奴隷紋。
タッチが軽い…
「よし、一仕事あがりぃ」
「おつかれー」
まるで、いや見たことはないが日本の会社みたいに各位をねぎらう奴隷商人の従業員たち。
明るいな。もっと陰湿な雰囲気かと思ったのだが。
と思ったが、よくよく考えればここに居る奴隷は本来絶望に近い感情を持っているに違いない。あれは責め苦の一環なのだろう。
僕に奴隷紋を押した奴は、
「じゃあ後は頼んだぞ〜、「今日連れてきた奴隷はドレカ奴隷商館が保有する」で良いな」
と言い残して帰っていった。
なんだろう、まるで用意されたセリフを喋ったみたいだったけど、この奴隷紋には印として以外の効力があるのか?
しかし、それは早速証明されることになる。
「おっ、中々の上玉じゃないか…いや、それは今いいか「向こうの食堂まで移動しろ」」
「へ?…え?」
男が放ったセリフに、一瞬奴隷紋が反応した。それに驚いていると、なんと僕の身体はいうことを効かなくなり、勝手に歩きだした。
あの奴隷紋、効果強すぎだろ。
「驚いてるな…まあ、特別に歩きながら説明してやるよ。
その奴隷紋は、刻印された者にどんな命令でも聞かせることができる。
無茶なことでも強制できる代わり、精神面に命令を出すことができない、それはもうちょっと高級な奴隷紋だからここにはない」
ふむ、精神面には作用できない、と。
ただ、物理的(?)な命令だったら何でも聞いちゃうみたいだから、「寝るな」とかで精神的に追い詰めるのには使えるな。
ちょっと見くびっていた、ただ刻印というシステムがあるのであれば首輪はただの目印っぽいな。
「あ、勘違いするんじゃないぞ。首輪にも効果のある奴隷はたくさん居る。
例えば、奴隷を虐げて生活したいが故に、わざわざ首輪に高い《不死》の付与をつける奴も居る。
まあ、購入後どうなるかは購入者次第ってことよ」
この人は奴隷に対して少し優しいらしい。名前を聞いたら殴られそうだが、顔と声は覚えておくとしよう。
さて、そんなこんなで食堂に着いたが、かなり広い。
席には番号が振られており、それぞれが管理番号になっているようだ。
8桁なんだが、そんなに多くの奴隷が入るのだろうか。10の8乗=1億人だよな。
僕の番号は…あ、奴隷紋に浮き出てる、20000217だ。なんか日付みたいな番号だな。
その席を探して(もちろん、この食堂には100人分くらいしか置いてなかったのだが)適当に座る。
すると世紀末な格好のモヒカンが厳つい顔でこっちに走ってきた。
「あんだぁお前、新入りか?号令があるまで、席の前で立って待ってるのが礼儀ってもんだろ!」
知らねーよ。
というか罰ごときで金属ハンマーを使うんじゃないよ骨折するだろ。
とりあえず、装備品の効果に任せて防いでおく。
「痛っ…くもないな、定規で腕をパシッって叩いたくらいの衝撃か」
「なっ!コイツ、面倒くせぇ!」
モヒカンは何処かに連絡をとっている様子。隙だらけだな。
が、そこにもう一人現れる。
「やれやれ、やるべきことをみんな忘れるんですね。先にやってと言いましたね?
「魔法やスキル、魔力は使うな」「嘘をつかない」「罰は大人しく受ける」とりあえずこれで良いでしょう」
あ。魔力が使えないのは詰んだ。色々詰んだ。
頑張って規格外魔力で奴隷紋を破壊しようとやってみるが、これはどうやっても壊れそうにないどころか、攻撃するごとに強くなっている気がする。
「はい、ではモヒカンくん罰の時は尻尾を叩いてください」
(名前モヒカンくんなのか…)
「ヒャッハー!了解だぜ!」
世紀末くんは先ほどの金属ハンマーを握り直すと、思い切り僕の尻尾に振りかざした。
ヤバい、尻尾には装備恩恵が適用されない上に耐久値とは関係ない、その上テンプレ通り敏感なので―
ガンッ!!
「ッーーーーーー!!??」
頭の中が真っ白になった。
筆者には尻尾は無いです。
なのでどんな感覚かは不明。




