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憑神  作者: 右下
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【一章】第一話:神様の悪戯

   





 

広い広い並木道、空は藍く澄み渡たり、雲は洗いたての服のようにフカフカしてそうだ。


道は少しだけ整えられているデコボコ道、そんな所が田舎臭さを醸しだしている。


でも僕は町に住んでいるのでこのような田舎っぽい場所が好きである、自給自足は苦手なんだけどね・・・・戯言かな?

  

近々、僕の住む街の隣街では『復活祭』という行事が行われる季節だ。


そこで使用される神木をデルの村から引き取るために、今僕はこうして田舎道を歩いている。


何故僕がそんな事をしているかと訊かれれば、簡単な話、僕は自分の町で牧師をやっている。『復活祭』とゆうのは平たく言うと宗教的な行事、しかも街規模とゆう大きな物なのだ。だから隣街の大祭司様の命令で、よく僕は色々なことを頼まれる。


毎回、というのは別に人員がいないわけではない。少し表現が牧師的ではないが、むしろ人員は腐る程いる。


「『良い事をしろ』とはよく言うもんじゃが、それは具体的な意味とはなんじゃ? 貧困で困っている者に金貨を与えることか? 飢餓に苦しむ者に食糧を分けてやることか? 確かにそれも良い事じゃろう。じゃがそれは現状を少し良くしただけ、金貨を与え、食料を与えた、が、なら数時間後は数日後はどうじゃろう? まだ金貨はあるか? まだお腹はいっぱいか? 所詮はその程度の事をしたくらいで、己の自己満足を満たす偽善行動にすぎん。現状ばかり救っても意味がない、その者の未来ごと救わなければ、決して『良い事をした』とは言い切れん」


こんな風に、大司祭様は僕にちょくちょく教えを説いてくれるため、僕には雑務(めいれい)を聞かなければならない義務的なものがある。


例えそれが、僕から頼んで教えを説いてもらってるわけではないとしても、だ。


「まぁ、いいんだけどね? どうせする事ないから暇なんだし」


う〜ん、我ながら今の発言は聖職者として駄目な発言かな? でもこれが現実なんだけどねぇ。


訂正させてもらおう。


「神の下、神に仕える偉大なる者の元で働ける事を感謝します。うんうん、完璧だねっ」


とりあえず今回の要件を振り返ってるうちに、いつの間にか村の入り口付近に到着していたようだ。


入口には木で出来た大きなアーチ上の看板が立っていて『デルの村へようこそ!』と大きく書いてある。


失礼だが、デルみたいな小さな村は地図などには記載されない。だからこうやって村の入口に名前を書いておいて、少しでも他の人たちにこの村の存在を教えたいのだ。


「さて、まずは村長さんに会いに行かなきゃな」


僕は一人でつぶやき、看板をくぐり意気揚々と村に入った。


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


ドドドドドドド。


まさに猪突猛進。村に入ってから直後、広場の向こうから僕の元めがけて走ってくる一人の女の子が見えた。


髪は少し赤みがかったショートヘアーで、顔は中々整っている。顔には、まだまだあどけなさが残っていて、このままなら庇護欲をそそられるが、彼女の高身長がそれを打ち消している。


確か、前は173cmだとか言ってたかな? 僕より高いや・・・・・。


今更ながら、僕がショックを受けている間に、満面の笑みをうかべながら彼女は僕の前に立っていた。


「やぁマナ、久しぶり。3週間ぶりだね」


「ひっさしぶり~!! クロちゃん元気だったかなかなっ? あたしは元気すぎて木端微塵になりそうだよっ!」


と、マナは何故か顔を赤らめてジタバタしはじめた。


コイツ、木端微塵の意味知ってるのか? 明らかに文章と合っていないが、マナとはそーゆー性格なのだ。


「はぁ、マナもそのしゃべり方変わらないね。まぁ、そこがマナらしいっちゃ~らしいんだけどさぁ」


どうも溜息混じりで言葉が出てしまう。久し振りのマナ相手に、早速疲れたのかもしれない。


「んん? どうしたのかなかなっ? クロちゃん元気だしてっ! 大丈夫、犬も歩けば棒に当たるからさ!」


バンッとない胸を張って、爛々と喋るマナ。


あぁ・・・そうだね、犬も棒に当たるかもね。僕も君という出会いに激突しちゃったわけだし・・・。多分マナのしゃべり方は神様にでも頼まなきゃ、生涯絶対に治らないだろう。


「話は変わるけど、マナは何故に僕の元へ走ってきたのかな? まるで僕が村に来るのを待っていたみたいにさ」


「あぁ~、うぅ~んと」


そう曖昧に返事をすると、マナは何か考えこんでしまった。


そして、それから数十秒後、マナは唐突に口を開いた。


「ちょっと、クロちゃんに頼みたいことがあるんだ」


「頼みごと? ふ~ん、いつもは無条件で僕に手伝わせるくせに、一体全体どうした?」


「え? そんな事ないよ? それはただ、クロちゃんなら絶対に手伝ってくれると信じてるからだよ」


う~ん、何か僕のことが扱いやすい男みたいな言葉だ。だけどいつも手伝っちゃう僕はもしかしたら、マナの目からは軽い男として映ってるのかも。


「はぁ、しょうがないなぁ。あまり時間がないけど、僕に出来る範囲なら出来るだけ手伝ってあげるよ」


「え・・・・本当?」


信じてると言ったばかりなのに、何故か疑問形で返された。


「ほんとに本当?」


え? なんだなんだ? 今さっき信じてるみたい事言ってたのに、何故すぐ信用しないんだ?


