ようこそ幻想郷へ
初投稿です。駄文がいっぱい
不定期更新になります。
理解していただけた方はごゆっくりー
ある町に住む少年、武田避也(たけださけや)は雨の中傘をさして大通りを歩いていた。表情を変えず、同じリズムで、まるで作業をするかのように歩いていた。
彼の人生はごくごく普通で、特に自分に刺激になるような出来事は無かった。彼はその人生を嫌っていた。何も起こらない人生なんてつまらないと。毎日が同じような出来事しかない、そんなのはつまらないと。
しかし彼には1つ、不思議な能力があった。
道路にあった大きな水溜まりの手前まで歩いたところで、突然車がそこを通った。車の左側のタイヤが水溜まりを踏み、激しく水しぶきを上げた。ちょうどそこに避也がいた。水しぶきは避也を覆うように路面に降りかかった。当然避也の身体は濡れるはずだ。しかし避也には水滴1つ付いていなかった。
そう、彼の能力。それは危険なことを全て回避してしまうというものなのだ。これは生まれつき備わっていたもので、本人は別に不思議にも思っていない。
水しぶきを回避した避也は、変わらぬ足取りで歩いていった。
此処は、忘れ去られた者達が集まる楽園、幻想郷。そこの管理者である八雲紫は、空間に映し出された避也の映像を見ていた。
「次の食糧は彼に決まりね」
紫は妖しい笑みを浮かべた。
次の日、避也は学校の制服を着て、歩き慣れた通学路の道のりを辿っていた。しばらく歩くと、何故か周りに人間が一人もいなくなった。しかし避也は気にも留めずに歩いた。
すると、いきなり足下の地面が大きく口を開けたように開いた。避也はそれに飲み込まれるように落ちて……行かなかった。丁度その時、避也はつまずいて転びそうになっていた。そして開いた穴を飛び越えるように転んだ。落下を回避したのだ。
避也はすぐ後ろにある大きな穴を見て目をまん丸くした。心には驚きの気持ちでいっぱいだった。しかし、後からジワジワとワクワクした気持ちが込み上がってきた。こんな刺激的な出来事にあったと。立ち上がって少し服に付いた砂を払っている避也の表情は笑みを隠せなかった。そして、いつもより軽い足取りで再び歩き出した。
「・・・・・」
紫に怒りの表情が見えていた。獲物を逃がしてしまった。今までそんなことがあったの?しかも、さっきので彼に私のことが知られてしまった。こうなったら必ず彼を此処へ連れ込む。紫は次の策を練った。
その日の帰り道、避也はふといつもは使ってもみなかった歩道橋に登った。半分無意識に。そして階段を降りようとした瞬間、何処からか石ころが避也の頭を狙って飛んできた。当然それを回避するのだが、石に驚いた避也は階段から転げ落ちてしまう。すると、空間が朝の時と同じように開き、避也を丸ごと飲み込んで閉じてしまった。
「え、なんだここ!?」
無限に続く紫色の空間を、重力に引っ張られながら落ちていく。あまりの突然の出来事に、理解するのに時間がかかった。俺はこの後どうなるのだろうか。そしてしばらくして、もう自分ではどうしようもないと解った。
ドサッっ、と音をたてて尻から地面に落ちた。辺りは木々が立ち並んでいる。
「いたた……ここはどこだ?」
体感にして2000メートルは落ちたと言うのに、なぜ生きているのかという疑問が浮かんだ。そして此処は何処なんだという疑問も浮かんだ。ただ茫然とその場で固まってると、目の前にさっき飲み込まれたのと同じように空間が開いて、中から金髪の女性が現れた。
「ようこそ、幻想郷へ」