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1日目

始まりの初日。



驚いた顔をしている私に、


「どうしたの?」


心配そうな目で見ている。


ただ、私は、目を見開いて呆然としていた。


頭が真っ白である。


自分の目を疑うばかり。


すると、そんな私の頰を彼は、軽く、引っ張ってみる。


頰は伸びている。


夢ではない。


え?


まだ、信じられていない。


え?


どっきりなら、早く、"ドッキリでした"って看板を持って現れてほしい。


彼は、私の頰を引っ張ったままである。


「ねえ…ねえ!」


ハッとした。


「え?」


思わず、声に出る。


「朝御飯で出来たよ!」


「え?」


いい匂いが部屋中に漂う。


鼻がぴくぴくと動く。


いつの間に。


「ねえ、食べよう!」


やっと、私は、その状況に戻り、現実を知った。


もう、考えてもわからない。


いいや。


テーブルの上には、いくつかの皿やガラスの透き通ったコップなどが置かれている。


部屋中にやはり、匂いが漂っている。


すごい。


「すごい!」


口に出た。


彼は微笑んだ。


「翔さん、料理できるんですね」


「出来ないって思ってたの?」


私は、焦る。


「いや、いや…」


「俺、一人暮らししてたから」


「へーぇ」


「へーぇって、何だよ!」


彼は、微笑んでいる。


少しすると、


「食べようか」


美味しそうだ。


「いただきます」


ベーコンとスクランブルエッグが載った皿に手をつける。


箸で掴み、口に運び、含ませた。


咄嗟に思わず、


「美味しい…」


少し照れながらも、


「だろ?」


「うん」


次に私は、味噌汁を口に含ませる。


わかめと豆腐が入っている。


味噌汁も、しょっぱくなく、美味しい。




食べ終わり、私は、寛ぎ始める。


「俺、13時から、仕事あるから」


「仕事?」


そう言って私は、続けて口を開いた。


「あっ!そっか…」


彼は、手を私の頭の上に乗せ、


「いい子にしててね」


まるで、ネコとかを撫でるように。


「私、ネコじゃないよ」


そう言うと、彼は、微笑んだ。



アパートで、私は、こっそりと黒ネコを飼っている。


そのネコは、仕事の帰り、雨が降っていた日。


ミャーミャー


ミャーミャー


悲しそうな声で鳴いていた。


それで、思わず、ほっとくことが出来なかった私は、拾ってしまったのだが。


ネコの癖に人懐っこく、自分から私のところに来る。


そして、寝る時も、布団の中に入って来る。


暖かいしいいのだけど、布団が毛だらけに。


彼もそのネコを可愛がっており、直ぐに懐いた。



彼は、微笑み、私の頭を撫でた。


時間になり、彼は、


「行ってきます」


そう言い、一度ドアを開ける。


しかし、


「ゆき!来て!」


「え?」


そう言い、私は、行った。


「どうしたの?」


「忘れ物!」


「え?」


私がそう言うと、同時に彼は私の頰に唇を合わせ、触れた。


私の頰から離れ、


「行って来ます」


顔が近い状況で、目と目が合い、顔を見合わせ、少しすると、微笑み、行ってしまった。


私は、顔が赤くなる。


林檎のように真っ赤に。


だんだんと暑くなっていく。


なかなか、その状況が頭から離れなかった。




仕事から彼は、帰って来た。


部屋は、灯が点いている。


ヒーターもついたままである。


私は、仕事から帰ってくる彼を待っていたのだが、ソファーの上で、ぐっすりと眠ってしまっていた。


テレビは、自動的に消えた模様で、下のほうが赤く光っていた。



ソファーの上で眠りについている私を布団に運び、布団をかけた。


暫く、彼は、そのまま、私の横にいて、微笑んでいた。


そして、私の頰に触れた。



外では、冷たい風の音が吹いている。


月がはっきりと空には、あった。

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