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憑神  作者: 右下
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第十四話:天使と神様

ある所にダンバートンと呼ばれる、とても廃れた街がありました。


ダンバートンには毎年自然災害が多発し、気候や風土も非常に悪く作物などまったく育てられません。そのせいでほかの街との貿易が出来ず、街の治安も悪化し、街に近づく者など誰もいませんでした。


そんなある日、ダンバートンを救うため女神様がやってきました。その女神様は幸福をもたらす力を持っており、この悲惨な街を見て酷く心が荒み、救いにやって来たのです。


女神様が不思議な力を使うと、毎年何十回も起きていた自然災害は夢のように消え、気候も穏やかになり、土に栄養が溢れ、美味しい作物が沢山とれるようになりました。そして、見る見るうちに廃れていた街は、活気溢れる素晴らしい街になっていました。


街の人々は街を救ってくれた女神様に感謝し、街の大広場に偶像を立て、街の全ての人が毎日感謝の気持ちをお祈りしました。


女神様も街の人たちの多大なる感謝の気持ちを裏切ってはいけないと、このダンバートンをずっと守っていくことを心に誓いました。


街に初めてやって来た平穏な日々、そんな時間が何百年間も続きました。


しかし、ついに恐れていた事態が街に迫りました。


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


街に一人の天使が派遣されました。


天使とは、みな神様に仕えており、神様のサポートや人々に幸せを運ぶのが仕事でした。


そして優秀な天使は大天使へと昇格し、ある試練に成功した者だけが神様になれました。


毎日しっかり働き、善行を積み重ねていく。その姿は、どこか神を慕う人間のようでした。


そうしていつかは神様になる、それが天使たちの大きな夢でした。


ダンバートンにやってきた天使もみなと同じく、神様になる事が彼女の夢でした。


しかしこの天使は仕事の覚えが悪く、ミスや失敗をつねに起こし、いろんな神様に仕えては違う所に飛ばされ、仕える神様を転々としていました。


早速女神様の所で働いたものの、いつもどうり失敗の連続でした。しかし、いくらミスをしてもいくら失敗しても、女神様が天使を叱る事はありませんでした。むしろ優しく励ましてくれて、天使は初めて悲観の涙ではなく、幸せの涙を流しました。


そして天使は変わりました。少しずつ着実に仕事をこなしていき、失敗もミスも段々しなくなっていきました。


天使は女神様の事を大好きになるのも時間の問題でした。


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


月日は流れ、天使は仕事の成績から、天界から立派な大天使にへと昇格してもらいました。


大天使になった天使はつねに自信に溢れ、女神様からも大きな信頼を得ていました。


そしていつも通り仕事をこなしていた天使に、ある神様が街に訪ねて来ました。


天使は早速要件を訊くため、女神様の変わりにその来訪者に会いました。


その来訪者の正体は『運命を司る神様』で、近々この街に起きる災厄の注意に来たのでした。


しかし、要件はそれだけではなく、天使にある事を言いました。


『あなたはもう大天使です、魔力を自在に扱うことも自然と出来るでしょう。もし、この災厄をあなた一人の力で切り抜けたら、きっと神様になる夢も叶うはずです』


それは思いもよらぬ言葉でした。


何百年の長い長い年月を経て得た地位、そして神様になれる、とゆう夢があと一歩で叶う事を知った天使は大いに喜びました。


しかしよく考えてみると、いくら大天使と言えど強力な力は持っていません。つまり、この件を天使一人で乗りきるのは、まだまだ力不足でした。


だが『運命の神様』はその事も知っており、さらに言葉を付け足しました。


『私が力を授けてあげましょう、さすればあなた一人でも乗り切れる程の十分な力が手に入ります』


この言葉を聞いた途端、天使の心に光が射し込みました。


『それと一つだけ注意して下さい。今から与える力は、あなたにはまだ完全には扱える力ではありません。ちゃんと感情をコントロールしてないと自発する危険性があります』


天使はその言葉をちゃんと肝に銘じ、慎重に扱う事を『運命の神様』に約束しました。


しかし、ここでようやく天使はとても不可解な事に気付きました。なぜ見知らぬ自分に、このような力をくれるのか、あまりにも話が出来過ぎている。


天使はどうしてここまで自分に親切なのかを訊きました。


『私はただチャンスがある者に、助力したいだけです。それに・・・ここの街にいる神は、私は嫌いなのです。いずれあなたにも分かる時が来るから、気をつけて』


そう言って、天使にとって理解不可能な言動を残して、『運命の神様』は行ってしまいました。


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


天使は貰った力と『運命の神様』の事は伏せ、災厄の事だけを女神様に報告しました。そして天使は女神様に提案しました。


この一件を自分にやらせてくれと。


しかしいくら頼み込んでも、女神様は決して首を縦には振りませんでした。さらにこの件にかかわる事を、天使に禁止させました。


それもそうでしょう、大天使と言えど、たかが一人の天使。神様とは次元が違うのです、女神様もこの件は自分でしか解決できないと確信していました。


この待遇に天使は、深い絶望と悲しみに陥りました。


でもよく考えれば分かる事。そんな街の危険を天使に任せられるわけがない、なのに天使は分かりませんでした。


女神が天使の身を案じて、この件から遠ざけた事、大事だからこそ、天使に大きな失敗をさせて貶めたくないと。


だけど天使はこう考えました。


あんなに頑張って頑張って、信頼をされたのに、結局は言葉だけの信頼だったのかと。


天使は何百年ぶりに悲しみの涙を流しました。


そして無意識のうちに悲しみの涙は、怒りの涙へと変わっていました。


感情が以上に高ぶり、手には見た事のない光の剣を握っていました。奇声を上げ、その剣を持ったまま、女神様を後ろから体に突き刺しました。




そのまま女神様は息絶え、残ったのは笑みを浮かべる天使だけでした。



その後訪れた厄災を払いのけたのは、皮肉にも天使でした。

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