少し可笑しい死神が異世界に転生
「あ、あの看守さん、何で俺は牢屋に入ってんの?」
「・・・」
「百歩譲って・・・いや譲るのは可笑しいけど、何で手枷じゃなくて布団でぐるぐる巻きにされてんの?これって何かの理論に基づいて」
「うるさいぞ!」
「理不尽だ!」
布団でぐるぐる巻きにされた骸骨、死神のエルカサドール。布団から抜け出そうにも強めに縛られて抜け出せそうにない。布団を押して縛りを破ろうとしても、縛っているのが縄ではなく鎖である。そこだけはしっかりしていた。
どうもできないエルカサドールは右に左にゴロゴロと動いていた。
そもそもエルカサドールはなぜ捕まったのかわからない。もしかして、人間界で女の子とパンツを被って活動していたからなのか?女湯に入ってニヤニヤしていたからなのか?エルカサドールは死神だから憲法なんて関係ない。
エルカサドールは自分の中に記憶を辿って捕まった理由を探していた。そんな時、白い髪に幼い容姿の女の子が背中に透明色な羽を生やして現れた。口を開き、
「捕まったんだね」
冷たそう言った。エルカサドールは、
「いや、あなたは誰ですか?」
「私?私は通りすがりの神様でいいよ」
「ちょっと上から目線じゃないですか?」
「神様ですから」
神様は実在したのかよとエルカサドールは思った、のは一瞬で死神が存在するなら神様も存在するかとエルカサドールは一人納得した。そして、
「それで神様は何で俺の目の前に現れたんですかね?」
「……気分的に?」
「何で疑問形を疑問形で返すんだよ」
「神様に聞くのが悪い」
何で自分が悪いことになってるのとエルカサドールは思った。神様がいきなり、
「異世界に転生してみない?」
「いきなりですね」
「だって今思いついたから」
「本っ当に気まぐれなんですね」
「神様だからね」
神様は関係ないだろと心の奥底でツッコミを入れた。
それより異世界転生。正直興味はある。毎日同じことを繰り返している日々に区切りを付けたいと思っていて、それ以上に一人で自由気ままに冒険したいと思っていた。
神様はゆっくりと口を開く。
「異世界転生だけど君の有無は必要ないよ。だって強制連行だからね」
「え、何で」
「これは実験なんだよ。私の気まぐれでね」
だんだんと神様の声が男の子のような声になっていく。そして、首をギュッと90度に曲げ、にやりと笑い。
「行ってらっしゃい」
エルカサドールは冷静に、
「意味が分かりませ、あ、あーーーーーー‼」
エルカサドールが異議を申し立てようとした瞬間、床が無くなり辺りは真っ黒になった。そして、黒がエルカサドールを包み込み、ゆっくりと時間をかけてエルカサドールを消した。
神様は手で顔を手で撫で落とす。神様の顔は、男の子半分女の子半分の顔になっていた。そして、2つが合わさったような声で、
「私たちは、君の人生を神の名のもとに変えてあげる。自分勝手な思い込みで、思い上がって、直ぐに他人を見下すような人間に、変えてあげる」
そうエルカサドールが落ちた方を向いて呟いた。
・・・
エルカサドールは目を覚まし辺りを見渡した。そこは生い茂る森の中だった。
下にあった水溜まりで自分の顔を見る。そこには、程よく整った顔立ちに銀髪の人間がいた。チャームポイントは目の下のクマだろう。やる気がない感が漂っている。
「俺は人間になったのか」
そう思うとともに神様とは気が利かない生き物だと思った。
なぜなら、エルカサドールは未だ布団にぐるぐる巻きにされた状態だからだ。
どうも二作とも凍結中で、新作に手を付けたバカ作家の立花 銀千夜です。ご愛読いただきありがとうございました。楽しんで頂ければ幸いです。