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二人の異世界人

プロローグにつながる話までは、もう少しかかります。


よし、落ち着こう。落ち着いて状況を整理しよう…。

しかし整理するにもなにもコンビニの出入り口から出ただけだ。

もしかして夢?出入り口から出た瞬間に車にでもはねられて、実は病院のベットの上で夢見てるとか?

そうだ、そうに違いない!


なぜかそんな結論に至った俺はほっぺを抓ってみる。


「いたい…。」


---


それから何時間たっただろうか。

いや、正確には1時間もたっていないのかもしれない。

身に着けていた腕時計はこの草原に来てから動いていないようだ。

ポッケに入れていたはずの携帯電話は行方不明。Tシャツとジーパンとパンツと靴下と靴と動かない腕時計、今の俺の装備だ。


しかしどうしよう。

このままずっとここにいるわけにもいかない、だからと言って動くのも怖い。

そもそも状況が俺が考えられるレベルを超えている。

よし、決めた。一日はここにいよう。

日が沈んで、もう一度太陽が真上に来たら動こう。そうしよう。

天気もいい、風も気持ちいい、そして見渡す限りの草原。

お昼寝にこんなにも適した環境があっただろうか。否、ない。

やることも決まったことだし、とりあえずリラックスしよう。

ここに来てから気を張り過ぎて少し疲れた。


自分の中で一段落つけた俺は、その場に大の字に寝転がる。

目を閉じると風の音が気持ちいい。

鳥の鳴き声なんかも聞こえて、生き物がいることに少し安心する。

遠くから聞こえる馬の足音。

パカラパカラとリズムよく聞こえてくる音は子守歌のようだった。


「――って馬の足音!?」


半分寝かけていた俺だが流石に飛び起きた。

足音が少しずつ大きくなってくる。確実にこっちに向かって来ている。

ここは見渡す限りの草原だ、隠れる場所なんてない。

それは向こうも同じだ。遠くに点が見えていただけだったのが、徐々にはっきりと見えてくる。

馬だ。ほんとに馬だ!!

数にして20頭程の馬がこちらに向かって走ってきている。

しかもだ、しかも、だ。

馬には人がまたがっている。

そこまではまあ、さすがの俺でも予想できたんだが、その全員が鎧を着ているんだ。

いや、後ろの何人かはローブのようなものを着ているか?

んでもって鎧の奴らは見事なまでのフルプレート。頭の上に赤い羽根の装飾なんかしちゃって。

今の俺から見れば怖いの一言でしかない。

怖い。怖すぎる。

心臓の音が聞こえる。体が脈を打っている。

どうする?逃げるか?いや、どこにだよ!!

そんな自問自答を繰り返している内に、馬にまたがった鎧連中らはすぐ目の前まで来ていた。

「全員止まれ!」


先頭を走っていた男(顔が見えないから断言はできないが今の野太い声的に男だろう)が、大きな声で一言叫ぶと見事なまでに20頭近くの馬が止まった。


「クロウリー殿、このお方で間違いないでしょうか?」


鎧の男が後ろにいたローブの一人に話しかける。

話しかけられたローブが鎧の男の隣まで進んできた。


「はい、ブラッドリー殿。予言通り今日、ここグラントレ大草原に我々には見慣れない姿で現れたことが何よりもの事実。このお方が、予言の勇者様で間違いないかと。」


クロウリーと呼ばれた老人がそう答えると、鎧の男が一言、わかった。と答え馬から降りた。


勇者…?俺に言ってんのか?

ていうかクロウリーだの、ブラッドリーだの、名前が明らかに日本人じゃない。

鎧のほうは顔が見えないからよくわからないが、老人のほうは確かに日本人顔ではなかった。

それにしては日本語流暢すぎるな!


そんなことを考えていると鎧の男が俺の前まで歩いてきて頭の兜を外し、跪いた。


「初めてお目にかかります。わたくし、ノーブルム王国騎士団団長、ブラッドリー・ルミナートと申します。失礼ですが勇者様、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」


え、何この人!いやブラッドリーさん!!

