3日目
3日目。
今日は、目覚まし時計よりも早く起きた。
5時半を時計は、指していた。
布団から身を出すと、まだ、隣で眠っている。
まだ、慣れない隣。
違和感のある隣。
うれしいけど、不安になる隣。
目覚めがよく、コーヒーを機械にセットして、カップに注いだ。
はーぁ
息を吐く。
ヒーターを点けたが、まだ、暖まらない部屋。
寒い。
カーテンからまだ、日差しが通らない。
コーヒーを一口、口に運び、喉に通す。
温かい。
そんな静かな朝を送っていた。
すると、鳴り出す。
りりりり、りりりり
りりりり、りりりり
部屋中に鳴り響き出す。
その音を辿ると、まだ、布団に入って眠っている顔の横で鳴っている。
その時間は、6時になる15分前だった。
部屋中に鳴り響いていても、布団から身を出さない。
「うーん…」
もぞもぞとし始める布団の中。
私は、コーヒーを口に運び、喉に通し、息をついた。
「ねえ、ねえ…」
もぞもぞとは、するものの、顔さえ出て来ない。
「ねえ、ねえ…」
再び声をかける。
起きない。
また、その音は、鳴り出す。
りりりり、りりりり
りりりり、りりりり
2度目のその音で目を開ける彼。
その音は、直ぐに止められ、彼は、布団からまだ眠そうな目を擦って、布団から身を出した。
そして、支度をし始める。
「コーヒー、飲む?」
そう声をかけると、
「うーん…」
曖昧な返事をし、用意したコーヒーを喉に通す。
それから、タバコを取り出し、一服し始める。
灰がちらちらと散っている。
タバコを終えると、コーヒーを手にし、口に運び、再び、喉に通した。
はーぁ
息をするつき、
家を出ようすると、何かを忘れたような仕草。
「どうしたの?」
そう声をかけると、
「忘れ物!」
そう言い、暫く、私をギューっと抱き締め、顔を見合わせ、私の頰にゆっくりと、彼の唇が触れた。
もう一度、抱き締める。
「行って来ます」
微笑みながら、家を後にした。
本当に夫婦みたい。
顔が林檎のように、まだ、真っ赤である。
まだ、慣れない頰に触れた瞬間。
数時間経ち、私も家を後にした。
仕事場に行くと、席に着き、パソコンの電源を付け、仕事を始めた。
仕事をまだしていると、後輩の朝井ヒロくんが来た。
「先輩、一緒に、食べません?」
包みを持った彼。
私達は、食堂まで行った。
席にお互いに着くと、
「先輩、いつも、お弁当なんですか?」
「え?」
「まあ…」
包みをお互いに開く。
お弁当箱の蓋を開けると、マヨで味付けされた人参サラダや、じゃがいもや玉ねぎ、こんにゃくなどが入った肉じゃが。
他にもふわふわとした玉子焼き。
玉子焼きは、いつもよりも更にふわふわである。
じゃがいももお肉もこんにゃくも柔らかい。
味付けもよく、ちょうどいい。
美味しい。
美味しい。
「先輩の美味しそうですね」
「まあ…」
彼は話してくるが、会話は続かないまま、終えた。
家に帰る途中。
電車が直ぐ側を通る。
咲いていた花が輝いて見えた。
そのまま、歩いていると、彼を見つけた。
「しょ…」
言おうとしたが、驚かそうと、少しずつ、近づいて行った。
そっと。そっと。
なかなか、気づかないもんなんだなと思った。
近くなり、彼の目を隠そうと手を伸ばす。
すると、バレてしまった。
「あーぁ!」
彼は、
「俺が気づかないとでも、思った?」
「気付いてたの?」
「うーん…どうかな?」
そのまま、歩き続ける。
彼は、私の歩幅を合わせているようだった。
ズボンのポケットから、タバコの箱を取り出した。
そして、箱から出し、一本、口に加え、ライダーで火を付けた。
ふーぅ
煙を吐く。
「あっ!そうだ!仕事の休みの日、デートしよっか」
「え?」
直ぐに、答えを変え、
「…うん」
微笑みながら。
彼も微笑んだ。
心臓がどきどきと動いた。
それから、私の手を握り、歩いた。
心臓が更にどきどきと動く。
彼の手は暖かった。
その歩いている夜空の星は、いつもよりも、きれいだった。
その手は、離れないまま、繋がれていた。