「もしあたしが、隣の家のミルおばさんが空中でばく転したよ! って言っても信じるくらい本当??」


「うん、本当だって。その隣の家のネイルおじさんが逆立ちしながら空中でばく転したって言われても信じるくらい本当だよ」


自分でも、何言ってんのかわけが分からなくなってきた。


「はぁ~、よかったぁ~・・・」


と、物凄く安心した顔で、マナは安堵の溜息を深くついた。


「? それで、頼みごとの内容は?」


「実はね・・・まだ神木を、採っていなかったりしてぇ~みたいな? 」


「え、まさか神木まだ切り終えてなかったの?」


ここで補足すると。


マナの家系は代々木こりである。だからして当然女の子のマナも継いでおり、木こりが今の職業だ。


この時季になると、さっきも言った通り僕は神木を引き取りに来る。これは毎年行っている事なので、当然ながらマナの家族も、毎年この時期に神木を用意しているのだ。


しかし家系で代々やってきた仕事の依頼を忘れてしまうなんて、これはかなりの驚きとゆうより、驚嘆だった。


「うん、ちょっとこっちで色々あってね」


そう答えて、少し元気が無い顔で、僕に事情を話してくれた。


「お父さんちょっと前から寝込んじゃってね、今回はあたしが切ることになったんだ。でも、最近森が少しおかしくなっちゃってるらしいの。神木の生えている場所が、急に、本当に突然森の奥深くに移動しちゃったらしくて、今結構熱いスポットになってるんだ」


なるほど。僕はマナとの付き合いも長いので、何が言いたいのかはすぐに分かった。と思う。


つまりは、僕に森への護衛を頼みたいわけか。


しかし、マナって結構真面目な話してても無意識に言葉が変になるんだったなぁ。危うく突っ込みを入れるとこだったぞ。


「でもさ、よくそんな危険な状態の森へ自分の娘に仕事を託してくれたね」


これはいささか疑問である、僕が親なら、いや、普通の親なら我が子を危険なとこに行かせるなんて事絶対にさせないはずだ。勿論マナの親がおかしいわけではない。


「えっとね、森がおかしくなったのは本当に最近で、お父さん森の事情を知らないのね。とゆうより教えてないの、だって教えたら絶対に無理を押してでも自分で切りに行っちゃうでしょ?」


確かに、僕の知るマナのお父さんなら、とる行動など容易に想像がつく。もしそんな事になったら、一大事じゃすまないだろう。


「だから、あたしが今回なんとかしたいんだ。代々家が継いでいる家業に泥を塗りたくないの。でも無事に戻ってこれなかったらお父さんやお母さんが悲しむし、あとクロちゃんも。もし、そんな事になったらお父さん、きっと大変なことしでかしちゃうと思うんだよ、猿も木から落ちたり、みたいな」


あのお父さんならきっと大変な行動を起こすだろう、下手したら森ごと村も焼き払ってしまうかもしれない。


「それで、頼れるのはあとクロちゃんだけなんだ。まさに唯我独尊だよ」


「そっか、なるほどねぇ」


ふむ、僕は思考する。丁度神木が必要な時に親が病気にかかり、森に異変が起き、急に神木のある場所が森の奥深くになった。これは少し出来過ぎな感じがする、それともこれはただの偶然か神の悪戯か? だが真意を知る術はない、これこそ神のみぞ知るってやつだ。


「つまり話をまとめると、今日僕はマナに付き添って森へ行き、木を持ち帰る。そして僕はマナに危険が迫ったらマナの身の安全を守ればいいんだね?」


「うん、そーゆーことなんだ。でも無理はしないでね? あたしは危険に襲われても反撃できないからさ」


さらに補足を付け加えると。


マナは森の中じゃ戦闘行為、暴力沙汰をしてはいけない。古くから神木がある森は神聖な領域であり、この村の住人は先祖より、そこでは絶対に争ってはいけない決まり事があるらしい。


つまり森に入れば熊に襲われようが、狼達に周りを囲まれようが絶対にマナは反撃してはいけないのだ。となると、必然的にとれる手段は逃走のみ。


しかしこの近辺の熊や狼達は穏やかで、人を襲うなどそうそうない事だ。だから、その森へ行く時はなるべくこの町出身ではない人、ある程度護身術程度が使える人がいると安心なのだ。


「うん、わかってるよ」


だがこれは今までの森だったらの話だ。話に聞いた今の状態の森じゃ何が起きるかは見当がつかない。護身術程度でどうにかなるならいいが・・・・・。



「ちゃんと私の事守ってね? おいてったりしたら、あの森に火つけちゃうんだからっ!無理心中だよ!」


冗談なのか、本当なのか。やっぱり親子だなぁ、と改めて再確認した。


「さて、僕は明日の夜までに神木を隣街へ届けなきゃいけないから、すぐ森に出発したいんだけど。準備とかは整ってるかな?」


「うんっ。森の入口付近に道具とか置いてきてあるからすぐ出発できるよ、まさに用意周到だねっ」


僕の小さな心配もよそに、マナはちゃんと仕事に慣れていて手際がいい。


「了解、何事もないよう、牧師らしく神様にでも祈っておこう」


そう言って、僕は目を閉じ、首にぶら下げている十字架のペンダントを軽く握った。


目を閉じる瞬間、ふとマナの顔が見えた気がした。そこに写った顔は、どこか薄気味悪く笑ってるようにも見えた。


それはただの気のせいかもしれない、それとも何かあるのかもしれない。だが僕は前者の方を信じてみることにした、だってそれが普通だろ?




「神の御加護を」

初めまして葦原です。


今回初めて書いた小説「憑神」読みは「つきがみ」ですよ

何とも自分の趣味率100%で書かせてもらってますから、物語に変なキャラとか出てもそれは自分の趣味に影響されてるんです。



この作品を読んで、少しでも楽しい気持を感じていただければ幸いです。

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