表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/17

始まり

胸が苦しい。


もう、疲れた!


やめたい!


君を好きでいることが…




君への想いに気づいてから2年が経つ。


辛いけど、なぜか、未だに、君の顔が頭の中にある。


毎日、どうしても浮かび上がり、出て来てしまう。


笑った顔とか、少し冷たい顔とか。


想いは、消えるどころか、だんだんと膨れ上がってしまう。



だけど、彼の顔を見た瞬間、そんなこと全部が不思議と元々なかったかのように、どこかに、吹っ飛んでしまう。



いつも帰り道の夜空の下で思う。


星空を見上げながら。



やっぱり…





「好き」


思わず、口から出てしまった。


そう言ってから、直ぐに、


あっ!


そう、思った。


後悔した。


え?


彼は、そう、困った顔をして言う。


間違った!


間違った!


私は、首を振る。


違う!


違うんだよ!


やばい!


なんか、目から涙が溢れ出そうである。


想いまでがどんどんと膨れ上がる。


心臓がドキドキと動いている。


だんだんと、激しくなっていく音。


駄目だ!駄目だ!


絶対に駄目だ!


頭が白くなる。


咄嗟に私は、後ろを振り返り、走り出そうとした。


聞きたくない。


何も聞きたくない。


耳を両手で片方ずつ塞ぐ。


冷たい冬の夜の風で巻かれたマフラーがふらふらと揺れる。


夜空の星が一生懸命、キラキラと輝こうとしている。


一瞬だった。


ドン!


激しい音。


その音が空へと響き渡っていた。






ゆっくりと目を開け、目を覚ました。


窓からは、日差しが顔を出している。


布団から上半身を出す。


座った状態である。


自分の部屋のベットの上にいた。


辺りを見渡す。


白い小さなソファーがあり、小さなテレビ、何百冊も並べられている本棚。


真っ暗で、カーテンの青色。


茶色のカーペットが敷かれた床。


テーブルの上には、2、3冊の本。


確かに自分の部屋だ。


え?


身体にも手にも足にもどこにも傷一つなかった。


え?


え?


戸惑う私。


布団を急いで、剥ぐ。


私は、驚いた。


足が斜め右にあるから。


私の足ではない。


足から先まで辿る。


え?


え?


何度も自分の目を疑う。


思わず、口に出てしまう。


口を抑える。


え?


なんで…?


これは、夢なのだろうか。


すると、その足は、うずうずと動き出す。


ワンワン、ワンワン


近所の犬も吠え出す。


すると、突然、スマホが部屋中に鳴り響く。


トゥルトゥル、トゥルトゥル


トゥルトゥル、トゥルトゥル


部屋中に響き渡る音。


その手は、動いた。


「うーん…」


向きを変えた。


そして、目が開く。


私に顔を見せる。


呆然と目を見開いた私。


「おはよう」


「…」


え?


言葉が出て来ない。


え?


戸惑ったばかりの私。


「どうしたの?」


そんな優しい顔…


初めて見た。


呆然としてしまう。


彼女さんには、こんな顔をするんだ…


なんか、違う。


私が好きな先輩じゃない姿。


心の中で色々なことを思った。


「どうしたの?」


「…」


心配そうな顔で私を見る。


だけど、私は、言葉が口から出て来ないのだ。


私の黒い目ん玉が泳いでいる。


もう、動揺を隠せない。


え?


なんでだろう。



これは、何かのドッキリなのだろうか。


そのうち、これは、"ドッキリでした"と誰かが旗を持って現れ、"ドッキリ大成功!"みたいな。


それとも、これは、ただの寝ている私が涎を垂らしながら、幸せな夢を見ているのだろうか。


そんなことを考えている私に、


彼は、心配そうな顔をして私を見ている。


でも、私は、呆然としたまま、座り込んでいるだけだった。



そして、彼との日々は、始まる。


だけど…


幸せすぎて怖い。


このまま…


ずっと…


幸せな時間がそう長く続くはずもなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