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金曜日の夜の憂鬱

「部長、今日もお疲れ様でした」

 とある金曜日の夜、わが社の人事部は部全体で飲み会だった。人事部に配属されて一年目、この部で初めての飲み会に参加するおれは佐藤部長にビールを注いでいた。

「山田、ビールを注ぐときはラベルが上だ。そんなこともわからないのか?」

 佐藤部長はおれのビールの注ぎ方についてそう言った。

「あ、はい。すみません……」

 おれは注ぐのをいったんやめて、瓶をくるっと回してラベルを上にして、それからまた部長のグラスにビールを注いだ。

「まったく、営業部から来たやつはこれだから」

 営業部は言う。正直ムカッとする。営業部が悪いみたいじゃないか。おれの古巣を悪く言うな。


 人事部一年目のおれは佐藤部長が苦手だ。

 佐藤部長は女性ながら驚異のスピードで人事部部長に出世したエリートだ。聞いた話では、おれなんかじゃ行けないような頭のいい大学を出た後に、それだけじゃ飽き足らずどこぞの国の有名大学に留学して、この会社に入社したらしい。

 よくいえば、ばっりばりのキャリアウーマン。 すごいスピード出世アラフォーだ。 でもおれにとっては恐ろしいお局様でしかない。

 部長の外見は、まあまあといったところ。良くも悪くもない。ただし顔つきが険しい。人間性格が尖ると顔も険しくなるって聞いたことがあるから、間違いなく性格尖ってる。でも服装はいつもちょっとおしゃれなスーツを着てる。それなりに外見には気を使ってるのだろう。

 部長の仕事ぶりが厳しいのは、会社中で有名な話。

 人事部だからもちろん新卒採用の面接をするのだが、部長はとある男子大学生の最終面接で彼を泣かせ、社長が慌てふためいてなぐさめたという恐ろしい事件を起こした。泣かされた彼はエントリーシート、一次二次面接を見てみると、とても有能な学生だったのだが、最後の最後に落とされた。まあ、泣かされたというトラウマを植え付けられた会社でなんて働きたくないよな。

 そんな恐ろしい部長におれはお酌をしてる。なんでおれがしなきゃいけないんだ。一年目の洗礼というやつか?

「ビールはもう飽きた、芋焼酎を頼め」

 部長に二杯目のビールを注ごうとしたとき、そう言われた。しかも顎で使ってだ。

「はい、そうします」

 本当にこの人怖い。

「すみません、芋焼酎を……えっと、なにで飲みますか?」

 居酒屋の店員さんに頼んだときに、はっと思い出したのだ。芋焼酎の飲み方が何種類かあることを。おれはそれを部長から聞かずに頼んでしまった。

「ロックだ、そんなことも知らないのか」

 不機嫌そうに部長は言う。

「はい、かしこまりました」

 店員さんはマニュアル通りのスマイルで注文を承った。

「山田、わたしの芋焼酎の飲み方はロックだ。そんなことも知らないのか」

 初耳だ! 知るわけないだろ!

 そう叫びたかったけど、そんなことされたら首が飛ぶ。人事部長の権限で飛ぶ。

 なので「はい、すみませんでした」と謝っておいた。

 芋焼酎ロックが若い店員さんが持ってくると、部長はぐいぐいとそれを飲んだ。酒に強いのか? 恐ろしい人だ。


「あのくそ部長め、飲み会がちっとも面白くないじゃないか……」

 飲み会の帰り道、おれはひとりぼそぼそつぶやいていた。本当はツイッターあたりに「飲み会わず、上司くそすぎワロタwww」とかつぶやきたいけど、どこでサーチがおこなわれているかわからんからな。自重。

 営業部のころの飲み会は楽しかった。和気あいあいとした雰囲気の中、楽しく飲んだ。ああやって人をこき使ってオーダーをするくそもいなかった。上司も温厚な人だった。

「ちくしょう、あのころに戻りたい」

 そうつぶやいたとき、頭の中がぐらんぐらんとした。なにか得体のしれないものに揺らされている感じ。絶叫マシーンに乗ったらこうなるのかみたいな感じで。おれはそういう類のもの嫌いだから乗らないけど。

「なにこれ、きもい」

 ぐらんぐらんの感覚がさらにひどくなって、いままで感じたことのない感覚になっていく。脳みそがとろけていくようなとろんとして渦を巻いていくような感じだった。

「飲み過ぎたか……」

 とろけるような感覚の中、今日飲んだ酒の量を思い出す。ビール一杯だ。それだけで酔うほどおれは下戸ではないはずだ。

「くそ、なんだよ、これ……」

 立っていられなくなって、おれは地面に膝をついた。

私は人事部にいたことないのでいろいろ適当です(笑)

話はこれからどんどんひどくなっていきます。

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