初めてのデート
それから、1週間が経った。
少し慣れ始めた、君の隣。
手を繋ぐことや抱き締められることとかは、まだ、慣れないけど。
「明日、デートしよっか」
家に帰宅した前日の夜、二人で夕飯を食べていた。
きのこやピーマンの入ったトマトソースのパスタに、キャベツや玉ねぎ、ベーコンの入った野菜スープ。
野菜の甘さが染みっており、美味しい。
パスタも茹で具合がちょうどよく、トマトソースなのに、トマトの甘さが引き立っている。
まるで、イタリアンレストランで食べているみだいだ。
美味しい。
「美味しい…」
思わず、口から溢れる。
微笑んだ彼。
「だろ?」
「…うん」
しかし、私は…
お皿の端っこに、ピーマンを避ける。
それに気付いた彼は、
「好き嫌いすんな」
「…」
ピーマンを混ぜるのだ。
「あー!」
すると、突然、
「あーん」
え?
空気が一瞬止まる。
「あーん」
心臓がどきどき動く。
「いいから、あーん」
ピーマンとパスタを載せたフォークを私の口元に近づける。
「ほら、あーん」
渋る私。
口を小さく開ける。
流石に、恥ずかしくなり、口元のピーマンとパスタの混ざったものを彼により、口に入れられた。
「どうですか?」
「…」
「じゃあ、更に、美味しくなるように」
そう言い、彼は、フォークに載ったピーマンを自分の口に運んだ。
一瞬のことだった。
え?
顔が真っ赤になる。
「どう?」
「……おいしいです…」
彼の顔も真っ赤だった。
ごほほん、
嘘っぽい咳払い。
沈黙の気まずい空気が漂う。
静かに流れる秒針の音。
心臓の音がどきどきと大きくなる。
暫くして、
「あっ!そうだ!」
何かを思い出したかのように、口を開く。
「明日、仕事?」
赤い顔のまま、彼の顔を見ることが出来ず、下を俯いた状況である。
「うん?」
「え?」
「明日、仕事?」
「いや…休み…」
「そっか…」
なぜか、緊張感が走る。
しかし、突然、一瞬にして、その緊張感が一気に吹き飛んだ。
「明日、デートしよっか」
「え?」
「じゃあ、10時な」
「え?」
更に、心臓がどきどきと鳴る。
ワクワクとして来る。
交差する心臓の音。
「え?」
「わかった?」
私の頰を少し引っ張る。
微笑みながら。
「…はい…」
頰から手を離す。
そして…
当日は、来た。
「うーん…」
カーテンが開けられており、日差しがちょうど、私の顔に当たった。
目を開け、隣を見ると、彼はいなかった。
「うん?」
部屋中にいい匂いが漂う。
テーブルの上には、皿に載った目玉焼きや豚のヘラベッタイ唐揚げ、シメジとほうれん草の味噌汁。
目玉焼きの黄身がトロトロとしており、柔らかい。
豚のヘラベッタイ唐揚げも少し柔らかめで美味しい。
身体に染みるシメジとほうれん草の味噌汁。
ほうれん草の甘さが引き立っており、シメジの香りと合っている。
美味しい。
「美味しい…」
思わず、発してしまう言葉。
「だろ?」
照れたような微笑みで。
「食べたら、行こっか」
「…」
微笑み、私の頭を撫でる。
支度をお互いに終え、二人で家を後に、歩き始めた。
少し歩き始めると、彼は、ポケットから、手を出し、私の手を握る。
その手をポケットに入れる。
心臓がどきどきと鳴らっぱなし。
微笑んでいる。
少し照れている感じが伝わる。
私は、顔が真っ赤になり、下を見てしまう。
二人で長い間ゆっくりと歩いた。
心臓の音が聞こえているのではないかと感じる。
どきどき。
風は、あまり吹いてなく、静かである。
気がつくと、いつの間にか、映画館の前に来ていた。
チケットは、買ってあるらしく、中にそのまま、入っていった。
私が見たいと思っていた映画だった。
内容は、恋愛もの。
久し振りに会った二人。
でも、彼にも彼女にも相手の人がいる。
だけど、当時のお互いの気持ちや想いがすれ違っていたことを知り、心が揺れ始める。
相手の人には、内緒でお互い頻繁に会うようになる。
危機と暖かい恋愛の話である。
内容は、全然入って来ない。
彼は、映画を見ていた途中、私の手に触れ、手は繋がれる。
その状態で見ていた。
どきどき。
心臓がうるさい。
映画が終わり、映画館を出た。
「よかったな」
「…うん」
映画について話していた。
次に引き連れられてやって来たのは、街中。
二人で歩いた。
どきどき。
何なんだ。
この幸せは。
ドッキリじゃないのだろうか。
横にあった店がなぜか、目に入った。
思わず、彼の手から離れ、
「かわいい」
そう口から出た。
すると、彼が後から来て、
「欲しいの?」
「え?」
更に続けて私は、
「いや…」
焦る。
それは、アクセサリーだった。
普段、私は、しないのだけど、たまに見てしまう。
結局、見るだけで、終わりだか。
そのアクセサリー屋から彼に聞かれ、離れた。
服屋も色々と気になり、見てしまった。
結局、何も買わず、家に帰った。
どきどき。
どきどき。
心臓が私の中で響いている。
デートの帰り、夕飯は、洋食屋さんに入り、私は、オムライス、彼は、ハヤシライス。
卵がトロトロでふんわりとしており、ほっぺが落ちそうだった。
「どっちが美味しい?」
突然、彼は、そう聞く。
「うーん…翔さんのほうかな」
照れたようだった。
彼は微笑んだ。
「よかった」
家に帰る途中、彼は、そっとポケットの中に私の手を入れた。
手を握ったまま。
この距離に慣れない。
電気を消そうと、寝る前のこと。
「ちょっと、待って」
そう彼は言い、一瞬だった。
そっと、彼の唇が私の唇に触れた。
2度も。
2度目は、もっと触れている時間が長かった。
そのまま、
「おやすみ」
布団に潜り込む。
ドキドキ。
その夜は、心臓が興奮して、なかなか、眠りにつけなかった。
今日は、星が雲に隠れて見えなかったが、月だけは、それを見ていた。