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11日目。

11日目。



ちりりりり、ちりりりり


ちりりりり、ちりりりり


目覚まし時計が部屋中に鳴り響く。


まだ、二人、布団の中。


ちりりりり、ちりりりり


ちりりりり…


音が突然止まる。


気配を感じる。


カーテンとカーテンの隙間から日差しが入っている。


リリリン、リリリン


リリリン、リリリン


スマホの鳴る音。


うーん…


私は、目を開く。


私の腹の辺りに手がある。


彼の手だ。


反対側を向いた。


まだ、目が開いていない彼が寝ている。


私が布団から身を出そうと動くと、その腕は、動く。


「うーん…」


ぎゅーっとする彼。


そのせいか、彼の腹の辺りにぴたりと顔が。


近い。


私は、再び、そこから動こうとした。


そっと、抜け出す。


「ねえ、起きて…起きて…」


身体を揺らす。


「うーん…」


「起きて…ねえ、起きて…」


すると、私の手を引っ張る。


彼の顔と私の顔の距離があと3センチメートルくらいで触れそう。


ドキドキ。


心臓がうるさい。


ドキドキ。


ドキドキ


私の中で響き渡る。


そんな状況でいると、彼は目を開く。


「おはよー」


「…おはよう」


更に1センチメートルくらい近くなる。


顔が真っ赤になる私。


秒針が微かに耳に入る。



「トゥルルル、トゥルルル」


彼のスマホが突然、鳴る。


びっくりした


二人して、そんな顔をし、彼は、電話に出る。


「はい、はい、はい…わかりました」


電話が切れる。


「ごめん…朝食、作れなくなっちゃった」


「…うん」


彼は、急いで支度をし始める。


私は、コーヒーをセットして、


「飲む?」


「うん、ありがとう」


コーヒーを喉に通し、口に含ませた。


一杯、飲み干し、鞄を手に持ち、


「じゃあ、行くね」


焦るが、


「あっ!」


「え?」


私の頰に彼の唇が触れた。


「行ってきます」


手を少し上がるものの、呆然としたまま、顔が赤くなった。


ドキドキ


ドキドキ


慣れない。



私は、支度をし始め、家を後にした。


自分の席に着くと、後輩の朝井くんが来た。


「おはようございます、ゆきさん」


「おはよう」


彼も自分の席に着き、仕事を始めた。


私は、パソコンと向き合い、仕事に励んだ。


打ち込む。


打ち込む。


打ち込む。


仕事をしていた途中だった。


あることを思い出してしまった。


顔がニヤニヤとしてしまう。


頭から離れなくなる。


顔が真っ赤になってしまう。


彼とのベットの上での顔の近さ。


あと、1センチメートルくらいで触れそうだった感覚。


思わず、ニヤニヤとなる。


やばい。


やばい。


仕事にならない。


全然、集中できない。


そればかりが頭から離れず、苦戦した。


心臓もドキドキ。


止まらない。


一度、休憩しようと、席から立ち、自販機に行った。


コーヒーを買う。


席に戻り、コーヒーを口に含ませた。


ベットの上での顔の近さがまだ、消えない。


ニヤニヤ。


やばい。


ドキドキ。


やばい。


なんなんだ!



結局、1日、仕事に集中することが出来ず、帰宅した。


でも、いつもの何も変わらない帰り道のはずなのに、なぜか、全然、知らない道を通っているような。


ドキドキ。


彼とのあの顔の近さ。


ドキドキ。


また、思い出してしまった。


ニヤニヤ。


ドキドキ。


何これ!


心臓が高鳴る。


ドキドキ。


頭から1ミリも離れない。



家に帰ると、まだ、彼は、帰っていなかった。


風呂掃除や部屋の掃除を何故か、し始めた。


すると、暫くして彼は帰って来た。


「ただいま」


「…おかえり」


そう玄関まで行き、私がその答えを返すと、私を突然抱きしめた。


私の髪を撫でるように、私の頭を撫でる。



数分経って、


「よし!作ろうか!」


キッチンに立つ。


黙々と作り始める。


「あっ、テレビでも見てて」


私は、リビングに行き、テレビを何となく付け、見始めた。


モノマネの番組だったらしく、直ぐに夢中になってしまった。


しかし、暫くして、テレビに夢中になっていた筈の私は、鼻がぴくぴくと動く。


くんくん。


犬かって。


部屋中にいい匂いが漂っている。


もう、方向性がキッチン。


それから、15分が経って、


「夕飯、出来たよ」


そう声をかける彼。


テーブルの上には、既に、黄色のふわふわとした卵のが載ったケチャップの鳥のチキンが入ったオムライス。


ミニトマトやキュウリ、レタス、ツナの入ったサラダ。


玉ねぎとほうれん草の入ったオニオンスープ。


見た目は…


100点。


「どうぞ」


私は、椅子に座った。


いい匂いだ。


彼も椅子に座り、


「いただきます」


手にスプーンを持ち、オニオンスープを口に運ぶ。


絶妙だ。


100点満点。


美味しい。


「美味しーい」


大声を上げてしまうくらい、美味しい。


次に、オムライス。


やはり、卵はふわふわ。


美味しい。


これは、絶妙だ。


美味しい。


顔にはっきりと出てしまう。


「美味しい?」


「うん!」


顔に出ているのをわかった彼は、私を見て微笑む。


彼も手をつけ始め、今日の夕食も終了。


そして、風呂も済ませ、布団の中に二人、入る。


ドキドキ。


就寝。


ドキドキ。


人影が近い気がする。


振り返ったら、直ぐそこなのだろうか。


壁側を向いてそんなことを考えてしまった。


そのせいなのか、心臓が激しくなっていく感じである。


彼に聞こえそう。


私の中で響き渡っている。


ドキドキ。


ドキドキ。



その夜、月だけはそんな私を見守っていた。

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