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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ありがとう

作者: 小織 真水.

あなたに

君に

ありがとうを伝えたい。

先生からそれを聞いた時は何も言えず、ただ呆然としていた。

冗談で言っているなら、ドッキリなら、怒らないからそう言って欲しかった。

病室へ入り、タオルにくるまっているのを見て。

奥さんが泣いているのを見て。

本当なのだと、冗談でも嘘でもなく。

ベッドで横になり泣いている奥さんの脇に行った時には僕の顔もくしゃくしゃだった。

ただ、ひたすら泣いた。

現実を受け入れられず、僕らは泣いていた。


先生に声をかけられ、泣き崩れていた僕は立ち上がり、奥さんを見ると、僕を見ていた。


その目にはもう涙はなく、泣くのを堪えながらも必死に顔を引きつらせながら、笑顔を見せてくれた。

この人らしい笑顔、強がりな笑顔。強い人。

この日の僕は、涙が止まることはなかった。


すぐ奥さんが退院し、子供の葬儀を行った。


僕の隣を歩く奥さんは前を向いていた。

今後の事を真剣に考え話し合いをした。


毎年御墓参りをしよう。

子供はまだ諦めない、でもまだまだ怖い。


私はあなたと一緒で良かったと思ってる。

私はあなたに出会えた事を感謝している。

私はあなたと一緒だったからここまで来れた。

私はあなたと一緒だったらどこまででも行ける。

私は…。


話し合いにならない。

僕はただひたすら泣いていた。

頼りなくて、泣き虫で、弱くて。


この人は僕を…。

だから、僕も今まで以上にこの人を…と決めた。



僕らはこの声を聞きたかった。

必死に願った、これまで僕なりに必死に支えてきた。

僕も強くあろうと決意したあの日から。


産声を聞いた僕は泣いた。

今度は悲しい涙じゃない。


病室に入ると奥さんの横に寝かされて鳴いている。

近寄る僕を見て、奥さんは言う。


「あなたを好きでいて、信じていて、一緒にいて良かった。ありがとう。」と

「僕もだよ。一緒にいてくれてありがとう。これからもよろしくね。」と


私はずっとあなたに憧れていた。

こんな事は恥ずかしくて絶対に言えないけど、一緒にいて、付いてきて、支えてもらって、好きでいて、愛して良かった。

君はずっと僕の光だった。

明るく元気で強い、僕の光。

君を好きになって、僕を好きになってくれて、愛してくれて、愛せて良かった。


私を変えてくれたあなたに

「ありがとう。」

僕に光を与えてくれた君に


そして、

「生まれてきてくれてありがとう。」

読んでいただきありがとうございます。

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