕には自分が住む町にさえ、何かの脅威があるのではないのかと、心の余裕が追い込まれているのだ。


もはや僕が安心して休める場所は一つしかない。


『セリウス教会』


三姉妹の神の一人、三女に当たる『セリウス神』を崇拝する正教会。僕が仕えているのもこの教会だ。別名『神の家』と呼ばれている、この町の唯一の教会で、この町一の荘厳な建物だ。


まず宗教と一口に言っても、その宗派は多数ある。細かく説明するときりがないので、勢力的に代表を挙げるとしたら、この三つが挙がるだろう。





まずはこの町にも点在する『ネリウス教会』だ。


『ネリウス教会』は三つの教会の中で群を抜く信者数を誇り、ざっと数千万はいると聞いた。大体の町なら確実に一つは『ネリウス教会』の支部が建っているものだ。


『ネリウス教会』はその信者数の多さから、お布施金が泉のように湧き出てくる。そんな資金源の豊富さを活用し『セリウス教会』はやたらめったら色んな所に教会の支部を建てまくっている。噂では山の頂上や砂漠のど真ん中、断崖絶壁の上やはたまた水の中など、もう何がしたいのか分からないくらい建てまくってるそうだ。


『神の家』と呼ばれているのは、『ネリウス教会』がどこの場所にも建っているから。つまり神様がどこにいようと、ゆっくりと休める場所。それが『神の家』と呼ばれる所以らしい。




二つ目は『アヒウス教会』


三姉妹の次女に当たる『アヒウス神』を崇拝しているのが『アヒウス教会』。別名『神の衣』と呼ばれており、信者数は少ない物の、その一人ひとりの信仰力は計り知れないとゆう。『ネリウス教会』は信者は多いが、根っからの信者と言う人はそんなにいない。たまに祈りを捧げるのを忘れるし、教会にだってそんなに行かない、ちょっとかじっただけのような人が多く、中にはこれを信者としてカウントするには、幾らなんでも苦しい者だっている。


そんな『ネリウス教会』とは正反対で、『アヒウス教会』は信者の一人ひとりが古株の信者ばかり。まさに根っからの神崇拝者で、狂信と言われるほどだ。少数精鋭とはまさにこの事。ちょっとした気持ちで『アヒウス教会』に入ろうものなら、あまりの教えの厳しさに考えがすぐに変わり、逃げ出す人も少なくない。挙句の果てには逃げ出した人を異端者として縛りつけれる、何て事例もある。


と、ここまで聞くとかなりのイカれたカルト宗教に見えるが、ちゃんといい所だってある。


先術の通り『アヒウス教会』の信者たちは熱心な人たちばかりで、毎日欠かさず朝昼晩にお祈りを捧げる。ちょっとでも性格がねじ曲がってたり、途中で諦めてしまう半端者などがいたら、みんなすぐに『アヒウス教会』を去っていく。そして必然的に『アヒウス教会』には誠実で真面目な良い人しかいないのだ。


ちょっと狂信な所もあるが、人としては出来ているので、宗教を信じていない普通の人々などからは結構人気が高い。


ちなみに『神の衣』と呼ばれてる理由は、その熱心な信仰にある。


衣服は着る人の言う事に口答えをしない物だ。勿論生きてないからね。『アヒウス教会』が出来て、信者のあまりにもの真剣で熱心な信仰ぶりを見た人々は『決して神に逆らわない者』『神の第一の僕』『ただ神の元に纏う者』そんな信者を衣服に例えて『神の衣』と呼ばれたのが起源だとか。





残る一つは、謎に満ちた『ペネウス教会』


三姉妹の長女に当たる『ペネウス神』を崇拝する『ペネウス教会』は僕もその全貌を知らない。


信者数も不明、総主教や司祭の名前も不明。別名『神の食』と呼ばれているが、意味もまったく分からない。


先術の二つの教会に属する牧師は僕も含めて沢山いるので、何人か知り合いもいるが、この教会の牧師だけは知り合いが居ない。



僕が唯一知っているのは『ペネウス教会』は他の町に教会を決して建てない事だ。本部があるのは王国『ミッドランド』。


しかし、『ネリウス教会』も『アヒウス教会』もこの王国だけは支部を建てない。いや、建てさてくれない。この王国は完全な『ペネウス宗教』の崇拝国で、他の宗派を弾圧、徹底的な監視の目で他の宗派は絶対に教えられない。


何故信者数も不明なのに、三大勢力として数えられているのか矛盾が生じるのだが、恐らく王国全ての人民が信者なのだと推測出来るので三大勢力に挙げられる。とまぁ、ここまでは分かるがまだ矛盾点もある。


『ペネウス宗教』は王国にだけその教えを説き、修道士や信者などを集めている。


でも何でその教えを他の町に説かないのか。何でミッドランド王国はそこまで『ペネウス宗教』に拘るのか。教えが素晴らしいならその教えを広めるのが宗教ではないのか、それとも『アヒウス宗教』みたいに教えが厳しいので他の人には理解できないと思い教える気が無いのか。


『ネリウス教会』のお偉い方に訊いた事はあるが、いくら訊けど話をはぐらかされてしまい満足する答えは分からなかった。




元をたどると。


この三つの宗派は元は一つの物なのだ。


名前は『セント・メル・ネンテ教』三姉妹の女神を一つの『神』として祭っていたそうだ。しかもこの三姉妹の女神は、一人ひとりが他に類をみない力を持っていた。


しかし、時代が進むごとにつれ三人の女神を一つの宗派が独占して崇拝するのは愚信だ、と他の宗派達が唱え始めた。だがそれは建前で、本当は力の強い神がほしかったから、今自分たちが崇拝している神より、より効力がありそうな神がほしかったから。人が神を選ぶとゆう、あってはならない考えの元で、結果的に三姉妹の神は散り散りになってしまう。


そして現在、散り散りになった三姉妹の女神は名を変え『ネリウス』『アヒウス』『ペネウス』として、人々に強く崇拝されている。








話を戻すと、とにかく今の僕には休む場所がほしいのだ。


だからして、この僕の二本の足の歩みが早くなるのは分かる。だったら普通は喜びと安堵の感情が心に満たされるのも分かる。だが先程から僕の心に、気味の悪い感情しか溜まらないのは分からない。吐き気を催す嫌な予感と、水を頭からぶっかけられた様な冷や汗が流れ、何時の間にか僕は駈けていた。


ある一点を目指して。



「お、おいお主。何故そんなに急ぐか? 何か用事でもあ・・る・・・・!!」


シロさんの言葉が途中で止まり、僕の足が止まる。






『ネリウス教会』が燃えていた。




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