跪いて俺の事、勇者様とか言ってるよ…。

しかもノーブルム王国?どこだよそれ。

とりあえず誤解は解いておかないとな…。


「あ、初めまして。俺の名前は大瀧晴っていいます。あの、顔あげてください。俺は勇者とかそんなんじゃないですから。バイトが終わったあと店から出たんです。そしたら気づいたらここにいて、できれば帰り方何かを教えてほしいな、なんて。」

「オオタキ・ハル様ですか!さすがは勇者様。名前も素晴しい。バイトとやらが何か知りませんが、帰り方ならお教えすることができるでしょう。クロウリー殿。」


帰り方がわかると聞いて一安心。

クロウリーさんが話してくれるみたいだ。


「ハル様、お初にお目にかかります。クロウリー・エミリーノと申します。ノーブルム王国で王宮魔術師をやっております。帰り方の前にハル様には色々と伝えなければならないことがございます。よろしければ私共と一緒にノーブルム王国まで来てくださいませぬか?」

「王国に行けば帰り方がわかるんですか?」

「はい。わかりますとも。帰り方だけではなく、ハル様が今置かれている状況もすべて分かるかと。」


俺が今置かれている状況?訳が分からない草原に一人。

日本人とは思えない人たちに囲まれて勇者と言われる。

聞いたこともない地名まで言われちゃって混乱しかない。

しかし、このおじいさんは王国に行けばすべてがわかると言っていた。

小さい頃、母親に知らない人について言ってはダメよと、言われたことを思い出す。

だか今回は仕方がない。

何もしないでここに留まっていても仕方がない。

ここが日本じゃないとしてもとりあえず今は情報がほしい。そう決めた。


「わかりました。王国に行きます。案内お願いします。」



---



パカパカパカと馬の足音が心地よい。

馬の乗り心地も……まあ、悪くない。

ただ、一緒に乗ってる人がなぁ、お爺さんなんだよなあ…。


「おや、ハル様、顔色が悪いですな。どうかされましたか?」

「いえ、なんでもありません。大丈夫です。そんなことより、ブラッドリーさん、クロウリーさん。その『様』って付けるのやめてもらっていいですか?さっきも言いましたけど俺は勇者なんかじゃないんですよ。」

「ははは、まあ、まあそこらの話は王国についてから王自ら話があるでしょう。ハル様も話を聞けば納得するとおもいますよ。」


なんだかなあ、こんなんじゃ一人で草原に取り残されたときと状況の良し悪しはあんまり変わらないんじゃないかと思えてくる。


2日程野営をした。みんな俺にはよくしてくれる。

そこに不満はないのだが、何か質問をすると、王国につけばすべて分かりますよ。の一言でかたずけられる。

仕方ない、今日の昼頃には王国に着くそうなので、もう少し我慢しよう。

そんなことを思っていた矢先。


「ハル様、見えてきました。あれが我が国、ノーブルム王国にございます。」


ブラッドリーさんが指をさす方向を見ると、思わず、うおっっと声が出た。

まず目に入ったのがバカでかい門だ。木製のでっかい門。

高さ3メートルくらいはあるんじゃないだろうか。

あんなの映画とかでしか見たことがないぞ…。

そして城壁。全部石造りでおそらく王国を囲んでいるのだろう。端が見えない。

城壁の高さは軽く5メートルはありそうだ。

なのに城壁からはみ出して見えるものがある。あれも映画やアニメでしか見たことがない。城だ。

高すぎて城の頭がはみ出してしまっている。本当に映画の世界に迷い込んでしまったみたいだ。


「ははは。ハル様の世界ではああいった建造物は珍しですかな?」


は?俺の世界?このおじさん何言ってるんだ?

そんなことを思ったが、目の前に広がる景色に唖然としてしまって聞き流した。


「全員止まれ!」


しばらくして門前についた。

ブラッドリーさんの叫びで再び全員が止まり、ブラッドリーさんは門の上の城壁にいる兵士と何やら会話をしているようだ。

ブラットリーさんが話を終えると、重い音と共に門が開き始めた。

俺はかなり緊張していたが、俺の緊張とは裏腹に馬は門の中へと歩を進める。





次話から急展開になると思いますがお許しを…。


感想やアドバイス等、お待ちしています!

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