とある噂!
私の作品は人形劇みたい。
見えている人物しか動かない。
「さて、どうしようか……」
ミライを売り払った私、モモカはアルトを連れて街を歩いていた。
何の考えもなくミライを売ったわけではない。
どうせミライなら奴隷用の拘束具など意味を成さないだろうから、奴隷に反感を持つ者として奴隷を開放して来るだろう。
奴隷召喚はあそこだけでは無いとは思うが、ちゃんとお金を払ったし格好も不自然ではなかった、から多分大手のものだろう。
まあ、深い理由のないことは否定しない。
それに、もしここの噂が本当なら、ちょっと面白い事になるかもしれない。
―都市伝説。
現代日本には馴染みがないかも知れないが、何処にでもあるような怪しい内容の事象だ。
起こった所を見たものは居ないか、あるいは命を落としている、そんな伝説。
この街にも、そこまで怪しいものではないがあるようだ。
それは、何でも言うことを聞かせられるという奴隷紋の話。
曰く、その印は押した人と奴隷にしか見えない。
曰く、それを使うと奴隷というよりは生きた人間を使った操り人形である。
曰く、首輪と違って一生解除できない。ただし上書きは出来る。
都市伝説と言うには具体性あふれるこの噂を、私は信じることにした。
根拠はないが、私の勘がここにあると告げている。
だって、ほら……魔法少女の格好をした娘を自由に出来るんだよ?
…あっ、おっと危ないアルトの二の舞いになるところだった。落ち着こう…
落ち着いた所で、手元のかばんを見る。
これもあの奴隷商人を怪しくないと判断した根拠だが、このカバンのデザインはナチュラルとでも言おうか、街では流行のデザインらしく目立たない。
なので到底大金を入れているとは思われないのだ。そこは細やかな気遣いだろう。
ちなみにカバンのデザインは、旅行用のコロコロカバンに青・黒・白のMON●消しゴムカラーである。
日本であったら確実に目立つ。
実際今もちょっと恥ずかしい。
若干邪な妄想をしつつファミレスに入る。
ここがファミレスなのかは不明だが、ファミレスみたいな店内とメニューなのでファミレスと呼ぶことにする。
「何か食べよっか」
「んー」
適当な返事のアルトを座らせ、ハズレのなさそうなライス系統のメニューを注文する。
この世界の食べ物は大抵美味しいが、それはかつて襲っていた荷馬車の食べ物がであり、街の食べ物はあまり食べたことがない。
待ち時間は数分と、日本のファミレスよりちょっとかかなり速いくらい。
運ばれてきたものは、頼んだメニューにスープが付いてきたがやはりハズレではなかった。
しかし、と外を見ながら思う。
何故、いつも暗くなり始めてから宿を探すのか、と。




