命がけのダウンヒル
原作と設定が違っているかもしれません。
動きのある描写はめっちゃ下手です。というかできません。
理解していただける方はごゆっくりー
鋭い爪が俺の胴体を狙う。俺は右に避けた。脇腹ギリギリを掠めて、熊のような何かは地面に着地した。
妖怪! でも、紫や射命丸とは違う。獣のような妖怪。これが、人間を喰らう妖怪なのか。
俺が妖怪の方に向き直ると同時に妖怪が立ち上がり、毛むくじゃらの大きな腕を降り下ろした。俺はその腕を避け……られなかった。左にかわそうとするが、右肩に腕が直撃する。ミシッと骨の軋む音がした。
「うっ、肩が!」
俺は痛む右肩を押さえ、後ろへ下がった。制服に血の染みが広がっていく。
くそ、俺の能力でも避けきれなかった。
妖怪は、俺を捕食しようともう一度飛びかかってきた。今回の攻撃は避けられた。しかも余裕をもって。
俺と妖怪に少しだけ距離ができた。
俺には、能力があっても妖怪を倒す力はない。だから今、避ける以外に俺にできることはただ一つ。
妖怪にクルリと背を向ける。そして、逃げる!!
木の枝が顔に当たろうと、滑って転ぼうと、俺は走った。道があるかどうかも分からない道を走った。
しかし。
「追ってくる!」
妖怪も俺の方へ走り出した。俺が走り出してからほぼ同時だった。距離はあったが、妖怪の方が遥かにスピードが速い。
「やばい!追い付かれる!」
ぐんぐん妖怪は迫ってくる。
俺にはまだ体力があった。しかし、少し段差になっているところで右足を捻ってしまった。踏み込むごとに激痛が走る。止まってはいけない。妖怪に喰われる。今まで経験したこともないような痛みを伴いながら、必死に走った。この後、体がどうなっても構わない。命が助かればそれでいい。
俺と妖怪の距離がさらに縮まる。少しでもスピードを緩めたらヤツの爪が俺の身体を引き裂く。
その時。俺の足が、小石を蹴り飛ばした。小石は木に跳ね返って、妖怪の右目に命中した。妖怪は唸り声を上げ、その場でうずくまった。その声を背中で聞きながら、それでもまだ俺は走っていた。
俺は逃げ切った。気がつくと、山を下りきっていて、どこかの草原に出ていた。俺はそこで気力が尽きて、倒れこんでしまった。月は空高く上がり、光が俺を照らしていた。
ここは、罪の無い死者が成仏するか転生するまでの間を幽霊として過ごす世界、冥界。そして、そこに存在する屋敷が白玉楼である。そして、屋敷の中に八雲紫とその友人、幽霊の管理をする西行寺幽々子が居た。
「今日ね、外の世界で能力のある人間を見つけたのよ」
「あら、珍しいわね。それでその子はどうしたの?」
「ここに住まわせることにしたわ」
扉が開いて、中から真っ白い髪の毛で横に大きめな幽霊がふよふよ浮いている少女がお茶を持って入ってきた。
彼女は魂魄妖夢。白玉楼で庭師兼、剣の指南役として住み込みで働いている。幽霊と人間のハーフであり、剣術を扱い、二刀流の達人である。が、見た目がどう見ても幼い女の子である。
「幽々子様。お茶をお持ちしました」
お盆には湯呑みが1つ乗っていた。
「紫に渡して。私は要らないわ。代わりに……」
すると妖夢はすっと団子を差しのべる。
「そう仰ると思いましたのであらかじめ用意しておきましたよ」
「あら妖夢ちゃんさすがだわ」
幽々子は目を輝かせる。妖夢は、はいはいと慣れた表情をする。
紫は話を改める。
「彼、避也って言う名前でね。危険なことを神回避してしまう能力をもっているのよ」
「そうなの。で、今どこにいるの? 彼は」
「妖怪の山に置き去りにしてきたわ」
「え、そんなことをして平気なの?」
紫は湯呑みを手にとってお茶をすする。そして、元あった場所に置く。
「平気よ。じゃなきゃ私がわざわざ連れてこないわ」
「そう……。そういえば、以前にも外の世界で能力を持っている子を連れてこなかったっけ?」
「ええ、そうだったわ」
紫はふと、空を見上げた。
「彼女のことね」